田上孝一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第一章や第二章は哲学的で少し難解だが、動物倫理の歴史的位置付けや潮流を理解するのにとても充実した内容だった。動物倫理、動物福祉、功利主義、義務論、徳利主義等々あやふやな思想や概念がすっきりと理解できた。
第三章が、一番実生活に結びついて実感しやすい部分だと思う。
畜産、実験動物、ペット、動物園や水族館…目を背けていると楽だけど、目を背けてはいけないものを見つめる視点を整理してくれる。あまりにその現実は苦しくて、ともすると筆者の主張に難癖をつけて遠ざけたくなる気持ちになる人もいるかもしれないが、私たちが生きている世界にあってはならない動物の苦痛があることから目を逸らすべきではないと思った。
最後あたりの章は最初よりまして難解で、マルクスに馴染みがないと理解が難しいかもしれないが、筆者の論理は私の読みうる限り自然で、その明確な論理性に感嘆した。
人類はこれまで動物を利用しないと、生死に直結したり、文明開発に著しく困難をきたしていた。馬による運搬などがらそうである。しかし現代、技術の発展や代替手段の発展により、動物をわざわざ利用しなくても存続可能になっているのに、なぜ動物を苦しめ続けているのか?と人類に問うていきたい。 -
Posted by ブクログ
倫理学の説明から動物倫理について分かりやすく書かれている。
最後は主研究であるマルクスと動物倫理を重ねた章になっていて、とても面白い。
主に動物の権利についての是非を問う本であるが、そこから付随して人間中心主義、環境問題・倫理についても言及されている。
犬と暮らしている身としてはとても学びの深い本でした。
倫理は自分を基準にせず、万人があまねく実行できるように考えなければならない。
なので、今から全ての動物を殺しません、とはまだ言えない。肉食を辞めますとは言えない。が、しかし、昨今の環境問題や国際問題で少しずつ意識が変わってきている。
AIなどの技術の進歩もあり、目覚ましい発展が今後も窺える。
だからこそ、倫理を考えなければならない。
資本主義、民主主義である日本だからこそ徳と倫理を考えなければならない。
考えることが前提の社会だから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ動物倫理学の入門書でもあるが、倫理学、厳密には規範倫理学の入門書でもあります。動物倫理学といえばお恥ずかしながらピーターシンガー氏くらいしか分からず、功利主義的な立場からの物言いは理解はできるけど、地球の裏側のキッズことまで考えられへんな〜という稚拙な印象しかなかった私ですが、本書では規範倫理学の3つ(2+1)の柱をもとに展開されていく動物倫理学を明快な文章で書かれていました。動物が可哀想という感情に訴えるのではなく、理路整然とした動物倫理学には批判すべきところが見当たらず私も小さい一歩から始めてみようと思いました。
また、マルクス研究者でもある筆者は最終章でマルクスと動物倫理学を架橋しようと試みていてそこも独創的で興味深かったです。 -
Posted by ブクログ
かなり読みやすい
--
労働は分業化によって効率化する、
効率化された労働が社会に集約され資本(疎外された労働力)となり、自身の敵となる
つまり、社会の一員である限り疎外され続けることを意味する
マルクスはそれを打破するには疎外されない生産、社会全体の在り方を模索することが必要と言っている。
(ただこれはありがちな、過剰な物の生産や消費への批判と形式上は同じになる??)
いい意味でも悪い意味でも理想論と感じた
読んでいくとアレントの批判とつながってきた気がする
個人単体だけでも疎外されないようにするため、↓を切り離して考えるのが良さそうと思った
(救いのない絶望からの逃避のような気もするが)
・労働、生きるための最低限の活動
・仕事、生きる意義としての生産的な活動
そのためには資本主義には片手で勝たなきゃいけない
かつ、批判されるべき資本にならないために、自分の中のバランスを保つ必要がある
難しいなぁ -
Posted by ブクログ
日本において、マルクスは経済学的な視点での研究が多く占めているが、著者は哲学の観点からマルクス主義を考察することにこだわっており、マルクス思想の入門書としてよくまとまっている。
■資本主義とは?
資本とは疎外された生産物怪物的転化であり、資本主義の最も根本的な本質は労働が疎外されていること。
■マルクスが理想とした社会
労働が疎外性的性格を帯びることなく、労働者が自らの生産物に支配されることがないような社会。
■ソ連の社会主義
ソ連は現実社会主義国の代表国として知られているが、その基本的構造は軌を一にするものだった。確かに資本家の存在はなかったが、労働者は国家官僚のもとについていたため、労働は疎外されている構造を取っていた。
■マルクス的観点から捉えた婚姻制度
理想の共産主義下では、婚姻を制度として保障する必要はない。愛は私的感情であり、共同体が自由意志に基づく二人のパートナーシップを制度として裏打ちすることは不要である。この点マルクスは自由意思に基づくパートナーシップの本質を見抜いていたが、「男女間の恋愛」という限定をしていたことには批判の余地がある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレペットや害獣駆除の話だけでなく、ブラッドスポーツに動物性愛、動物園や水族館など守備範囲は広い。特に本書は食肉生産と動物実験についての是非が中心。前者については実践に対する筆者の冷静なバランス感覚が絶妙。後者については医療用だけでなく食品や化粧品分野が小さくない市場であることを教えられた。
映像資料が氾濫する現在において、動物園や水族館が歴史的役割を終えた遺物である…というのは納得できる。
「動物」と一括りにされてるが、線引きがかなり曖昧。ある動物が苦痛を感じるかどうかは未だ未知のところが多いだろう。一説で魚類や鳥類が後付けで含まれるようになった経緯を知って、今だってまだ過渡期ってことよねと思った。
積極的に自分のスタンスを表明したいほど動物愛護精神に富む訳でもないが、愛玩動物は生理的に受け付けないし、そもそも他の生き物を「飼う」=生殺与奪を握る、ってのは野蛮ってもんでしょ…とは言え、我が家に鉢植えはあるし、話し掛けたりもする。食物連鎖は現実だし、弱肉強食は原則だと思う。
馬に代わる車がなく毛皮に代わる繊維がなかった時代と現代とで考え方が変わるのは当然だけど、科学技術の発達と社会的背景を絡めて先駆者の考察を追うのは、純粋に興味深い。
「現代の常識である動物福祉的な見方」とあるが、現代日本社会に限定されるよね?
