【感想・ネタバレ】99%のためのマルクス入門のレビュー

あらすじ

1対99の格差、ワーキングプア、ブルシット・ジョブ、気候変動……。
現代社会の難問に対しては、いまこそマルクスを使え!
資本主義の限界は見えた!
あらかじめ疎外された99%に向けた、画期的マルクス入門

1対99の格差、ワーキングプア、ブルシット・ジョブ、地球環境破壊……現代社会が直面する難問に対する答えは、マルクスの著書のなかにすでにそのヒントが埋め込まれている。『資本論』『経済学・哲学草稿』『ドイツ・イデオロギー』などの読解を通じて、「現代社会でいますぐ使えるマルクス」を提示する入門書。
社会の主役であるべき労働者が、「資本」により手段として使われる主客転倒が、マルクスの言う疎外。この主客転倒をただすことが、社会の矛盾を解消し、ひいては持続可能な社会への道につながる。生涯の研究テーマとしてマルクスに取り組んできた著者ならではの視点が光る、「疎外論」を軸にした画期的なテキスト。

我々の社会は、本来社会の主人公であるはずの労働者はむしろ客体化され、資本家に利用される側になっている/転倒した経済である資本主義の最も根底にある転倒とはまさに、経済運営の主体であるべき労働者がむしろ資本によって使われる客体になっていることである/これまでの人類は常に自分自身が作り出したものによって自分自身が支配されるという疎外状況の只中にあったということだ/いわば今の若者は、あらかじめ疎外されているのである/本書が行なおうとするのは、持続可能な地球規模での新たな文明を想像するためのヒントをマルクスの著作から求めようとすることである/言うならば、「現代社会ですぐ使えるマルクス」を提示することを通して、読者をマルクスに誘おうとするのが本書だということになる/(本文より)

【目次】
序章 あらかじめ疎外された若者たち
1章 ブルシット・ジョブ──なぜ労働と資本の主客転倒が起きるのか
2章 ワーキングプア──現代の奴隷制と階級の視点
3章 社会主義はまだ実現されていない──歴史の喜劇を繰り返さないために
4章 ポスト資本主義への想像力──ゲノッセンシャフトの概念
5章 マルクスから見る環境問題──SDGsから定常社会へ
あとがき
付録 マルクスを読むために

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Posted by ブクログ

かなり読みやすい

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労働は分業化によって効率化する、
効率化された労働が社会に集約され資本(疎外された労働力)となり、自身の敵となる

つまり、社会の一員である限り疎外され続けることを意味する
マルクスはそれを打破するには疎外されない生産、社会全体の在り方を模索することが必要と言っている。
(ただこれはありがちな、過剰な物の生産や消費への批判と形式上は同じになる??)

いい意味でも悪い意味でも理想論と感じた
読んでいくとアレントの批判とつながってきた気がする

個人単体だけでも疎外されないようにするため、↓を切り離して考えるのが良さそうと思った
(救いのない絶望からの逃避のような気もするが)
・労働、生きるための最低限の活動
・仕事、生きる意義としての生産的な活動

そのためには資本主義には片手で勝たなきゃいけない
かつ、批判されるべき資本にならないために、自分の中のバランスを保つ必要がある
難しいなぁ

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

マルクスは全くのノータッチだったがマルクスの思想はもちろん,著者の古典に何を求めてどう読むのかという批判的姿勢がとても勉強になった.

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2022年07月30日

Posted by ブクログ

日本において、マルクスは経済学的な視点での研究が多く占めているが、著者は哲学の観点からマルクス主義を考察することにこだわっており、マルクス思想の入門書としてよくまとまっている。

■資本主義とは?
資本とは疎外された生産物怪物的転化であり、資本主義の最も根本的な本質は労働が疎外されていること。

マルクスが理想とした社会
労働が疎外性的性格を帯びることなく、労働者が自らの生産物に支配されることがないような社会。

■ソ連の社会主義
ソ連は現実社会主義国の代表国として知られているが、その基本的構造は軌を一にするものだった。確かに資本家の存在はなかったが、労働者は国家官僚のもとについていたため、労働は疎外されている構造を取っていた。

■マルクス的観点から捉えた婚姻制度
理想の共産主義下では、婚姻を制度として保障する必要はない。愛は私的感情であり、共同体が自由意志に基づく二人のパートナーシップを制度として裏打ちすることは不要である。この点マルクスは自由意思に基づくパートナーシップの本質を見抜いていたが、「男女間の恋愛」という限定をしていたことには批判の余地がある。

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2022年02月20日

Posted by ブクログ

入門書としてマルクスの思想を簡単に理解できたと思う。資本による疎外によって機械的になっていく労働者。それは分業が大きな原因であり、これを無くせば労働者は主体的な生産ができるということだ。難しくて眠たくなったけど、なんとか読んだ。

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2021年08月29日

Posted by ブクログ

マルクスと現代社会の結び付きについて述べた本。現代社会の諸問題をマルクス的視点から読み取るというスタンスで、マルクスの予測・理論・危惧が現代の中にどんな形で潜んでいるかが分かる。ただし、ポスト資本主義の社会がどうあるべきなのか、という部分については、経済構造の話というよりも個人個人の道徳心や感性に依存している気がした。
全体の傾向は「古典としてマルクスを読む」というスタンスではあるが、マルクスをかなり肯定的に捉えているので、私のような初心者はそのことに注意して読む必要があると感じた。また、『資本論』の解説本ではなく、あくまでマルクスの入門書であるので、『資本論』の内容に繋がる理論を知るというより、その思想の背景を知るという意義が強い。付録を含め、マルクスに興味を持ちはじめた(なおかつ、少し学者っぽい言い回しや小難しい文章に慣れてる!)人にオススメしたい。

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2022年02月05日

Posted by ブクログ

疎外論をマルクスの思想の中核に位置づける立場から、アクチュアルな問題に対してマルクスの思想がどのような寄与をおこなうことができるのかということを解説している本です。
著者はすでに『マルクス哲学入門』(2018年、社会評論社)を刊行しており、そちらでもマルクスを「古典」として読むとともに、そのなかから現代社会の批判原理をつかみとるというスタンスに立っていましたが、本書では「ブルシット・ジョブ」やワーキング・プアといったより具体的な問題に焦点をあてて、マルクスの思想の現代的意義が論じられています。また、ソ連や中国などの「現実社会主義」がマルクスそのひとの構想した社会主義とは異なるすがたであることを指摘するとともに、アソシエーションにもとづく未来社会の構想として、マルクスの思想が解釈されています。

最後に著者は、マルクス主義と環境問題との関係についても、一章を割いて考察をおこなっています。マルクス主義はしばしば生産力至上主義とみなされていることに触れて、マルクスの議論には一定の限界があったことを認めながらも、資本の自律的な運動を止めることのできない資本主義ではなく、労働の疎外が克服された社会主義によって、環境問題の解決がなされるという見通しが提出されています。

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2021年12月02日

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