ニコラス・クリスタキスのレビュー一覧
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上巻での多種多様な事物の積み重ねからの、人類の文明の堆積を思わせるスペクタルな下巻でした。
人間にはこれまでの歴史が積み重ねた遺伝的な特性である 普遍的な社会性一式 ソーシャル・スイート がある。
=自然選択によって形成され、人間の遺伝子にコードされているもの
何故そのような特性が遺伝子のコードに刻まれたのかは、社会的な種として連綿たる歴史を紡いだ結果だ。
これはただ事実であるだけではなく、私たちの幸せの源でもある。
そしてそれは全人類のDNAの少なくとも99%は完全に同じであり、私たちが共有する人間性の深い源を特定することによって本当の正義を育むことに他ならない。
弁社会論 で世界 -
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これはかなり興味深い本である。
かつ、感想を書くのに慎重さが必要な本である。
分断を乗り越える、という宣伝文句とは裏腹にそれが容易ではないことを示唆する本である。
愛情や友情、ゆるやかな階級、協力といったいわゆる「社会性一式」は、所属する文化によって多様性があるのか、それとも相当程度普遍的なものなのか、が、本書の基本的な問いだてである。後者は要するにこれは遺伝か?ということでもある。
たとえば集団の最小単位、夫婦はどう成立したのか。
一夫多妻は一夫一婦よりも女性差別的なのか。
遺伝学の知見ではこれは簡単な問いではない。どちらがより女性の選ぶ権利を保証しているかも一概には言えない。
一般に農 -
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「善き社会をつくりあげるためのブルー・プリント(青写真)を、私たちは自分たちの内に持っている」というのが本書の内容。ブルー・プリントは世界の人類が持っている一揃えの普遍的な文化ともいうことができ、それを「社会性一式(social suite)」と名付け、解説を加えてくれている。例えば、個人のアイデンティティを持つこと、社会的交流、教育など。これらは人間の進化の過程で遺伝子に書き込まれ、フィードバック・ループを繰り返している。
本書を読み進めると、人間の本姓は善なのだと改めて認識をさせてくれる。過去の歴史を振り返り、人間の本姓は本当に善なのか?と問いかけることは簡単だ。けれども、本書は善なのであ -
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「ブループリント」下Nicholas Christakis
人類や霊長類の社会的ネットワークの特徴として、同じ数の絆を持つ個体同士が繋がるという「次数の同類選択性」がある。
ニューロン、遺伝子、コンピューターのネットワークでは、人気のある節点は多数の不人気な節点と繋がる傾向があり、これを「次数の異類選択性」という。
多少のヒエラルキーがある方が公平な集団になりやすく、集団内の全メンバーが有益な活動において協力し、協調し、生き延びる機会が増える。
安定したリーダーシップはリーダーと追従者の間だけでなく、追従者同士の平和的な関わり合いも促す。
友情こそが幸福の主要な決定因であり、むしろ婚 -
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「ブループリント(上)」Nicholas Christakis
人生の最後に願うことは共通しており、過ちを償うこと、愛する者の側にいること、耳を傾けてくれる人に自分の物語を語ること、痛みを感じずに死ぬこと
自然選択は、愛し、友情を育み、協力し、学び、他者の独自性を認めるといった人間の能力をもたらす社会性一式(ソーシャルスイート)の進化を先導してきた。
我々は自己の内部に人間にとっての自然な社会状態を反映した生まれながらの性向を持っている。それは先ず善なるもの。
生後3ヶ月の赤ん坊にも公正性や互恵主義を感じ取る力がある。
生後13ヶ月の赤ん坊は他人の精神状態を理解する。
人間は積極的 -
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著者のニコラス・クリスタキスは、医師で、イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長。専門はネットワーク科学、進化生物学、行動遺伝学、社会学、医学など多岐にわたる。2009年には『タイム』誌の世界で最も影響力のある100人に選出されている。
世界が分断される中では、どうしても人間の負の側面が強調されてしまう。しかし、そもそも人間は隣人を愛するようにできており、善き社会をつくるための特性を備えていると著者は言う。これらは遺伝子にコード化されているのだ。暗い世の中にあって、希望の光は私たち自身の中にあったようだ。これらの主張をさまざまなファクトで解き明かしている。
<概要>
米国をはじめとして世 -
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人間の持つ「社会性」(友情、利他の心、グループに階級ができる傾向など)は、「本能なのか、それとも、社会での学習の結果なのか?」。
違う言い方では「生まれか育ちか?」。
要するに結局遺伝か?
