『杖と剣のウィストリア グリモア・アクタ』を読み終えた今、胸がいっぱいで言葉になりません。ウィルとエルファリアの切なすぎる過去、そしてあまりにも尊い絆に、全編を通して涙が止まりませんでした。どこを切り取っても素敵な文章ばかりで、胸に刺さった言葉をそのまま抱きしめたくなるような、本当に特別な一冊です。
前半、何よりも心を抉られたのは、エヴァン先生から突きつけられた「残酷な現実」でした。
「自分の無知を自覚しましたか?己の罪を理解しましたか?ー貫様ごときがあの才能を潰すなどあってはならない」
罅割れていく僕の心と同調するように、『氷鳥』に裂が走った。
エヴァン先生の容赦ない言葉が、ウィルの心を粉々に砕いていく描写が本当に辛いです。そして、二人の引き裂かれる別れの場面。
「ウィルがいないんだったら、意味なんてない!」
「ウィルーーーーーー!」
「エルフィーーーーーーー!」
体も心も引き離されていく二人の絶叫が、痛いほど響いてきました。
絶望の底にいたウィルを救ったのが、まさかの幼少期に出会っていたゼオだったという展開には鳥肌が立ちました。
「奪われたくなけりやあ、獣みてえに吠えろ!弱さを捨てて這い上がれ!何もかも奪い返すために、死ぬ気でブチ当たってみせろ!!」
この叫びが、ウィルを「一振りの剣」として生まれ変わらせる。エルフィの力で魔法を使っていた彼が、自分の意志で剣を握り覚悟を決めるシーンは、熱さと切なさが混ざり合って胸が震えます。また、シオンがウィルをいじめる理由が「二度と忘れられなくなるくらい、僕があいつをいじめてやる!」という、恋にも似た執着だったという事実も、歪んでいるけれどあまりに純粋で深く印象に残りました。
そして物語のクライマックス、エルフィのピンチに駆けつけたウィルが、強敵を倒すために最後の「宝物」である記憶さえも手放していく姿には、涙が溢れて止まりませんでした。
「..・・・・・エルフィ、って・・・・・・誰だっけ・・・・・・・•」
魔導学院の仲間も、大切な思い出も、そしてエルフィの名前さえも失い、世界が白く染まっていく。それでも、記憶をすべて無くした「剣」が、目の前の泣いている少女のために祈る言葉が、あまりにも美しくて、どこまでも切ないのです。
「名前も知らない君へ。どうすれば笑ってくれますか?どうすれば泣かないでくれますか?」
「夢を見る君の瞳には、決してかなわないと、そう思うんだ」
名前を忘れても、魂に刻まれた「誓い」である「夕日を見に行く約束」だけは決して消えなかった。
『剣』となって、どんなに記憶を喪っても、それでも離さなかったもの。色褪せぬ約束。
「一緒に、『夕日』を見に行こう!」
もう一度響くこの言葉に、救われるような思いがしました。
ラストで、魔女(校長先生)から日記を渡されるシーン。
「もし・・・・・・たとえ貴方が忘れてしまったとしても、こんなことがあったと思い出し、その軌跡を力に変えられるように」
本の表紙に綴られる題名はーー「導きの魔録書(グリモア・アクタ)」
このタイトル回収の美しさに、ただただ脱帽しました。これからウィルが綴っていく日記が、彼らの失われた記憶を繋ぐ光になる。そしてウィル自身の力に繋がると未来を少し知っている私としてはこのシーンに喜びを感じる。
二人の未来にどこまでも希望を感じさせる、最高に愛おしい物語でした。