ウィリアム・H・マクニールのレビュー一覧
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疫病・感染症との関わりという視点でみたマクニール先生の世界史講義。下巻は、モンゴル帝国の勃興から、近現代(1950年代)ころまでを扱っている。
上巻よりも時代が下ってきているせいか、具体的なエピソードが多くなり、マクニール先生の筆も迫力を増している。世界史の大きな転換点には、いつも疫病との闘いがあったということが、この本を読むとよくわかる。インカ帝国・アステカ帝国の征服、アメリカ大陸に渡ったピルグリム・ファーザーズたちが「新世界」で領土を広げていくときにも、その背景には疫病が介在していた。
特に、これは歴史の皮肉であり、同時に大変興味深いと感じるのは、そうした疫病に対する耐性(免疫の有無) -
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疫病・感染症との関わりという視点でみたW.マクニール先生の世界史講義。コロナウィルスが拡大を続けているから、ということではないけれど、なんとなく手にとった一冊。上巻は、原人たちの存在した時代、歴史時代から、モンゴル帝国の勃興の前頃までを扱っている。
上巻では、私たちが文明を持つずっと昔から、私たちの先祖は感染症とともにあり、まるで人類の歴史のすぐそばを伴走するように、感染症も種類や姿を変えながら、脈々と時を刻んでいたことがよくわかる。
全体として巨視的な記述というか、抽象的な記述が多いが、大昔のことで記録も十分に残っていない時期のことであり、致し方なかろうと思われる。しかしそれだけに、感染 -
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下巻では3つの章に分かれていて、紀元前1200年から1500年まで、1500年から1700年まで、最後は1700年以降の医学の発達に伴う生態的な影響について述べられています。世界史の教科書を紐解くと殆んどと言っていいほど疫病についての記述がありません。唯一、14世紀にユーラシア大陸全体に流行した黒死病(ペスト)の影響があるだけのようです。しかし、この本を読むと、疫病がいかに人類史に影響を与えてきたかが分かります。
紀元前から人類を苦しめてきた疫病は、ペストに代表されるように、風土病として長らくその土地に留まってきたのですが、ユーラシア大陸でのモンゴル帝国の侵略により、遠くの土地まで拡がってしま -
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著者のマクニール氏は当然歴史家ですが、これを読むと科学者でもあると思うのです。
この本では「世界史」で詳細に触れていない疫病について述べているのですが、数少ない古書を紐解くにしても医学や生物学などの自然科学の知識がないと、感染症ついては到底推測できないからです。グローバル化した現代社会では地球の裏側で発生した感染症が忽ち全世界を脅かす危険に曝されています。最近ではパンデミック寸前だったエボラ出血熱が記憶に新しいところです。今日の人間を脅かす感染症の元となる出来事は、人類の祖先がはるか昔、アフリカの大地から各地に移動していったことに寄ります。熱帯雨林での多様なミクロ寄生の網の中で他の生命体と絶妙 -
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世界中で長く読み続けられている中公文庫の「世界史」を書き上げたマクニールが、『疫病』という観点から歴史を紐解いた本。
最近文庫化して中公文庫「世界史」の隣においてある「銃・病原菌・鉄」と似たテーマであり、病気というものが如何に人類に影響を与えてきたのかがよく分かる。
人類を最も多く殺したのは事故でも戦争でもなく「病気」であり、これが常に戦争の結果や文明の運命を大きく左右してきた。
スティルバーグ監督の映画「宇宙戦争」の最後に、酸素が原因で侵略者達が滅亡するシーンがあったと思うが、人類は他の地域から侵略を受ける度に、お互いの病原菌を運んで大打撃を受けてきたのである。免疫力というものが -
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下巻は、モンゴル帝国~現代までが対象である。
文化という人類共通の遺産のおかげで、「宿主」たる人間が食べられるパイ自体も大きくなったし、寄生体に対しても強気の姿勢を示せるようになった。
そもそも宿主-寄生体モデルは、両者に対して働くポピュレーション抑制機能である。だとすれば、文明の名のもとに既存の寄生体を弱体化させた人間のポピュレーションが増加するのは必然である。
だが、生態系が使える資源は限られている。それに、宿主-寄生体モデル自体がなくなったわけではない。では「宿主」たる人間はどうするか。マクロ寄生体のしっぺ返し、すなわち戦争による口減らしをするかもしれない。あるいは、ミクロ寄生体に -
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ネタバレ下巻はモンゴル進出以降の疫病の歴史。黒死病と言われたヨーロッパのペスト禍。この間を含めローマ帝国最盛期からルネッサンス期まで、ヨーロッパの人口は殆ど増加しなかった。そして、新大陸到達におけるインディオの低免疫によるユーラシア・アフリカの疫病禍。絶望的ともいえる人口の減少は数百年かけて奥地の小部族をも全滅させた。
終盤は天然痘。いわゆる種痘免疫法は、古来よりアジアの庶民風俗として定着していたらしい。その技術が英国をはじめとする欧州の王室を救った。また戦死は、従来ほとんど疫病の感染が原因であった。しかし日露戦争における日本兵の集団混合接種により人類史上初めて相手方の攻撃が主因になった。
人類 -
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ネタバレ人類に寄生、感染発病する疾病、捕食者を地域と時系列で追った社会学的著書。現生人類の誕生前の樹上生活時から、世界各地に文明が栄える12世紀までを上巻で取り上げている。
著者は寄生を広義にとらえ、ライオン・オオカミなどによる捕食、ヒトによる寄生(略奪・支配)をマクロ寄生とし、微生物についてはミクロ寄生と定義した。さらに気候、統治、農耕による影響を加えて検討している。一例で言えば、ヒトの移動や都市の形成にともない新たな寄生を受けた当初は劇症を発するが、寄生主も生き延びるために変態し、慢性化をして定着していくといった具合である。
読者が印象的であったのは、戦争の必要性(人口、食糧)、風土的疾