ウィリアム・H・マクニールのレビュー一覧

  • 疫病と世界史(下)

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    人類の歴史は、人間が他の人間に寄生する「マクロ規制」と、目に見えぬウイルスや微生物が人間に寄生する「ミクロ寄生」により規定されてきたといえる。科学技術が大いに進歩した現代においても、人類はこの規定の枠外から出ることがない。
    本書は2つの寄生のうち特に「ミクロ寄生」に焦点を当てている。例えばスペイン人の南米征服に疫病が決定的な影響を持っていたことは広く知られているが、ではスペイン人はいつこの疫病を克服したのであろうか?このような考察を繰り広げていくと人類と感染症の壮大な歴史が浮かび上がり、歴史が転回する重大な局面を創出していたことが理解できる。
    刊行されたのが1985年であるから、今から40年前の著作である。その頃に比べると疾病に対する人類の理解や対処も長足の進歩を遂げている。しかし、この2つの寄生の枠組みは、今後の人類の歴史を規定し続けるのだろうと思わせる説得性がある。改めて味読したい。

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    2025年08月04日
  • 疫病と世界史(下)

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    下巻は時代の下降とともに人口変化などのデータが増えてきて、より説得力が増す。と同時に、歴史上の出来事における疫病の与えた影響の大きさが感じられる。1500年代の新大陸に起きた出来事は圧巻の筆致。あっけなく侵略されてしまったのは、そういうことも要因だったのかと。
    今の時代に生きるありがたみを強く覚えた。

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    2021年04月25日
  • 疫病と世界史(下)

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    ネタバレ

    下巻の半ばから、ようやく(期待していた)本題。

    何故、かくも少数のスペイン人に、アステカとインカという二つの大帝国が征服されたのか。
    確かに、スペイン人がやってきて疫病が大流行して膨大な死者が出、且つスペイン人は疫病の被害を受けない。それなら、人口が激減して軍のみならず国家も社会も崩壊するし、「神の恩寵を受けているとしか思えない」スペイン人への抵抗は物理的にも精神的にもできなくなるな。そりゃあ、キリスト教に改宗するわけだ。ようやく理解できた。

    そして、「悪疫によって引き起こされた一般大衆の憎悪と恐怖の感情は、激越な形をとってほしいままに表現された。特に貧者の富者に対する長い間抑えられてきた怨恨が、しばしば表面化して爆発した。こうして各地に起こった暴動と私邸の略奪は、社会組織を重大な試練に直面させる事となった」

    この一説は、新型コロナウイルスからの黒人暴動を予言した形となってしまった。残念である。合衆国がこの試練を乗り越えんことを祈りつつ。

    それにしても、「マクロ寄生」という概念(一般に言うところの分業化と権力)は必要だったのか未だに酔うわからんが。

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    2020年06月16日
  • 疫病と世界史(上)

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     人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。
     現代の文明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すものの、次第に弱毒化していくように進化する。また、人類の側でも共同体内に一定の免疫を維持した状態が保たれるようになっていく。確かに、生物学を学んだものとしては、そういったとこだろうなと理解できる。その理解の単品と、人類の歴史という壮大なプロセスを組み合わせて新たな発見を発見・提唱できるというところがマクニールのすごいところだと思う。
     上述の理解と世界史を組み合わせた場合、それまで交流のなかった人間集団同士が交流するようになった時には一種の無自覚の細菌戦争が行われることが分かる。その時点までにより多くの集団と交流してより多くの病原体と出会っていた方の集団の成員が、他方のインタクトな集団に対して病原体をばらまくことになるからだ。スペイン人がアメリカ大陸に進出した際にインディオを壊滅させた仕組みだ。
     マクニールのすごいところは、上記の仕組みに気がつくことに加えてさらに、膨大な量の史料をあたり、各分野の専門家と議論して、着想への裏付けを取る努力をすること。また、その内容を大著として書き上げる能力。着想・裏どり・記述という一連をこなし、何冊も本を書いている。本当に偉大な学者だ。

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    2018年02月14日
  • 疫病と世界史(上)

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    天然痘等の人類にとっては突発的に表れたミクロの病魔との戦いの歴史。
    文明の興亡に深く、絡んでいることに驚いた。

