中西嘉宏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最近ミャンマー出身の知人ができたので、ミャンマーという国が今どんな状況なのか知りたくて読んだ。なかなか読み応えがあった。
国際情勢の中の一国の現代史を客観的に、現実的な目線で追っている。三たび軟禁されたアウンサンスーチー氏を特別に擁護するわけでもなく、軍事政権をただ批判するでもなく(ただし軍事力を「暴力」と度々表現している)、繰り返されてきたクーデターの背景も掘り下げている。
対中ロ政策からミャンマーの民主化を促したくとも、政治・経済的に欧米諸国にとっての優先度は高くなく、そして一時的に民主化が進んでも長年国家としての仕組みが整っていない中では国家としての「機能」の整備がなかなか進まない悪循環に陥っている現実を突きつけられる。
こうした中でも、筆者は今後のミャンマー情勢がどう揺り動くかいくつかのシナリオを元に、日本がどう関わるべきかを提言している。一番の課題は国際社会の関心薄か。干渉し過ぎも別の問題を引き起こすし、難しい。 -
Posted by ブクログ
『ミャンマー、優しい市民はなぜ武器を手にしたのか』を読んで、2012年の軍事クーデター前後のリアルな状況がよく分かったけど、同時になぜせっかくアウンサン・スーチーが国家顧問になっていたのにこんなことになってしまったのか疑問に思いこの本を読んでみた
2011年まで23年間も続いた軍事政権
2016年にスーチー政権が発足したときは、改革へ大きな期待を持つ市民からの要請に応えなければならず、一方でなお強い力を持つ軍部とうまくやっていく必要があったし、軍の協力が必須な武装少数民族紛争もあった
そんな状況下でロヒンギャ危機(無国籍のイスラム系少数民族への掃討作戦)が起こり、世界からジェノサイドとの非難の声が上がるなか、スーチーは軍を擁護する発言をする
『多くのひとびとには、人権のシンボルだったはずのスーチーが、権力者となるや豹変して、軍によるムスリムのジェノサイドを肯定しているように映っただろう。』
軍とうまくやろうとすれば国際社会や市民から失望され、改革を進めれば軍から反発されるという板挟み状態の難しい政権運営のなか、それでも2021年の選挙で大勝するスーチー側
これで権力をさらに奪われることに危機を感じた軍によりスーチーは再び拘束され、2026年の不公正な選挙にも軍は勝利して今日まで彼らの政権が続いている
軍事政権側には過去の成功例があるから現状に自信があるのかもしれない(-_-;)
『ミャンマーの軍事政権は、国民から反発を受け、欧米の制裁で国際的に孤立し、経済も停滞したが、それでもなお、二三年間続いた。』
After reading "Why Did Myanmar's Gentle Citizens Take Up Arms?", I gained a clear understanding of the real situation before and after the 2012 military coup, but at the same time, I wondered why things turned out this way despite Aung San Suu Kyi having become State Counsellor, so I picked up this book.The military regime lasted for 23 years until 2011.
When the Suu Kyi administration took office in 2016, it had to respond to the huge expectations from citizens for reform, while also needing to get along with the still-powerful military, and military cooperation was essential for the armed ethnic minority conflicts.
Amid such circumstances, the Rohingya crisis (a sweeping operation against a stateless Muslim minority) occurred, and as voices calling it genocide rose around the world, Suu Kyi made statements defending the military.
"To many people, Suu Kyi, who was supposed to be a symbol of human rights, seemed to suddenly transform into a power holder affirming the military's genocide against Muslims."
In an unstable dilemma where cooperating with the military led to disappointment from the international community and citizens, while pushing reforms provoked backlash from the military, the Suu Kyi side still won a landslide victory in the 2021 election.
However, sensing a threat to their power, the military detained Suu Kyi once again, and even in the unfair 2026 election, the military emerged victorious, allowing their regime to continue to this day.
The military regime might feel confident in the status quo because of past success stories.
