小林昌人のレビュー一覧
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私は自らの研究の最も重要なテーマの一つにイデオロギーを据えながらも,イデオロギー研究の出発点ともいえる『ドイツ・イデオロギー』を読んでいなかった。そもそも,マルクスの著自体,『共産主義者宣言』(太田出版),『哲学の貧困』(岩波文庫)に続いて,3冊目にすぎない。だから,そもそもマルクスの人生において,本書がどの辺に位置づくかも知らなかったし,そもそも,本書がエンゲルスとの共著ということすら知らなかったのだ。
そんな浅はかな私だから,ともかく新しい版の方がよいと思って,この岩波文庫版を古書店で見つけて購入したわけだが,内容以前にもいろいろ考えさせられる本であった。まず,『ドイツ・イデオロギー』はマ -
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マルクスやエンゲルスの体裁が整った著作とは違って、これはノートのような紙に思いついたこと、またはどこかで学んだことをひたすら書き連ねた本である。またエンゲルスが主に執筆した箇所をマルクスが書き加えたり、線を引いて消したり、また絵のような内容を書き加えたりしている。
体裁が整った著書は当然だが取捨選択しているので、彼らがどのような発想をしているか、も当然だが取捨選択している。しかしこの本に関しては思いついたこと、また学んだことの成果をそのまま載せているので、彼らがどのようにして「唯物史観」や「共産主義」の原理を構築したかが読み取れるし、またフォイエルバッハの哲学をどのように学んでいたか、が分かる -
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「大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝 (斎藤幸平著)」と「コモンの再生(内田樹著)」からの流れで本著を手に取った。
本著138頁からの{84}a=[40]の節、「こうして、ここに、自然発生的な生産用具と、文明によって創出された生産用具との差異が際立ってくる。(中略)第一の場合、つまり自然発生的な生産用群も場合には、諸個人は自然に服属させられ、第二の場合には労働の生産物に服属させられる。それゆえ、第一の場合には、所有(土地所有)もまた直接的・自然発生的な所有の支配として現れ、第二の場合には労働の、とりわけ蓄積された労働の支配として、つまり資本の支配として現れる。(後略)」に始まる本節をじ