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    2015年10月06日
  • 疫病と世界史(下)

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    人間もペストやコレラに負けじと……隔離政策や予防接種、研究などに力を入れてきたその始まりが鮮明に描かれている。
    原住民さんが可哀相。

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    2015年10月06日
  • 疫病と世界史(上)

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    (途中 2014年11月6日)
    疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う?
    疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」

    2019/5/27
    #感染症は食物連鎖に組み込まれた一部であり、バランサー
    #技術の発展がバランスを一時的に破壊したが、近年感染症の逆襲が始まった
    #感染症の根絶は難しいし、被害をコントロールするのも難しい。被害を最小限に抑えるには過大なコストが必要。
    #感染症と宿主は持ちつ持たれつで、絶滅させると感染症側も絶滅してしまう可能性がある。だがそれを考えてやるのではなく、失敗を繰り返しトライエラーで結果的にバランス状態となる。

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    2019年05月27日
  • 疫病と世界史(下)

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    感染症が土着化すると、人口減少への圧力が減少、人口増へ
    民間の習俗は、疫病を防止することも助長することもあった。モンゴルの、モルモットは先祖かもしれないから狩らないようにする慣習はペスト菌との接触を遠ざけた(が、その慣習がなかった漢民族がかかった)
    タミル人の、水は毎日組み、室内で長期間そのままにしないという慣習は、居住区域からボウフラの生息域を遠ざけ、マラリアやデング熱対策となった
    一方、イエメンの回教寺院の沐浴場では、病原体をもった生物が共有され、清めるどころか感染を拡大させた

    マラリアに罹った動きが鈍くなるとさらに蚊に刺されやすくなり、動きを鈍くするマラリア原虫が生存に有利になる。蚊帳を使うことでそのような淘汰圧が消え、症状が軽くなる。

    医者の仕事は心理上の問題だった。高い金を自信満々の専門家に払った、何かやった、ベストを尽くした、と思えることが救い。どうしたら良いのかという判断責任からも逃れられる。

    人痘種痘は、アジアの民間療法として11世紀くらいから行われていた。

    戦争では長らく戦闘死よりも病死が多かったが、日露戦争での日本の病死は戦闘死の4分の1だった。考えうる疫病の予防接種を全員にしていたから。以後列強はこれに倣った。

    マラリアの原因となるマラリア原虫は、ヒトとカを行ったりする中で生存する。そのため、そのサイクルを絶てば絶滅する。
    蚊を減らす:殺虫剤、天敵導入、不妊種導入
    蚊と人との接触を減らす:虫除けスプレー、蚊帳、水たまりの除去(住環境・習慣の変化)、牛などの別の吸血先の確保【!!!】



    ミクロ寄生(微生物の感染)/マクロ寄生(支配者による収奪)のバランス

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    2013年08月10日
  • 疫病と世界史(上)

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    歴史を理解する上で、気候変動と人口動態は考慮しなきゃならんと思っていたが、そこに疫病も追加せねば。。。

    疫病は身体的にだけでなく、精神的にも人、社会を打ちのめす。(だから、南米の古代帝国はスペイン人に屈した)

    日本では、人口が十分になり、疫病が風土病として固定されるまでは、社会に免疫がつかず、1世代ごとに疫病が流行した(平安頃)が、これを乗り越えると、人口が倍増した(平安末期~鎌倉)

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    2013年08月09日
  • 疫病と世界史(下)

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    ネタバレ

    疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。

    そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。

    また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。

    最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。

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    2012年09月24日
  • 疫病と世界史(上)

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    ネタバレ

    疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。

    そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。

    また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。

    最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。

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    2012年09月24日
  • 疫病と世界史(下)

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    疫病という観点から歴史を見つめ直すことができた。自分にはまだ難しくてだいぶ斜め読みしちゃったけど、また10年、20年後にでも読み直したい。

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    2025年07月31日
  • 疫病と世界史(下)