上巻での夫婦間の愛情(社会性の最小単位)の分析に続き、下巻では友情や利他の感情を俎上にのせる。
集団が生き抜く上で、身内を守り合う利他の心は人間以外の動物でも発達している。
中でも人類は、相手がどういう存在で、敵が味方かを判別するために表情や顔の違いを著しく進化させた。
火を使う調理を手に入れ、摂取カロリーが爆発的に増加した中で、頭脳が活発化。知恵の共有は不可欠になっていく。
こうした経験は、遺伝子の突 -
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著者のニコラス・クリスタキスは、医師で、イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長。専門はネットワーク科学、進化生物学、行動遺伝学、社会学、医学など多岐にわたる。2009年には『タイム』誌の世界で最も影響力のある100人に選出されている。
世界が分断される中では、どうしても人間の負の側面が強調されてしまう。しかし、そもそも人間は隣人を愛するようにできており、善き社会をつくるための特性を備えていると著者は言う。これらは遺伝子にコード化されているのだ。暗い世の中にあって、希望の光は私たち自身の中にあったようだ。これらの主張をさまざまなファクトで解き明かしている。
<概要>
米国をはじめとして世 -
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人類が進化の過程で、より良い社会を作るための「青写真」を描く遺伝子を受け継いできたことを、自然科学・社会科学両面からのアプローチによって明らかにした一冊。
著者は、過去に形成された様々なタイプのコミュニティを検証し、それらの成否を分けたポイントが、著者の定義する「社会性一式」、つまり個人のアイディンティティ認識や家族への愛情、他人との交友や協力、社会的な指導と学習といった、社会の構成・維持に不可欠な8つの特性にあったと分析するとともに、一部の動物もこれらのいくつかを保持することをふまえ、人類を特別視せず生物の種の一つと考えれば、同じ種である人間同士で殊更「違い」を強調するよりも、普遍的遺産と -
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人類が進化の過程で、より良い社会を作るための「青写真」を描く遺伝子を受け継いできたことを、自然科学・社会科学両面からのアプローチによって明らかにした一冊。
著者は、過去に形成された様々なタイプのコミュニティを検証し、それらの成否を分けたポイントが、著者の定義する「社会性一式」、つまり個人のアイディンティティ認識や家族への愛情、他人との交友や協力、社会的な指導と学習といった、社会の構成・維持に不可欠な8つの特性にあったと分析するとともに、一部の動物もこれらのいくつかを保持することをふまえ、人類を特別視せず生物の種の一つと考えれば、同じ種である人間同士で殊更「違い」を強調するよりも、普遍的遺産と -
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人間に共通するもの
ブループリントとソーシャル・スイート
意図しないでできてしまったコミニュティとして
難破事故の生存者コミニュティを挙げています。
また意図されたコミニュティとして
各々にとってのユートピア建設を挙げています。
そして現代的なコミニュティとして
オンライン上のコミニュティを挙げています。
上記の異なる経路でつくられたコミニュティに置いて、上手くいったコミニュティには、ブループリントとソーシャル・スイートが機能したようです。
それぞれのコミニュティの成否の根底にはゲマインシャフト すなわち 個人的な交流から生じる集団的一体感や連帯意識が必要であり、対人関係に置いて愛が