夜パフェ、シメ(締め)パフェなる文化が、この物語の舞台である札幌を中心に見られるということは知ってはいたが、まさかこれほどまでとは。
しかも主人公は毎週のように通ってるし、太りそうだなと余計な心配をしてしまった。
パフェを食べていた時のことがトラウマとなってパフェが苦手になってしまった主人公。
主
...続きを読む人公の兄がお酒もパフェも提供しているお店を経営しているのは、何か意図的なものがあったのか。
その謎は、物語の後半で明かされる。
何とまあ妹想いのお兄様で(要はブラコンである)
寧ろ重くないか、その愛。
その兄をして重いと言わしめるのが、主人公のパフェのトラウマを克服するきっかけとなったパフェ職人のイケメン。
本編中、主人公の色々思わせぶりなことをしておいて(例えば、他の男性陣が主人公を「ちゃん」付けで呼ぶと、馴れ馴れしいと割って入ってくる人)彼の内面は見えてこなかったが、巻末に彼視点の話を用意してくれているという用意周到ぶり。
夜パフェのお店の日常も見られつつ、気になっていた主人公の兄と彼との馴れ初めや、彼の本心などの補完話になっていて、凄く満足できた。
大丈夫だ、そのまま進め。
その重さですらかっこいいと言ってくれる子だぞ、この主人公は(多分)
何故主人公がパフェを苦手になってしまったか。
主人公視点でのその場面は出てくるが、真相というかその決定的な描写、きっかけとなった発言の具体的な説明は結局出てこない。
ただ父の怖い声だけ覚えていて、そのせいで食べられなくなっている。
それだけ。
案外、記憶とはそういうものだし、一から十何もかも説明する必要はないかなと読み終えて思った。
兄がずっと気に病んでいたこの件は、ちゃんと克服できて、主人公は今では笑顔でパフェが食べられるようになった。
過去は乗り越えられた。
それでいいのだ。
出てくるパフェの描写が具体的で、かつ色の描写等が細かく、何故こんなパフェが描けるのかと毎回びっくりしながら読んだが、作者さまの紹介を見てなるほどと。
この方だからこそ書けた物語だったと思う。
美味しく美しいパフェと、兄妹の絆と、そしてこれから始まる恋と、贅沢に味わえる一冊だった。