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    上巻より読み応えあり。
    インカやアステカが滅亡してしまったのはヨーロッパ人の軍事力が高かったからと思っていたけど、ほとんどが未経験の疫病によるところと知って、そのスケールの大きさになんとも言えない気持ちになる。
    現在も北センチネル島をはじめ未開の部族といわれる人々との交流が制限されていることに納得がいった。ちょっと会っただけで一族全滅の可能性があるなんて恐ろしいし、なんとなくいろんな病気になったり予防接種をしてきたお陰で健康でいられることにしみじみとありがたみを感じる。
    あまり語られてこなかったけど、疫病は歴史を大きく変えるのだなと実感。コロナもその流れの一部なんだなぁ。

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    2023年05月26日
  • 疫病と世界史(上)

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    世界史を疫病の面から考察していて面白い。ぱっと思い付いたのは中世ヨーロッパのペストと新大陸の疫病くらいだったけど、至る所で病気の流行と人口減少は発生していたのだろうと考えさせられた。
    ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』と合わせて読むとより面白いかも。

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    2023年05月11日
  • 疫病と世界史(上)

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    疫病からみた人類史の考察。病原体によるミクロ寄生だけでなく、文明によるマクロ寄生という視点。人口増加にはマクロ寄生とミクロ寄生の両方の克服があったとする。科学技術の発達で予防接種の行われる時代に生きることがなんとありがたいことか。ただ、ツエツエバエは怖い。

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    2021年02月14日
  • 疫病と世界史(下)

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    第四章は、中世ヨーロッパで黒死病と恐れられたペストがユーラシアの草原に棲む齧歯類から広がっていくことを示す。第五章は、大航海時代にアメリカの新大陸に渡ったヨーロッパ人が、免疫系の整っていなかった現地のインディオに与えた影響を論じている。ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で著述しているように、旧世界と新世界の遭遇で疫病の果たす役割の大きさが非常に良く分かった。
    第六章は近代的な医療技術の発展で人類が次第に疫病を制御できるようになった経緯にふれる。ただ、人類が「寄生する形の生物の侵入に対して人類が極めて脆弱な存在である」点は変わらない。

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    2020年11月28日
  • 疫病と世界史(上)

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    原書が執筆されたのは1970年代の半ばで加筆されたのは1998年。新型コロナウィルスが猛威をふるう20年以上も前のことだが、「序」で述べられる、グローバルな社会では感染症が一瞬で世界中に広がるだろうとの記述は、コロナで苦しむ現代社会を予言しているかのよう。
    著者は感染症が及ぼす破滅的な影響の例として、生き残った者たちが精神的打ちのめされることを挙げている。新しい感染症が、特に社会の青年層に対して最大の威力を振るう場合が多く、感染症に続けて何度も襲われると共同社会は崩壊してしまう。また、死と隣り合わせの住民たちが精神的な救いを求めるため宗教が広がっていく理由にもなる。
    天然痘やはしかなどの前代未聞の疫病が人間社会に与える大きな影響、人口密度の大きいエリアで小児病として定着していく過程がたいへん興味深かった。

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    2020年10月20日
  • 疫病と世界史(下)

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    ダイヤモンドの銃病原菌鉄を大分前に読んで感動したが、疫病を中心に書いている本書のスペイン人が中南米に勝った一連の疫学的作用はこっちの方が俄然分かりやすいし、説得力がある。想像力が豊かだし、本当にそうだったんだろうなと言う凄まじい説得力がある。その上、結びに書いてあるこれからのインフルエンザを中心とした未知の疫病による未来の災厄は本当に恐ろしいし、逃れざる現実なんだなと新型コロナを前に恐怖と共に説得力を持つ。地球温暖化も含めて色々な事が今後も起きていくのだろうし、そう言う時の備えに対し、国や世界全体として備えが必要だと強く思った。

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    2020年09月01日
  • 疫病と世界史(下)

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    疫病・感染症との関わりという視点でみたマクニール先生の世界史講義。下巻は、モンゴル帝国の勃興から、近現代(1950年代)ころまでを扱っている。

    上巻よりも時代が下ってきているせいか、具体的なエピソードが多くなり、マクニール先生の筆も迫力を増している。世界史の大きな転換点には、いつも疫病との闘いがあったということが、この本を読むとよくわかる。インカ帝国・アステカ帝国の征服、アメリカ大陸に渡ったピルグリム・ファーザーズたちが「新世界」で領土を広げていくときにも、その背景には疫病が介在していた。

