木村昌人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、渋沢栄一が欧米の民主主義や資本主義を導入する際に、それらの背景にある異文化とどのように葛藤しながら「論語と算盤」(儒教精神と経済合理主義の両立)を基礎とした「合本主義」を形成し、またそれをどのように全国に広めていったのかを青年期から死去までを通観しつつ叙述したものである。著者はその際に3つの試みをおこなったと述べる。1つ目は、「民主化」という概念を取り入れたこと、2つ目は渋沢の人生を編年体で俯瞰すること、3つ目は同時代の国内外の人物との比較の視点を取り入れることである。なかなか野心的な試みである(とくに3つ目)。
以下、いくつか気になった点を列挙しておきたいと思う。
1)渋沢の思想 -
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Posted by ブクログ
今年(2021年)の1月に、童門冬二著『渋沢栄一 人間の礎』(集英社文庫)と、安藤優一郎著『渋沢栄一と勝海舟』(朝日新書)を読みましたが、どちらも渋沢の前半生を中心に書かれているので、後半生(実業家としての渋沢)に詳しい本もそのうち読んでみたいと思っていました。
『渋沢栄一 人間の礎』の中で、後半生に詳しい本の一冊に、中公新書の木村昌人著『渋沢栄一ーー民間経済外交の創始者』が挙げられており、手軽な新書が好きなのでこれを読むつもりだったのですが、書店になくて、そのかわり、同じ著者によるこのちくま新書ならあったので購入してみました。
そして8月、NHK大河ドラマ『青天を衝け』が半分以上過ぎ -
Posted by ブクログ
渋沢栄一がこの本の中で特に強く語りかけていたと思うことは、誠実と正直であることであった。そして、第一に大切なことがやはり人に対する誠実な態度と、正しい行い行いをするということだった。
私の感想は、やっぱりこの人生の上でどんなことをするにも、自分の道徳心を常に正しい方向に保ち、ほかの人に対する態度が常に誠実で思いやりを持った行動をどんな時ももてるような人間でありたいと思った。
宗教よりも、だだ人を思いやる道徳心があるかないかに尽きると思う。
p140の抜粋 46 人物観察の3つのポイント
「視」と「観」は二つとも「ミル」と読む字ですが、意味するところは違っています。「視」は物事の表面を見ること -
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Posted by ブクログ
大河ドラマも始まり話題の資本主義を日本にもたらした巨人、渋沢栄一について、とりあえず概略を知りたいと思いセレクト。
渋沢栄一という人間を語る際に、「日本における資本主義の始祖」というワーディングで見てしまうのは誤解を招くように感じた。むしろ、現代における彼の意義とは、「民間にできる点は民間で、国・政府にできることは国・政府で」という考え方であろう。そのバランスをどう取るかは、市場vs国家という形で20世紀の経済を揺り動かす一大テーマであった訳だが、市場、つまりは民間の力がどれだけ大きい可能性を秘めているかを明らかにした点、そこにこそ彼の現代的な意義があると感じた次第。