北村紗衣のレビュー一覧
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ネタバレ非常に読みやすい作りになっていて、初心者にも批評のおもしろさと難しさがよくわかる内容になっていた。
批評としての作品への接し方を知り、鑑賞時の楽しみ方が増えた。実際に批評できるかは別として、作品を深く理解するために使えるテクニックがいくつもあったように思う。
優れた批評をするには膨大な知識が必要なことがわかってくる。そしてそれをひけらかすわけではなく、不必要ならば書かないことの大切さ。なかなか難しいことでもあるけれど、著者の批評はテーマが絞られていてスッキリと読みやすく理解しやすいことからも、その引き算がいかに重要なのかがわかる。
けっこう大事なポイントとして、著者の文章には公平性があり、ご自 -
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批評とはどのような行為かを知り、作品を分析的に見る方法を身につけ、実際に批評を書いて発表できるようやさしくガイドする入門書。
プロレベルの批評を書くには精読と参考資料集めが一番大変なはずだが、これはゼミなどで実践しないと身につかない。本書はそういうところをサラッと「大変ですよ」で流しているので(反復されるモチーフの書きだしなどヒントはだしているが)、本当の意味で実践的ではないのかもしれないが、とにかく「批評はこわくないよ」「作品を褒めようが貶そうが、あなたが楽しんでいればそれでいいんだよ」をくり返し伝えてくれる。どんなジャンルでも何かしら創作物を見聞きして感想を発信したり読んだりする人(つ -
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2006年に初版、2008年にペーパーバック版が販売された、Henry Jenkins『Convergence Culture:Where Old and New Media Collide』の邦訳書。邦訳が出版された2021年の時点から見ると、15年以上前に存在していたメディアの風景は「過ぎ去ったもの」のような印象を持つものもあるし、メディアテクノロジーが可能にする市民参加についてやや楽観的なのではないか、と思える部分もある。
しかしそれでも本書は、2023年の現在でも、読む価値がある。いや、時を隔てた今だからこそ、ここに記述されたファンたちの活動とメディア産業、そして宗教右派を含めた様々 -
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よくここまで書き方を知ろうとせず書評を書いてきてしまったなと、厚かましいとも苦々しいとも思ってしまう。本書は2022年新書大賞で11位。
スカッと腑に落ちる経験をさせてくれる批評が好きで、自分でもそういう経験を人に提供できれば楽しいだろうと思っていたところ本書に出会い、本や映画の批評の方法を大いに学べた。私が書評を書く主な目的は、一つに書評の上達で、もう一つに知識の蓄積だ。著者の北村紗衣氏は、専門はシェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評で映画や小説の批評の指導もされている。
本書は、四つの章、①精読する、②分析する、③書く、④コミュニティをつくる(実践する)、から構成されている。批 -
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著者とわたしの好きな映画とかはあまり重ならないと思うのだけれど、それでも、さまざまな映画について、フェミニズムやジェンダーの観点からの批評が丁寧にわかりやすく書かれていておもしろかった。
流行ってるのにわたしが興味もてなくてスルーしている映画でも、え、こんな内容なのか、こんな観点で見られるのか、やっぱり見てみなくては!?と思わされたり。(たとえば「マッドマックス怒りのデスロード」「ワンダーウーマン1984」「ハーレクインの華麗なる覚醒」「アナと雪の女王2」とか)。
あと、長々しいタイトルもおもしろい「レオナルド・ディカプリオとガス・ヴァン・サントのせいでグザヴィエ・ドランと私の人生はメチャク -
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ネタバレこの本を読んだのは、自分がずっとハマって読んでいた漫画の終わり方に納得がいかず、けれど周囲の人たちは大絶賛していて、自分が疑問に思った点を言うことを憚られたからだった。
好きなところは好き、でもこういうところはおかしいと思ったし好きではない、とどうやったらうまく言葉にできるのか。むしろしてもいいのかどうなのか。そういう疑問への答えが欲しくて読んでいたら、なんだかとってもすっきりした。一番嬉しかったのは「芸術作品というのは現実の世界と異なり、あらかじめ受け手によって探索され、理解されるためのものとして作られているからです」というフレーズ。美術にしろ文学にしろ、世の中に出たものが世の中の人によって