    特に、これは歴史の皮肉であり、同時に大変興味深いと感じるのは、そうした疫病に対する耐性(免疫の有無)が時として、在来の宗教も抱き込んで統治の方法(征服の方法)に、狡猾に利用されたということである。もしも、白人征服者たちが、アメリカ大陸に辿り着いた時、逆にアメリカ大陸在来の疫病にやられていたとしたら、現在の人種問題はどうなっていただろうかと考えてしまう。「歴史にifは無い」と言われ、もしも、、などと考えるのは野暮であることは承知ではあるが、根深い人種差別の歴史を考えるとき、そして社会を分断するほどの暴動を目の当たりにするとき、ふとそんなことを夢想したくなる。

    ところで、この本は、山川の「世界史」を学んでいるだけではわからなかった歴史の裏側を見せてくれるのも大変に面白い。たとえば、西ヨーロッパの知識人たちの共通語であったラテン語が衰退し古語となってしまった原因は、この古代語を自由に操れるまでに習得した聖職者や教師たちがペストに罹って大勢死亡したことで加速したとか、「イギリス発汗熱」という疫病が蔓延する中で、ルターとツヴィングリが「これ以上ここで話していると俺たち感染してしまう!」と言って、突然逃げ出したために、ルター派とカルヴァン派が分裂したままになってしまったとか、コレラ菌の入ったビーカーの溶液を飲み干した医者の話とか、このほかにも目から鱗な話が散りばめられていて興味が尽きない。

    だが、この本に惹かれるのはこのような面白さだけではない。マクニール教授の社会に対する温かい眼差しと、来たるべき社会に対する卓抜した眼差しに息を呑むためである。
    マクニール教授はいう。「これは甚だ不愉快な可能性として考えられることは、敵国の民衆を行動不能に陥らせることを目指して生物学の研究が進められた挙げ句、高致死性の感染症の病原菌を敵地にばらまくようなことが行われ、それが世界の一部、いや恐らくは全土にわたる疫学的惨禍を引き起こすかもしれないということである。」と。昨今のコロナウィルスの発端がいかなるものかは明らかではないが、仮に俗に言われるように、武漢の生物学研究所から漏れた(あるいは撒かれた)ものであるとするならば、マクニールは未来における感染症の世界的蔓延を「予言」していたことになる。

    続けて彼は「現在のところ、また近い未来にあっても、人類は地球という惑星がいまだかつて経験したことのない巨大な生態的大変動のさなかにある。だから、遠くない過去におけると同様、ごく近い未来に予想されるものは、決して安定などではなく、ミクロ寄生とマクロ寄生の間の現存するバランスに生じる、一連の激しい変化と突発的な動揺にほかならない。(中略)未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、寄生する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は、覆い隠せるものではない。」といい、未来への警鐘を鳴らしている。

    上巻のレビューの冒頭に述べたとおり、本書は何気なく手にした本であったが、期せずして、私たちの歩んできた歴史と未来に対する深い視座を与えられ、これからも時を経て読み返したい一冊となった。

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    2020年08月10日
  • 疫病と世界史(上)

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    疫病・感染症との関わりという視点でみたW.マクニール先生の世界史講義。コロナウィルスが拡大を続けているから、ということではないけれど、なんとなく手にとった一冊。上巻は、原人たちの存在した時代、歴史時代から、モンゴル帝国の勃興の前頃までを扱っている。

    上巻では、私たちが文明を持つずっと昔から、私たちの先祖は感染症とともにあり、まるで人類の歴史のすぐそばを伴走するように、感染症も種類や姿を変えながら、脈々と時を刻んでいたことがよくわかる。

    全体として巨視的な記述というか、抽象的な記述が多いが、大昔のことで記録も十分に残っていない時期のことであり、致し方なかろうと思われる。しかしそれだけに、感染症が都市から周辺地域へ広がっていく様子や、国を越えてユーラシア大陸をダイナミックに拡散していく様子をみることができ、極めて興味深い。マクロ寄生とミクロ寄生の間で、私たち人類がいかに生き延び、発展してきたかをみることができ、興味は尽きない。

    歴史は流れ、マクニール先生の世界史講義も下巻に突入していく。

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    2020年08月10日