【感想・ネタバレ】ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年10月04日

人類が進化の過程で、より良い社会を作るための「青写真」を描く遺伝子を受け継いできたことを、自然科学・社会科学両面からのアプローチによって明らかにした一冊。

著者は、過去に形成された様々なタイプのコミュニティを検証し、それらの成否を分けたポイントが、著者の定義する「社会性一式」、つまり個人のアイディ...続きを読むンティティ認識や家族への愛情、他人との交友や協力、社会的な指導と学習といった、社会の構成・維持に不可欠な8つの特性にあったと分析するとともに、一部の動物もこれらのいくつかを保持することをふまえ、人類を特別視せず生物の種の一つと考えれば、同じ種である人間同士で殊更「違い」を強調するよりも、普遍的遺産として受け継いできた社会性一式という「共通性」にむしろ着目すべきであり、人々は偏見や差別よりも互いに協力的であることこそが、進化論の観点からも合理的なのだと主張する。

人類が遺伝子的進化によって形成してきた社会の中で、人々が協力や学習といった相互作用を通じてさらに社会を進化させ、その進化をもたらす行動様式等が自然選択によって再び人類の遺伝子に組み込まれていくというフィードバック作用、いわば遺伝子的進化と文化的進化の共進性こそが人類発展のキーであるという著者の大局的かつ楽観的な視点は、自然科学vs社会科学、同質性vs多様性といったトレードオフを超えたジンテーゼとして、今日の分極化が進む世界に重要な示唆を与えてくれる。

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Posted by ブクログ 2020年12月12日

社会の分断や差別など暗い話題がどうしても多くなるニュースを見ていれば、人間が本質的に備えているであろう人間性もまた暗いもののように思えてくる。しかし本書はそうしたイメージに対して、実は遺伝子レベルで善き社会を作ろうとする青写真(=ブループリント)が人間には存在しているという点を主張する。その点で本書...続きを読むのメッセージは、新たなる啓蒙概念を提示するスティーブン・ピンカーと近いものだと理解した。

遺伝子レベルに存在する人間性とは本当に存在しているのか?読者が当然抱くであろうそうした疑問に対して、本書は人類の歴史を辿りながら、一つ一つ実証的に議論を進めていく。当然、実験室の中で善き遺伝子を分析するといったことは不可能であるわけで、読み手としても本書を読んで全てに確証が持てたとは言い難い。

それでも本書が伝達しようとするメッセージには一定の正当性があると感じたし、善き人間性を遺伝子にまで翻って証明しようとするこのアプローチは面白いものであると感じた。

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