"Myanmar's military regime faced opposition from its citizens, international isolation due to Western sanctions, and economic stagnation, yet it still lasted for two or three decades." -
Posted by ブクログ
オンラインで日本語を学びたい外国人と日本語で交流している。ミャンマーの20代女性が政権が変わり大学進学をあきらめ日本での仕事探しをしているという話を聞きミャンマーの現状をしりたくてお取り寄せ。
市民に暴力をふるう軍はミャンマーの何をどうしたいのか、スーチーはなぜクーデターを防げなかったのか。民主化勢力に勝機はあるのか。国際社会は事態をなぜ収束させられないのか。これからこの国はいったいどこに向かうのか。近代史を振り返りながら考察。
民主化、自由化、市場経済化、グローバル化の試みがクーデターによって頓挫している状況。
軍は常にミャンマーの政治経済社会あらゆる領域で強い影響力を保持、脅威であるスーチーを断続的にも合計15年ものあいだ自宅軟禁、英国人の夫とふたりの息子はロンドン在住、1999年には夫と死別。
ヤンゴン大学、マンダレー大学、ダゴン大学学生運動潰しで大学そのものを閉鎖
2007年サフラン革命 サフラン色の袈裟が埋め尽くすほどの数十万人の僧侶と一般市民参加の反政府運動に対する軍の弾圧
ロヒンギャ危機 仏教徒とムスリムとの宗教対立が2017年ラカン州北部で大規模な武力衝突
軍企業と縁故資本主義の成長あり
多民族国家で8つの主要民族(ビルマ人、チン人、カチン人、カイン人、カヤー人、モン人、ラカイン人、シャン人)あわせて135の民族
2021年2月1日軍事クーデターは、国民民主連盟NLD最高指導者アウンサンスーチーに対してミャンマー軍最高司令官ミンアウンフライン上級大将が首謀者。
選挙運動に制限がかけられたがオンラインだとスーチーのような視覚的シンボルの戦略価値があがり、Facebookなどでキャンペーン強化したが一方で軍の孤立化、軍の欧米諸国や国連との敵対関係、選挙前の世論調査が軍に共有されてなかったなどの理由で、2020年NLDの圧勝。軍はそれを不服とし、クーデターが起こる前1月30日に軍はNLDによる選挙不正を脅しに近い訴えで、「選挙管理委員会の交代、議会招集の延期、票の再集計」を要求したという。政変後も一般市民のデモや公務員・医療従事者らの不服従運動、国民統一政府NUDなど軍への抵抗運動に対し、軍は弾圧を強化。
日本との関係
太平洋戦争勃発後日本軍は1942年ミャンマー侵攻、8カ月ほどで制圧し軍政、新国家「ビルマ国」樹立。アウンサンスーチーの父アウンサンは祖国独立のため日本軍に協力、ビルマ独立軍BIA結成後、ビルマ国ではビルマ国民軍BNA幹部と防衛大臣就任。日本軍による統治が続き不満を募らせ、日本軍の戦況不利の中秘密裏に統一戦線バサパラ結成、ビルマ共産党BCP組織化し対日抗争。1945年3月27日タッマドーネ国連の日として記念式典が行われているとのこと。
1954年平和条約と賠償及び経済協力に関する協定 2013年5月安倍首相がミャンマー公式訪問し910億円の資金協力約束。2016年安倍首相とスーチー国家顧問会談で経済発展国民和解と都市部地方の発展実現の支援表明、2019年援助総額15憶ドル超える。ミャンマーへの援助の日本が占める割合が大きい。
軍統治を承認せず軍と接触はするというあいまいな態度を戦略的に貫く姿勢が必要。
民主化が進むと国民国家の統合が不安定になり軍の警戒心刺激して危機統制型の統治強化の悪循環が続いている。民主化と経済発展の好循環はしばらく起きない。
日本でできる支援として、難民、労働者、留学生の受け入れなど経済開発中心から人道支援へ転換が望ましい、インド洋と中国大陸をつなぐミャンマーへの支援が地域戦略に対するアジア外交の構想力と覚悟を示すのではと締めくくっている。 -
Posted by ブクログ
1988年から2021年のクーデターまでのミャンマーの現代史を描いた本。
軍部と民主化を目指す団体との対立という単純な構造ではなくて、軍内対立や、少数民族、欧米、ロシア中国の思惑がこんがらがって現在の状況となっていることがわかる。
この本を読み終わっても、何が正解かがわからなくてもやもやする。
例えば、統治の形。独裁はトップ次第な部分があって不安定だし、政党政治は党派争いばっかりして自己利益追求してしまう。
独裁から民主化に舵を取るにしても、急に軍人ポストを減らすと実務が滞るし、残してても軍事政権イメージが拭えない。
クーデターという結果になる前にどうしたらよかったのかってのを考えさせられる。
ミャンマーの現代史ではあるけれど、他の国や自分の会社にでもそれとなく当てはまりそうな普遍的なケースに思える。ミャンマーってどうしてこうなったの?っていう疑問は解消されるけど、これからどうしたらいいんだろうと新たな疑問が出てきて、考えさせられる本だった。 -
Posted by ブクログ
ミャンマー西部に住むイスラーム系民族のひとつであるロヒンギャを巡る2017年の国軍による掃討作戦以降の大量の難民の発生等の一連の危機について、危機がどうして起きたのか、その余波が世界にどう広がっているのかといった点を、歴史的背景の考察も踏まえながら検討し、将来に向けての展望と日本が果たすべき役割についても考察。
