木村昌人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本人が書いたり話したりしたものが、とても分かりやすく書かれている。
多くの事業を興した渋沢栄一は、興味の幅が広いのと、国を発展させたいという強い思いだったのだというのが伝わってくる。
人物評も面白い。いろんな性格・性質の人々がいたのだ、と少しあの時代が身近に感じる。
渋沢がおもしろいのは、論語の教えについて、商業を卑しんでいるものではない、という反論をしていること。江戸の士農工商の世を維持するための朱子学の教えを否定する。
あとは、幼い頃に、祈祷の際に乗り移ったという悪霊?を詰問し、何の時代か、年号とか問うて矛盾を質したというエピソード。賢い。常に考えている。
実力主義をとにかく訴えていた。
自分が特に共感したもの
33 働くものに必要な7つの精神
①実直であること
②勤勉奨励であること
③着実なこと(豪傑な態度は事業にとっては禁物!)
④元気なこと
⑤温良なこと
⑥規律を重んじること
⑦忍耐力があること
37 小さいことは常識に照らし、重要なことは驚かず
成功は苦しいときにやってくる。失敗はうまくいっているときにおこりやすい。
心を引き締めてとりくんだのがよかった。
物事がうまくいっているときは、この世で何でもできると思い、軽く考えてしまうので、目論見が外れる
うまくいっているときにも調子に乗らず、重要なことでも些細なことでも、同じようによく考えて行動すること
46 人物観察の3つのポイント
論語で説かれた人物観察の方法では、はじめにその人の外面に現れた行いの善悪を調べ、それからその人の行いの動機は何かをじっくり見定めます。さらに一歩進んで、その人の安心はどこにあるか、どんなことに満足して暮らしているか
外に現れたおコアにが正しく見えても、その人を動かす精神が正しくなければ、けっして正しい人とは言えません。
…動機となる精神が正しくても、家にいて何不自由のない生活に明け暮れると、誘惑に負けて悪いことをしてしまうことも。
行い、その動機、何に満足するか
水戸公のパリ留学に同行。下水道まで実際に見る。 -
Posted by ブクログ
渋沢栄一の歴史と、思想について。
生涯については、大河ドラマを見ていたので割愛し、人生をどう生きるか から読む。
面白かった。
なんとなく、京セラの稲盛さんを思い出した。
やはり私利私欲ではなく、誰かのために、志と正しい道を進むということが人生の要諦なのかなぁ、と思いました。
チャプターが独立しているので、読みやすく、自分が必要だと思うところから読めるのも良かったです。
以下備忘録。
41争いのすすめ→正しい道を進む場合、絶対に争いは避けて通れない。
44交際術を捨てなさい→至誠 トイスラーの相談事について誠意を尽くした話
45適材適所の裏にあるもの→家康の話
46人物観察の三つのポイント→視ると観る -
Posted by ブクログ
本書は、渋沢栄一が欧米の民主主義や資本主義を導入する際に、それらの背景にある異文化とどのように葛藤しながら「論語と算盤」(儒教精神と経済合理主義の両立)を基礎とした「合本主義」を形成し、またそれをどのように全国に広めていったのかを青年期から死去までを通観しつつ叙述したものである。著者はその際に3つの試みをおこなったと述べる。1つ目は、「民主化」という概念を取り入れたこと、2つ目は渋沢の人生を編年体で俯瞰すること、3つ目は同時代の国内外の人物との比較の視点を取り入れることである。なかなか野心的な試みである(とくに3つ目)。
以下、いくつか気になった点を列挙しておきたいと思う。
1)渋沢の思想形成に頼山陽の『日本外史』があったとはよく言われるところであり、本書でもその点が指摘されている。『渋沢栄一は漢学とどう関わったか 「論語と算盤」が出会う東アジアの近代』などが参考文献として挙げられているが、やや説明不足。
2)渋沢が熟議を重視した、その根源的体験として①攘夷決行を打ち明けた時、②その攘夷決行を断念したときを挙げている。この熟議民主主義のアイディアは面白いと思うが、ちょっと飛躍があるかとも思う。今後の深化を期待したい。
3)渋沢のサン=シモン主義からの影響もつとに指摘されているところであるが、ここにこそ同時代人との比較史的視点をしっかりと入れて欲しかった。たとえば岩倉使節団はなぜサン=シモン主義に感化されなかったのか?などの問も成り立つのではないか。
4)本書の白眉は第2章、第3章である。第2章、第3章での渋沢の思想と行動を整理した上での著者の合本主義の定義(「公益を追求するという使命や目的を達するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」p.167)は、非常に重要だと思われる。ここでも問題は、それが同時代人にどれだけ共有されていたのか(あるいは、いなかったのか)という点であろう。たとえば岩崎弥太郎は上記の合本主義とまったく相容れない思想の持ち主だったとよく言われるが、岩崎的な方法が日本の産業化にとってマイナスだったとは必ずしも言えないだろう。優劣を論じるのではなく、後進国日本の産業化にとってそれらが相互補完的であったという仮説を置いて考えてみる必要があるのではないか。
5)第4章は「ヨーロッパ重視から米国重視へ」という章タイトルが付けられているが、渋沢の自由貿易主義から保護貿易主義への転向、日露戦争に対する財界協力への転換(児玉源太郎と渋沢のやり取りは確か『坂の上の雲』にも登場してたのように記憶している)、その財界のリーダーの中野武営へのバトンタッチなどなども合わせて考えるべきで、多分、色々なことが連動している。これらを総合するためのグローバル・インテレクチュアル・ヒストリーが必要。言うは易しおこなうは難しだが。
