千葉ともこのレビュー一覧
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杜甫を主人公とした小説。杜甫の「飲中八仙歌」をベースに登場人物との関わりを描いていく。杜甫と李白の描き方、関わりは常識的とも思えるが、これ以上上手くは書けないだろう。なかなかである。他の登場人物が素晴らしい。特に賀知章、崔宗之。それほど有名ではない人物だが、さもありなんという感じ。焦遂は歴史上の人物かどうか不明で作者の創作に近いか。八仙の中にない阿倍仲麻呂も登場させる。これがまた絵に描いたような仲麻呂のイメージにピッタリ。素晴らしい。
よく分からないのが粛宗。若い頃はそれなりに魅力的で、杜甫との交わりは創作だろうが面白い。そして即位後の再会。面白くない。事実に近いのかもしれないが、もう少し面白く書けなかっただろうか。 -
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いやぁ〜!おもしろかった!
安史の乱に巻き込まれた兄妹を描く、まるで大河ドラマをみているかのような作品…
松本清張賞受賞作にしてこれがデビュー作
私は中国の歴史には疎い
安史の乱についても、巨漢のコスプレおやじの安禄山が部下の史思明と共に反乱を起こしというくらいの知識しかない…(変な知識だけはある…
まぁとにかくそれでも十分に楽しめる作品!
もちろん何言ってんのよ!中国史なら任せておいて〜っていう人なら100倍は楽しめるのは間違いない…
しかしすごいよね!
史実のなかに架空の人物があたかもそこに実在したかのように生き生きと描かれる
歴史のしっかりした知識の上に人間ドラマがある!
読者はそこから知識も得られて、ちょっぴり賢くなった気になれる…(笑)
だから史実に基づく作品なんてのは大好きよ
まぁ、とにかく安史の乱について難しい参考書を開かなくても、映画を鑑賞しているように学べる上に、極上のエンターテイメントを味わえる…
安史の乱に巻き込まれた心優しい武人の兄・張永と男以上に剣や弓を操る女傑の妹・張采春、その婿となるはずだった文人の顔季明
この3人を中心に物語は進むのだが
(兄妹は架空の人物)
彼らは唐という国の荒波に揉まれていく…
そして、兄妹にとっては憎き安禄山の息子、安慶緒の描き方がこの作品の要!
「一字は、天地を揺るがすほどの力を持つと」…
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ネタバレ・あらすじ
天宝三載(744年)から天宝十五載(756年)の唐代が舞台。
飲中八仙歌という唐の酒呑みたちを題材に杜甫が詠った詩に因んで、杜甫と彼らの関わりを書いた作品。
・感想
李白と杜甫については名前しか知らず、有名な「国破れて山河あり」が杜甫の作品だと言う事も忘れてたレベルの知識しかない、ていうか李白と杜甫って時代が被ってた事も知らなかった。
結構ダイジェスト読んでる感じだったかも。
「李白と杜甫」という副題がついてるけれども、李白の杜甫への興味関心の描き方が「ジャンルもカップリングも知らない同人誌を読んだ気分」と同じだった。
作者の中では李白⇄杜甫間に互いに巨大感情があるんだろうけど、読んでる側は唐突すぎて戸惑いを覚えた…。
李白パートの最後、李白と杜甫が酒場で出会った場面も運命的な出会いを演出したかったんだろうけど、杜甫の声を聞いただけで「肌が粟立った。この男こそ太陽。眠っていた体の隅々が覚醒する」なんて描写がされててちょっと笑ったw
そして物語のラストに「杜甫が李白の帰る場所、居所だ」とか書かれても「えっそうだったっけ?」ってなった。
これまでの物語の総括にそのセリフを持ってくるのはちょっと強引じゃないですかね?などなど。
李白と杜甫にするには二人の関係性の描写が物足りず、かといって八人の酒仙を描くにも物足りず。
杜甫▶︎李白はわかるんだけどさ。
副題は要らなかったのでは?と思ったけど、作者はそこを描きたかったんだろうからなー。
真面目な杜甫と型破りな李白、そんな正反対な二人が詩で通じ合う…いいよね、わかる。
文献等から拾える歴史の合間をいかに妄想力で補うかがこういう作品の面白さだなんだろうけど、作者の嗜好が強いな、と思ったかも。
あと古代中国が舞台なのに登場人物の中身が「現代日本人女性」だなというのも感じた。
古代中国人の精神性なんて全然わからんけども。
総じて「全然知らないジャンルの全然知らないカップリングの同人誌」を読んだなーって印象。 -
Posted by ブクログ
世の中を動かすものは暴力でなく、言葉の力。
一時的には暴力で動かされてしまうけども、普遍で不変の力を持って世界を動かし変えてゆくのが、言葉の力。
それを信じ行動した顔季明の生き様に共鳴し、激動の安史の乱を戦い抜いた張兄妹の物語。
顔季明は戦乱の中で命を落としますが、彼の目指したものを張兄妹がそれぞれの生き方でつなぎ残すことで、少しずつ変わっていこうとします。
その歩みは遅く劇的な変化が見えないために、軽んじられがちな言葉の力ですが、多くの人々の中に確実に残り変えてゆく。それを信じて己の信念として戦い続ける二人の兄妹の生き方は美しく誇り高い。
武侠の生き様とはこうであるもの、という心地よさをラストまで読み進めれば味わうことができる物語です。
安慶緒が変化してゆく様がとても良い。彼の結末は史実で明らかなのですが、暴虐無尽から変化しようともがいている様子が窺えるのがよいです。
史実から、それが途中で挫折するであろうことも予想できます。それを踏まえた上で、彼が変化しようとしているのがいいのです。
長く困難な道であろうとも、理想を目指して進もうとする姿。まさか、安慶緒にそれを見せられるとは。