ジョゼ・サラマーゴのレビュー一覧

  • 白の闇

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    この手の本や映画はその病に立ち向かう医者や科学者や政治家が主人公というのがほとんど。患者目線の内容は今までなかったのでとても新鮮だった。


    このコロナ禍に読むとリアルさが増して人間の恐ろしさを感じた。

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    2022年04月24日
  • 白の闇

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    1995年に発表されたこの作品、わりと最近復刊して話題になっていたらしい。映画「ブラインドネス」の原作。
    「ある日突然白い霧がかかったように失明してしまう奇病」が伝染病として人々に蔓延していく物語。このコロナ禍だからこそ話題になり、だいぶ前の本だけど今の状況の本質を突いている。

    登場人物には名前がない。「最初に失明した男」「医者の妻」「サングラスの娘」などという風で、会話にかぎ括弧がついていないので最初は読みにくさを感じるけれど、物語が進むにつれてその独特なつくりが臨場感となって迫ってくるものがある。
    ほとんど全ての人が失明してしまった世界ではどんなことが起こるのか。人から見えていない、とい

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    2022年04月10日
  • 白の闇

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    ある男が突然失明した。暗闇に包まれたのではなく、視界が全て白くなる「白の闇」に覆われた。その症状は、感染症のごとく広まっていき、最初は数人を隔離しておくだけで済んだのが、徐々に多くの人が罹患することになる・・ただ一人を除いて。そんな中、人々は何を考えてどういう行動をするのか?政府はどういう対応を取るのか?といった一種のシミュレーションを描いた物語。

    これ完全にウォーキングデッドでした。というか、ウォーキングデッドより酷いかも知れません。いわゆる、ポストアポカリプスモノというのか、自分がこの世界に放り込まれたら、速攻で死ねる自信あります。衛生が失われる描写や、モラルが失われる描写、少ない食料を

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    2022年02月25日
  • 白の闇

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    コロナ禍ということもあり、感染病が蔓延する社会に於ける集団心理を主題化した作品(『ペスト』、『白い病』など)を幾つか読んだが、『白の闇』は特に描写が凄惨かつ圧倒的だった。ノーベル文学賞作家の文章力が光る作品。

    「なにが正しくて、なにが誤りかを見きわめるのは、ただわたしたちが対人関係を理解する手段なの。自分自身とのかかわり合いではなく。」

    「わたしたちの内側には名前のないなにかがあって、そのなにかがわたしたちなのよ。」

    「絵や彫刻は目が見えないよ。それは違うわ。絵や彫刻はそれを見る人の眼で見ているの。ただ、いまはだれもが見えないだけ。」

    上記の引用から推察されるように、唐突に失明した人々

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    2021年10月27日
  • 修道院覚書 バルタザールとブリムンダ

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    18世紀ポルトガルを舞台にした小説。スペイン継承戦争帰りの元兵士バルタザールと透視能力を持つブリムンダの夫婦が主人公だが、実在のバルトロメウ神父がパサロールという飛行船を発明し、夫婦はその製作を手伝う。パサロールの完成とその後の顛末が描かれるとともに、バルタザールの故郷マフラでは当時の王ジョアン5世の肝いりで修道院の建設が始まり、バルタザールはその建設に従事する。
     夫婦の愛の物語、と紹介されているが、モノを作るということに対しての人間の執着がテーマではないかと思う。モノを作ること自体、完成した後の活用、製作の作業そのものなど、登場人物それぞれによってこだわりが異なり、それが良きにしろ悪しきに

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    2025年10月04日
  • 白の闇

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    唐突に目が見えなくなって、唐突にそれが終わるのは何故か。
    医者の妻だけ見え続けたのは何故か。
    教会の目隠しは何かの暗示なのか。
    ……ひとつも答えが無くて、全ては読者の解釈次第というところがもどかしい。

    この時、私はどっち側の人間なのか。
    私ならどうするのか。
    眼医者がサングラスの娘を求めた時の妻の感情を、どうすれば理解できるのか。
    この後世界は元に戻れるものなのか。
    などなど、考えることが多い作品だった。

    この秩序ある清潔な世界は脆いのだ。

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    2025年09月29日
  • 修道院覚書 バルタザールとブリムンダ

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    『ただ命じるだけ命じて、完成は見届けない王になることへの恐怖。』
    『いっさいは空、空とは欲すること、所有することは空である。』

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    2025年09月13日
  • 白の闇

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    改行も少なく文字びっしり、セリフに「」なし、
    登場人物に名前なし、という出逢ったことのない本だった。
    にもかかわらず、誰のセリフかちゃんと分かり、表情や仕草も想像でき、
    まるで映画を見ているように流れるように読めたから不思議。

    自分や仲間が生きるために他者を殺すか
    他者を殺さないために自ら死を選ぶか。
    何もかも変わってしまった世界で、
    自分自身の内側を見て、
    何が正解で自分は何をすべきか決めなければならない。

    キリスト教の世界観も感じることができる本だった。

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    2024年11月06日
  • 白の闇

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    ここまで重い本を読んだのは初めてかもしれない。タイタニックの映画の後半みたいな感じが
    丸ごと1冊分、という感じ。
    「見えない」世界で1人だけ「見える」というのは
    実際には誰かと一緒にいても孤独だろうなと思う。何かを分かち合うことって共感できるだけじゃなくて、安心感も得られるんだと気づいた。
    本書の設定はまああり得ない(と信じたい)けど、パンデミックに陥ることは今後もあるだろうし、ここで描かれた残虐で醜い場面は起こりうるんじゃないかと思うと恐ろしい。。
    2008年に映画化されているらしいけど、観る勇気は全くありません。
    本書は登場人物に名前がなく、会話に「」がないので非常に読みづらい。目が見えな

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    2024年09月15日
  • 白の闇

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    ポルトガルの作家、ジョゼ・サラマーゴが1995年に発表した小説。

    人々を突然、謎の奇病が襲う。目が見えなくなる、正確には、視界が真っ白になる病気である。特段の予兆もなく、ある日、ある男の目が見えなくなる。検査しても異状は見つからず、原因もわからない。これはどうやら伝染性であるようで、男に関わった人々、そして彼らに関わった人々、と野火のように発症が広がっていく。最初の男を車で家まで送ってやった男。最初の男の妻。男を診察した眼科医師。眼科に来ていた娘。その娘が利用したホテルの客室係。・・・
    突然の流行に慌てた当局は、患者を隔離することにする。患者にとどまらず、患者と接触したものも連行され、古い精

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    2023年03月13日
  • 白の闇

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    ネタバレ

    あまりにグロテスクでなかなか読み進まなかったが、それが人間の負の部分を表していたのだと読後に納得。それでもやはり自分にはグロテスク過ぎた。見えることが全てではない、見えないから見えるものもある。

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    2022年09月23日
  • 白の闇

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    非現実的な恐ろしい状況設定ではありますが、読みながら自分だったらこの状況でどう行動するか、どういう心理状況になるのか、といった想像力を掻き立てられて、他のフィクションの作品を読んだ時の登場人物に感情移入したりするのとはまた少し違った没入感のある作品でした。

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    2022年09月19日