あらすじ
人には誰でも「生きられなかった人生の半分」がある。その影の部分に光をあてて、「自己」を実現して生きることが人生の真の目的であると、心の医者・ユングは考えた。著者は、自らの臨床経験を踏まえて、ユング心理学における無意識・夢・自己実現、クライアントたちとの心のドラマ、河合隼雄氏との出会い等を、平易な語り口で解き明かしていく。本書で語られる「臨床ユング心理学」は、これまで気づくことのなかった人生の豊かな可能性を教えてくれる、新しい心理学である。
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Posted by ブクログ
第3章までがユングを取り巻くフロイト、アドラー等の当時の関係性が分かりやすい描かれていて、整理しやすい。第4章以降が具体的な臨床例を加えた内容。
方法論は違えどクライアントの内包する感情をどのように引き出すか、それが絵を描かせるのか、箱庭を触らせるのか等の違いであって目指すところは一緒。
心身症を抱えたクライアントとの応対について書かれているが、この方法論については日頃、誰かと何気なくコミュニケーションしている場面において、一歩立ち止まることで重要なヒントとなると考える。
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「臨床」の冠がタイトルに見られるように、真摯にクライエントに向かい合ってきた精神科医・カウンセラーのユング論である。
時に、ユングの考えを批判的にとらえつつも、一つ一つの異なる病態に対して、心、いや、魂の次元からの洞察をする筆者の姿勢は、非常に説得力がある。
特に私は不登校、自閉症のとらえ方にうなづくことしきりであった。
また、病状が「悪くなること」は「まだ良くなる可能性がある」という意味の裏返しである、という発言は、治療者としての山中氏の良心を見る思いがした。
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あくまでも臨床の現場で、クライアントと向かい合ってきた筆者が、精神医学の分野にいながらユングの方法論に触れ、それを取り入れていく、という部分がこの本の肝であるように思う。心理学でも精神医学でも、目指すところは
クライアントそれぞれが自分らしい生を生きるところにあるということを、考えさせられた。
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ひとりの医師としてどう取り組んできたかというのがベースで、その軸にユング心理学がある。なので臨床ユング心理学ということに。フロイトやアドラーも踏まえつつ、心理学の軌跡をユングー河合隼雄を踏襲しつつ少し引いたところから様々なことを踏まえて書いてある。やり甲斐はあるかもしれないけど大変だなというのが印象に残る。
Posted by ブクログ
こういった心理学というのは
えてして難しい、というイメージがついて
回ってくるかと思います。
ところがこの作品は
そういった難しさがなく
ユング心理学というものがどういうもので
どういう視点で患者を見ていくかを
実際の患者の例をもちいて
わかりやすく説明しています。
その中には新設する学会に対しての
心得もあります。
やはり大事なものというのは
実績なんですよね。
知っている人は知っているであろう
絵画療法や箱庭療法も出てきています。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
人には誰でも「生きられなかった人生の半分」がある。
その影の部分に光をあてて、「自己」を実現して生きることが人生の真の目的であると、心の医者・ユングは考えた。
著者は、自らの臨床経験を踏まえて、ユング心理学における無意識・夢・自己実現、クライアントたちとの心のドラマ、河合隼雄氏との出会い等を、平易な語り口で解き明かしていく。
本書で語られる「臨床ユング心理学」は、これまで気づくことのなかった人生の豊かな可能性を教えてくれる、新しい心理学である。
[ 目次 ]
序章 臨床ユング心理学への道
第1章 臨床ユング心理学の歴史
第2章 ユング心理学の基礎
第3章 ユングの個性化過程
第4章 臨床ユング心理学の実践
終章 臨床ユング心理学の未来
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
ユングの理論を基調としながら、
自身の精神科医・心理カウンセラーとして行ってきた治療法の数々から得た経験を加えて、
心に関して著者の考えを述べた本。
ユングの人となりや、ユングの理論を広めるにあたって大きな貢献をしたという河合隼雄の紹介もされている。
ユングの人生後半の課題として、
自分でなければできないことの発見と実現というものが紹介されていたが、
漠然と考えていたことだったので強い共感を覚えた。
Posted by ブクログ
ユング派の心理学者である著者が、わが国におけるユング受容の経緯を踏まえながら、臨床的な立場に立ってユングの理論を解説した入門書です。
著者は、ユングの心理学だけを唯一正しい理論だとは考えてはいません。フロイトの精神分析理論は、3歳から30歳くらいまでの心の問題、とくに神経症の説明に有効であり、行動療法は、ある特定の病状の特定の時期におこなえば、他のどんな理論よりも効果があるとしています。これに対してユングの心理学は、人間の一生や、人間の心の全体性をとらえるためには一番ふさわしいと、著者は述べます。
ただし、錬金術やシンクロニシティに接近するユングの理論には、ある種のいかがわしさが付きまとっているのも事実です。この点で、わが国にユング心理学を導入した河合隼雄の功績は大きいと著者はいいます。河合は箱庭療法を中心に臨床的な経験を積みかさね、ユング心理学が治療法として十分な信頼を獲得することに力を注いできました。著者は、河合の箱庭療法や、著者自身が精力的におこなってきた絵画療法などを「表現療法」と呼び、そこにユング心理学の臨床的な可能性を見いだそうとしています。
Posted by ブクログ
臨床の「臨」とは臨在すること、隣にいることを意味する。そして、「床」はかつて「死の床」を意味していた。
つまり死の床にある人の傍にいて、この世からあの世に魂を渡す手助けをするのが「臨床」(クリネー)の本来の意味であった。だから、臨床家といつのは、かつては僧侶のことであった。
ユングというと、どうしても夢分析なんかの話が出てくるとどうしても、オカルトチックになりがち。
本書前半は、かなり思想、哲学、宗教色が強く、後半からようやっとユングの話へ。
後編の診断の具体事例紹介は、実に興味深かった。身近にあったことと、かなり重なることもあり。
カウンセリング心理学と対比して読むと、より理解が深まる。