ロヒンギャ危機はもちろんのこと、2021年2月に発生した国軍のクーデターに至る歴史的背景等についても理解が深まった。
民主化にもかかわらずロヒンギャ危機が発生したのではなく、民主化したからこそロヒンギャ危機が発生したとの指摘が印象深かった。
アウンサンスーチー氏がロヒンギャ危機に際して受け身のリーダーシップに甘んじていたことについて、国軍との関係悪化の回避を優先していたとの分析も、国軍のクーデターが起きてしまった今から思えば、非常に納得のいくものである。当時、NLD関係者と話をした著者は、彼らが国軍との関係に非常に神経をとがらせ、常に最悪の事態(クーデター)まで想定していることを実感していたということが述べられているが、残念ながらその懸念は現実のものとなってしまったわけである。
ロヒンギャ危機について日本が果たすべき役割についての指摘も、まさに現在、国軍のクーデターに対して日本が果たすべき役割にも通じるところがあり、非常に示唆的であると感じた。欧米の理想主義一辺倒で果たしてミャンマーの現実を動かせるのかどうかというところであろう。著者のいうように、理想主義と現実主義のバランスが問われているのだと思う。また、過去の歴史的背景を踏まえても、ミャンマーの行く末について中国が大きな鍵を握っているのだと思われる。
本書の最後に触れられている、自然権としての人権という理想と、国家あってこその人権という現実との間のジレンマとしてハンナ・アーレントが提示した「人権のアポリア」という概念は、まさにミャンマーの問題に当てはまるものであり、本当に難問だと感じた。 -
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ミャンマー問題の背景を知ろうと購入。背景はおぼろげに見えてくるも、問題の複雑さと解決困難さに言葉を無くす。ミャンマーは長らくにわたり国内紛争と難民問題を抱えてきた国であり、ロヒンギャ危機もそれらの一つの側面である。民族間の対立、暴走する国軍、多宗教との軋轢等、あらゆるステークホルダーの板挟みに置かれるスーチーさんの立場は困難を極める。
スーチーさんを中心とした民主化運動により、長らく続いた軍事政権は終わらせることができた。しかしめでたしめでたしとはいかず、民主化自体が暴力を生みだしてしまうという皮肉な現実もある(民主化とは「人々」による統治であり、「人々」が民族を意味することになれば、民主主義は特定の民族が支配する理想の社会を目指すことになりかねない。また多数決主義も、多数派を占める主要民族に国家権力が集中する機会を与えやすい)。
ミャンマーにおいては、なによりも仏教徒の僧侶が国民から大きな尊敬を得ている。そして民主化による言論の自由に伴って、他の宗教を徹底的に攻撃することで、国民からの支持を集める僧侶も一部存在する(こういうやつは必ず出てくる)。そういった民族的な対立と宗教的な対立があわさり、問題をより複雑かつ深刻なものに変容させている。
弾圧されたロヒンギャ側から過激なレジスタンスが出てくることは、良い悪いは別として理解はできる。ミャンマー側としてそれらを野放しにすることはできない事情もわかる。かといって、ロヒンギャに対するジェノサイドを容認することはできない。外野からはそれくらいしか言えない。無力である。 -
Posted by ブクログ
ロヒンギャと呼ばれる人たちがミャンマーでひどい目にあっているというニュースをよく目にするがどういう問題なのかわかっていないと思ったので手にとってみた。現時点、軍がクーデターを起こして政権を奪ってしまいロヒンギャの話をあまり目にしないけれども...。真面目な学者の作品らしくわからないことはわからない、と明記されていて好感を持った。ミャンマーというのは多民族国家で100以上の民族がいるらしい。まず政治経済を牛耳ったインド人、中国人への国民的な反感があり、ミャンマーの土着民族を優位にするという政治決定があったこと、またロヒンギャと呼ばれる人たちがミャンマーの中でも最貧のラカイン州という土地に暮らしており、ラカイン州の主要民族は少数民族のラカイン人で彼らは中央政府に反感を持っており独立運動もあったということ。そしてラカイン州がイスラム国家のバングラディシュと国境を接しておりロヒンギャもムスリムである、ということなどがベースにあったということがわかった。このような複合的な条件で、しかも軍政が民主化に移行したことによる自由化でいろいろな情報を得た一部のムスリムがミャンマーとラカインからの独立をもくろんで警察や軍にテロ行為を行い、その対応において軍の一部が暴走し虐殺を行ってしまった、というのがどうやら事の経緯らしい。虐殺を黙認したと世界的に非難されているスーチーさんも戦争犯罪は認めていた、ということもわかった。そのまま進むと軍の責任を追求せざるを得ず、しかし民主化したといっても軍は微妙な位置づけにいて、ということでスーチーさんも対応に苦慮しているうちに焦った軍が再度クーデターを行ってしまった、というのが現状ということのようだ。いろいろな複合要因を見てみると一方的に軍が横暴とも言えないなと思っていたのだけど...日に日に混乱を増す状況でこの先どうなるかわからないけれどわからない度合いが少しマシになったと思います。