近年、長足の進歩を遂げ、活用が進む人工知能(AI)。そのスタートから、現在の能力、倫理的・道徳的な問題まで、ビジネスパーソンが知っておきたい基礎知識を解説した書籍。
「人工知能」という用語の名づけ親は、数学者ジョン・マッカーシーである。
この分野の可能性を楽観視した彼は、1956年に「人工知能の研
...続きを読む究会」を催し、1960年代初め、「10年以内に完ぺきな知能を持つ機械を実現する」という目標を掲げた。
AI分野では、「バブルと崩壊」のサイクルが繰り返されてきた。
新しい発想があると研究者は楽観的になり、画期的な成果が期待できると主張し、助成金を申請する。だが、成果は出ず、助成金は削減。こうした現象が5~10年の周期で起きている。
AI開発では、「自然言語で会話する」「目(カメラ)で見たことを説明する」といった行動を目指した。だが意外にも、AIがこうした「簡単なこと」を習得するのは、「病気の診断」等をするよりも難しいことが明らかになった。
人間と同等以上に何でもこなせる「汎用型AI」は、AI開発の当初の目標だった。
だが、その実現は予想以上に困難で、「汎用型AI」と呼べるものはまだ1つもつくられていない。
AI技術は、危険性も抱えている。
例えば、「自動顔認識」の技術は、逃亡中の犯人の発見などに役立つ一方、関係のない人を犯罪者と間違えて認識する恐れがある。
AI技術の危険性の観点から、専門家の多くは規制に賛成している。規制づくりの際、重要なのは、多様な人々が関わることだ。AIの問題は、技術的なものであると同時に社会的、政治的なものでもあるからだ。だが、規制については、AIシステムを開発する大学や企業の裁量に委ねられているのが現状だ。