確かな病名もつかず、相談してもこれといった対処法がないから、しばらく安静にして様子見という慢性的な疲労というのは案外世の中に多い。著者もそれに苦しむ一人だが、可能な限り解明し、自らのためにも役立てたいという本だ。
ー それからのほぼ1年間、数百冊の文献の読破と分析に時間を費やした。くる日もくる日も、疲労と副腎機能とコルチゾールに関する文献を手当たりしだいに探し出しては、内容をすみずみまで精査し、副腎疲労理論の証明だけに専念した。その結果、理論は証明できなかった。結局、この説を科学的に調べ尽くしても、コルチゾール値の低下や副腎機能の異常が慢性疲労を引き起こす証拠は得られず、私は途方にくれた。慢性疲労に苦しむ人と健康な人の副腎機能とコルチゾール値を調べた研究の大部分で、両者の関連値に違いが見られなかったのだ。認めたくなかったが、研究結果を見れば、副腎の機能不全やコルチゾール値の異常が慢性疲労を正しく説明してくれるものではないのは明らかだ。
上記を記載してはいるが、辿り着いたのは「ミトコンドリア機能障害」。
ー 私たちの体がもつ数千億個の細胞のほぼすべてに、数百個から数千個のミトコンドリアが含まれている。そのミトコンドリアこそが、それぞれの細胞が独自の機能を果たすために必要とするエネルギーをつくり出している。実際、ミトコンドリアは「細胞の発電所」と呼ばれることも多い。つまり、私たちの細胞のエネルギーを生み出すバッテリー、あるいは発電機のようなものだ。そのミトコンドリアが機能不全になると、もっと正確に言えば(理由についてはのちに述べるが)エネルギーの産生量を減らすと、細胞が仕事をするのに必要なエネルギーが足りなくなる。心臓細胞は効率的に血液を送り出せず、筋肉細胞はスムーズに体を動かせない。免疫細胞は確実に感染症と戦えず、腸細胞はうまく食べ物を消化できない。腺細胞は最適なホルモンを産生できず、神経は効果的に脳を機能させられなくなる。こうして細胞を効率的に働かせるエネルギーがつくられなくなると、疲労の症状が体のあちこちで表れ、慢性的にエネルギーレベルが下がった状態になるわけだ。
原理的な事を述べつつ、食事や睡眠における改善の提案をしてくれる良書。やれることから実践していくという姿勢が大事だと思うが、やはり特効薬というのは無さそうだ。急激なダメージを負わないように日々、無理をしない事も大事。