山中康裕のレビュー一覧
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私はストー著の「ユング」という本も読みましたが、その中でストーはユングの「タイプ論」や「共時性」などを批判していました。
このエセンシャルユングでは、批判的な感じは見受けられず、ユングの文献から重要な文章を選出して解説することに専念しているようです。素人がユングの長文を読む機会はないと思うので、その点では、貴重な本だと思います。
(これは当然ですが)河合隼雄さんの本によく出てくる話の元ネタが、ユングだったことが随所でわかります。
河合さんがよく「自分はなんにもしない、話を聞いているだけで、患者は自然に治っていくんや」と言いますが、これは河合さんが体験的に学んだことだとは思いますが、ユングも「私 -
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・「描かれたものをそのまま言葉に置き換えてごらん。そうしたら、もうほとんど半分以上解釈になっているよ」
・ある独特の身体症状を持っている方が、ある言葉で表現していることが、実は、内界で起こっている身体症状の表現そのものであることがあるわけです。一つだけ例を挙げれば、ある方が、肺がんの脳への転移を、「雁が大陸移動する」という夢を語る、という形で表現された。
・私は、小学校の一年生から中学校三年生まで、同一例(三クラスだったので120例なのですが)のバウムを9年間とっているのです。毎年行って、9年間描いてもらったわけです。そのときに、木が天に抜けるという形で紙の上端を抜け出る、風景構成法でいえ -
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ネタバレ[ 内容 ]
人には誰でも「生きられなかった人生の半分」がある。
その影の部分に光をあてて、「自己」を実現して生きることが人生の真の目的であると、心の医者・ユングは考えた。
著者は、自らの臨床経験を踏まえて、ユング心理学における無意識・夢・自己実現、クライアントたちとの心のドラマ、河合隼雄氏との出会い等を、平易な語り口で解き明かしていく。
本書で語られる「臨床ユング心理学」は、これまで気づくことのなかった人生の豊かな可能性を教えてくれる、新しい心理学である。
[ 目次 ]
序章 臨床ユング心理学への道
第1章 臨床ユング心理学の歴史
第2章 ユング心理学の基礎
第3章 ユングの個性化過程
第 -
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ユング派の心理学者である著者が、わが国におけるユング受容の経緯を踏まえながら、臨床的な立場に立ってユングの理論を解説した入門書です。
著者は、ユングの心理学だけを唯一正しい理論だとは考えてはいません。フロイトの精神分析理論は、3歳から30歳くらいまでの心の問題、とくに神経症の説明に有効であり、行動療法は、ある特定の病状の特定の時期におこなえば、他のどんな理論よりも効果があるとしています。これに対してユングの心理学は、人間の一生や、人間の心の全体性をとらえるためには一番ふさわしいと、著者は述べます。
ただし、錬金術やシンクロニシティに接近するユングの理論には、ある種のいかがわしさが付きまとっ -
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臨床の「臨」とは臨在すること、隣にいることを意味する。そして、「床」はかつて「死の床」を意味していた。
つまり死の床にある人の傍にいて、この世からあの世に魂を渡す手助けをするのが「臨床」(クリネー)の本来の意味であった。だから、臨床家といつのは、かつては僧侶のことであった。
ユングというと、どうしても夢分析なんかの話が出てくるとどうしても、オカルトチックになりがち。
本書前半は、かなり思想、哲学、宗教色が強く、後半からようやっとユングの話へ。
後編の診断の具体事例紹介は、実に興味深かった。身近にあったことと、かなり重なることもあり。
カウンセリング心理学と対比して読むと、より理解が深まる