「動物虐待が法で罰せられる」ってのも、少なくとも先進国諸国では普遍的なんだろうか?かなりお国柄があるような気もするけど。
もっと言っちゃうと、動物の方は人間に危害を加えても、その動物社会内で何らかの制裁を受けてたりしないよね、恐らく?だから何よって言われても困っちゃうんだけど…。
そもそも動物理解に乏しいヤツがこんな本読むなって言われると、全くその通りだろうし…歯切れ悪くてスミマセン。だって普段から、犬猫を飼ってることを声高に明言し、あまつさえ「あなたも飼ったら?」みたいなことを平気で言う輩に辟易してるんだもん…「ソレって虐待よね?」って言い返せる日が早々来るとは思えない、今のニッポン。 -
Posted by ブクログ
動物愛護は正しい事であるということを色々理由付けして主張する本。
ロジック自体の話が1/10ぐらい、それ以外はどこかで見かけたような事柄をあらためて非難する内容が主。
基本的に愛護の立場からのみ主張されているので、「はじめて」とタイトルにはあるが、ある程度思想がある方がそれを固めるための本と思う。
ホントに初めての人が読んだら、たぶんヒいちゃう内容。
興味がある人でも1~2章ぐらいまでにしといたほうが良いのではないかと思った。
それも頑張れるかは怪しいと思うけども。
倫理学がキリスト教圏から生まれてる関係もあるのだろうが、我々は優等だから他の人類もみなそれに従うべき、というような論調でげんなり。
そもそも人間が猿の時代から他の動物に対して付き合ってきたわけだから、たかだか数百年の歴史でそれがすぐに変わりうるとも思えない。
本当にこれを実践したいならそれこそ10~100年単位で少しずつすり合わせていくほかないと思うが、そういう気はないんだろうなという感じだった。 -
Posted by ブクログ
動物倫理学という聞いたことのない分野に興味を持ち、流し読みした。
確かに、人間は牛や豚を食べるためなら彼らを殺すことを厭わないが、こと犬や猫に対しては、人間並み、とまではいかないが人間に準じた倫理観を持って「愛護的に」接している。
牛豚の殺生、これは肉食は人間の生存のために必要であるという大義のもとであるが、むしろ現代を生きる我々は、彼らを生きるために必要な栄養分として見ているというよりは、より娯楽的なものとして、「楽しんで」「おいしく」食べているといっていいかもしれない。
一方で屠畜の現場は生々しく、文字通り「食欲をなくす」ようなかたちで牛や豚は殺されている。そのリアリティは現代社会の中では目の当たりにする機会は少なく、実感はあまりわかない。ゆえに我々はその倫理的矛盾に無自覚である。
食べる前の「いただきます」のおまじないでチャラになるような話ではない。それでもビーガンにならない限りは肉食はやめられないと思うし、そのようなモヤモヤを抱きながら、これからも私は牛丼を食べるんだろうと思う。
-
Posted by ブクログ
動物倫理学の学問史と、研究の中心に置かれてきた社会問題について網羅的に解説した本。後半では、動物倫理学が批判してきた西洋的な人間中心主義の考え方に対して動物倫理学がとる立場と、動物倫理学の論点をさらに越えようとした倫理学的立場として環境倫理学とマルクス主義の動物と環境観が紹介される。
この本では、はじめに、動物の権利を考える上での基本的な考え方として、規範倫理学の学説を大きく「功利主義」「義務論」「徳倫理」の3つに大きく分ける。その後、こうした倫理学的原理から、肉食や動物園・水族館、野生動物の狩猟、駆除、コンパニオン動物(ペット)、動物性愛といった具体的な動物に関わる善悪問題について、それぞれの立場がどのように考えるのかを解説する。
ここら辺は、他の入門書でも知っていたので、やはり基本的な論点は、そこなのだなということを改めて確認できた感じである。
個人的によかったのは、動物倫理学という学問自体が、誰のどういった著書から成り立ってきたのかを解説した第二章「動物倫理学とは何か」だった。ピーター・シンガー『動物の解放』、トム・レーガン『動物の権利の擁護』といった、おそらく基礎文献にあたる本と、そこで初めて主張された論点が紹介されている。この学問史の理解に、どの程度、妥当性があるのかは知らないが、すごく分かりやすくまとまっていて、他の本を読むときにも参考になった。
正直、第四章の「人間中心主義を問い質す」のところは、内容に陳腐さを感じてしまってイマイチだった。加えて、肉食の問題などは、統計的なデータなどがないので、いまいちその規模が実感しづらかった。
ただ、内容が網羅的で、動物倫理学の成立の全体像がよく分かるので、この点については、新書としてすごくおすすめできる一冊だと思う。