小倉日向のレビュー一覧
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小倉日向『いっそこの手で殺せたら』双葉文庫。
これは面白かった。読み進むうちに深まる謎。プロローグを読むと主人公が教え子に手を出した不届き者の教師かと思えば、そうではなく。中盤の手前で性犯罪をテーマにした社会派小説であることに気付くのだが、全くの謎だらけなのだ。
元教師で現在は在宅でライターを生業にしている筒見芳晃は10歳年下の妻・絵梨と年頃の娘・沙梨奈と3人で平穏な暮らしを送っていた。
ある日、勤め先から帰って来ず、携帯電話も不通である妻を心配した芳晃は不吉な予感に駆られて交番を訪ねると、妻が職場の近くで都の迷惑防止条例違反で逮捕されたことを知る。
芳晃が勾留中の妻に接見しようとす -
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小倉日向『極刑』双葉文庫。
著者のデビュー作。
なかなかしっかりしたストーリーは最後まで緩むことがなく、最後の最後に大きな山場を持って来たところが好評価。
世の中では連日のように様々な事件が報道されている。通り魔、ストーカー殺人、強盗傷害殺人、轢き逃げ、いじめによる自殺といつどんな事件に巻き込まれてもおかしくない状況だ。そして、こうした犯罪の加害者にも関わらず、罪から逃げおおせる輩が居る。
本作は犯罪の加害者に密かに正義の鉄槌を下す現代の必殺仕置人のような男の話だ。
かつて、野島恭介という19歳の男に愛する娘を殺害され、その幼い肉体を汚されたにも関わらず、男に極刑を望まなかった半田龍 -
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最初は謎だらけ。でも物語が進むにつれて、少しずつ真実の輪郭が見えてくる。
展開としてはベタかもしれない。でも、それでもやっぱり面白い。惹きつけられる。
何が正義かなんて、結局誰にもわからない。ただ、一生消えない心の傷を背負った人の気持ちは、その人にしかわからないし、「悪いやつを殺したい」みたいな単純な感情では済まないものがある。
ラストの父の行動は、感情任せじゃなかったと思う。これまでの出来事を経て、彼なりに理性的に導き出した「自分がやらなければならない」という結論だったのだろう。
法的にどうかはともかく、物語の結末としてはとても自然で、納得感のある着地だった。
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小倉日向『東京ゼロ地裁 執行 3』双葉文庫。
書き下ろしシリーズ第3弾。
『極刑』と『いっそこの手で殺せたら』は★5つを付けたほど面白かったので、このシリーズにも期待していたのだが、第1弾は既視感のある設定とストーリーで★1つとふるわなかった。第2弾は★3つと盛り返して来たので、この第3弾には期待するところが大きい。
結果から言えば、この第3弾はなかなか面白かった。今回、東京ゼロ地裁が鉄槌を下すのは、賠償金を安くするために偽装を行なった交通死亡事故の加害者と妻子を殺害して死刑になった男性を貶めた極悪非道の真犯人である。
死刑を執行された死刑囚が冤罪だったという前代未聞の事件。現代日本で -
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このタイトルの意味を知るのは結構後半になりました。冒頭から、なぜ?、どうして?、と思いながら読み進めることになります。
性犯罪者の再犯率は結構高いと聞いていました。しかもその数字は検挙されて表に出ているだけの数字なので、実際には泣き寝入りしたり、検挙できなかったり、事件化されなかった分も含めると更に高くなります。
逮捕された犯罪者は服役して刑期を終えると、またやり直すことができますが、被害者やその家族や関係者はずっと暗い過去を背負って生きていくことになります。
もし、自分の家族や大事な人が被害に遭ったとしたら、もう自分の未来は考えずに、司法に委ねるよりは「いっそこの手で...」と思うは -
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犯罪被害遺族の男が、卑劣な悪人に制裁を加えるお話
以下、公式のあらすじ
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娘を殺されながらも極刑を望まなかった半田龍樹は、妻とも別れ、小さな居酒屋を始めた。
一見、平穏に流れる日々――。だが、常連客は知らなかった。
龍樹の陰の"制裁"を。卑劣な罪を犯しながらも逃げおおせた者を執拗に追跡し、淡々と運命の引き金を引いていく龍樹。
黒い血に塗れた両の手は、やがて思いがけない事態を引き寄せてしまう。
人間のダークサイドを容赦なく抉り、読後はなぜか救われる衝撃のデビュー作。
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言葉巧みにド -
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ネタバレ一気読み。
半田龍樹が、どういう答えを出すか。心の揺れ。
罪を犯しても反省もなく相手が悪い、何で俺が…、そこにいるのがいけないんだ、「正しい」方法だ等と自分勝手な考えばかり…。
逃げ続ける彼らに、言い逃れができないほどの証拠を叩きつける。
龍樹の風貌から、最初は、強気な態度をみせる。
彼の丁寧な言葉遣いと、光のない目、死んだような目をみて震え上がる。
直子の言葉、考え方、感覚が理解できないこともあった。そばにいてほしい人であったが近づいてはいけないとも思う。
動画を拡散させたり、削除におわれたり大手メディアが、全く反応しなかったり、誰も信じるはずのない言い訳、捜査員の独断によるものな -
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ネタバレ一気読み。
妻が捕まったと聞いて、警察へ行き、妻ではない人間が妻だと名乗る。
小柴刑事の行動、妻の勤め先の店長。誰かに助けを求めたい、助けてほしい、抱えきれないと思いながらもすんでのところで思いとどまる。彼らは味方か敵か…。
「会合」の存在。最終手段が「死(殺し)」
魂が殺された被害者。フラッシュバック。逃れられない恐怖。
加害者は笑って過ごしている現実。
警察が、司法が駄目ならこの手で…。
妻のアルバム。針でぼこぼこになった、切り取られた写真。
店長、妻の告白。
会合と芳晃の考え方の違い、否定できない部分。
芳晃のやり方で決着をつける。