ほかにも重要な論点はいくつもあるように思うが、それはまた追々考えていきたい。 -
Posted by ブクログ
今年(2021年)の1月に、童門冬二著『渋沢栄一 人間の礎』(集英社文庫)と、安藤優一郎著『渋沢栄一と勝海舟』(朝日新書)を読みましたが、どちらも渋沢の前半生を中心に書かれているので、後半生(実業家としての渋沢)に詳しい本もそのうち読んでみたいと思っていました。
『渋沢栄一 人間の礎』の中で、後半生に詳しい本の一冊に、中公新書の木村昌人著『渋沢栄一ーー民間経済外交の創始者』が挙げられており、手軽な新書が好きなのでこれを読むつもりだったのですが、書店になくて、そのかわり、同じ著者によるこのちくま新書ならあったので購入してみました。
そして8月、NHK大河ドラマ『青天を衝け』が半分以上過ぎ、栄一が民部公子(徳川昭武)のお供でパリに行っているところで、東京2020五輪の中断期間に入ったので、そろそろ栄一の後半生を知っておこうと思い読み始めたのでした。
本書では、渋沢栄一の人生を編年体で追っています。つまりこの新書一冊で、渋沢の誕生から死去までの流れをたどることができます。それも、ただ彼ひとりを追うだけでなく、国内外の関連人物たちについても丁寧に書かれており、しかも当時の世界情勢とともに語られるので、タテとヨコ両方の視点で、渋沢栄一という人を、ひいては日本という国の歩みを複合的、立体的に見ることができます。さらに、渋沢が死後にどう評価されているか、また、もし現代に渋沢栄一が生きていたら、という考察まであり、とても興味深く読みました。
ただわたくし経済が苦手なもので、読み始めるとすぐ眠くなってしまって困りました。加えて新書としてはけっこうなボリューム(357ページ)なので、読み終えるのにものすごく時間がかかってしまいました。でも読んで本当によかった。すごく勉強になりました。これからも必要に応じて再読していくことになるでしょう。
最も感心したのは、渋沢のブレない姿勢とねばり強さ。何があってもとにかく「官尊民卑の打破」と「論語と算盤」の精神(道徳経済合一説)と合本主義の三点を柱に動くので、迷いがなく素早くて、でも決して急がず焦らずじっくり取り組み、そして良い結果を生む。だから周りからも信頼される。まさしく〈想像を絶するほど多岐にわたる事業〉を手がけ、ひとつひとつ〈物事の筋を通し、目的を達成するために一番よい案を作成して実行に移〉してきた、このハンパないブレなさとしたたかさは、少しでも見習いたいと思いました。
西南戦争後に実際にあったという〈渋沢と福沢諭吉が将棋を指し、それを大隈重信と岩崎弥太郎が観する〉シーン、将来一万円札の顔になる2人が将棋を指しているとは。私も見てみたい。
-
Posted by ブクログ
渋沢栄一がこの本の中で特に強く語りかけていたと思うことは、誠実と正直であることであった。そして、第一に大切なことがやはり人に対する誠実な態度と、正しい行い行いをするということだった。
私の感想は、やっぱりこの人生の上でどんなことをするにも、自分の道徳心を常に正しい方向に保ち、ほかの人に対する態度が常に誠実で思いやりを持った行動をどんな時ももてるような人間でありたいと思った。
宗教よりも、だだ人を思いやる道徳心があるかないかに尽きると思う。
p140の抜粋 46 人物観察の3つのポイント
「視」と「観」は二つとも「ミル」と読む字ですが、意味するところは違っています。「視」は物事の表面を見ることですが、「観」は内側に入り込んで物事の大切なところまで見ることです。
孔子が『論語』で説かれた人物観察の方法では、はじめにその人の外面に現われた行いの善悪を知らべ、そこから青の人の行いの動機は何かをじっくり定めます。さらに一歩進んで、その人の安心はどこにあるか、またどんなことに満足して暮らしているかなどを知ることができれば、かならずその人の本当の姿が明らかになります。
外に現れた行いが正しく見えても、その人を動かす精神が正しくなければ、決して正しい人とは言えません。
p147から抜粋 49事業を起こすときの4つのポイント
①事業は果たして、成立すべきものか否かを探求すること。
②個人に利益を与えるとともに国家社会にも利益を与える事業であるかどうかを知ること。
③その起業を行う好機かどうかを判断すること。
④事業が成立したのち、その経営者に適当な人物がいるかどうかを考えること。
p174から抜粋
「己れ立たんと欲して人を立て、己れ達せんと欲して人を達す」
(自分が立派になろうと望めば、ほかの人を立派に扱わなければなりません。また自分が物事を達成しようとするなら、ほかの人も達成できるようにしなければなりません。)
p200 85 ラビンドラナート・ゴール 1861~1941
インドの詩人、思想家
1913「ギタンジャリ」でノーベル文学賞 -
Posted by ブクログ
大河ドラマも始まり話題の資本主義を日本にもたらした巨人、渋沢栄一について、とりあえず概略を知りたいと思いセレクト。
渋沢栄一という人間を語る際に、「日本における資本主義の始祖」というワーディングで見てしまうのは誤解を招くように感じた。むしろ、現代における彼の意義とは、「民間にできる点は民間で、国・政府にできることは国・政府で」という考え方であろう。そのバランスをどう取るかは、市場vs国家という形で20世紀の経済を揺り動かす一大テーマであった訳だが、市場、つまりは民間の力がどれだけ大きい可能性を秘めているかを明らかにした点、そこにこそ彼の現代的な意義があると感じた次第。