柿埜真吾のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
共産主義はただただ地獄
脱成長と環境保護に共産主義が加わった議論を元にした本がベストセラーになっているが、本書はその議論のナンセンスさを歴史とデータに基づいて分かりやすく説明する。
そもそも、共産主義の計画経済は自由な資本主義より効率が良い→高成長だという主張が出発点だったが、それは大嘘で、いつのまにやら脱成長に鞍替えしてるのが馬鹿らしい。しかも、共産主義は経済成長はしないくせに、ものすごく非効率な生産活動をするので、とんでもなく環境破壊もしていたのだ。
良い所なしの共産主義なのだが、共産主義や社会主義への憧れを持つ人は、どうしても一定程度出てきてしまう。だから、自由な資本主義を実践できる国は、経済成長して技術革 -
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脱成長コミュニズムは誤りだ、という論調をもとに書かれた本。とくに斎藤幸平氏の人新世の資本論に対するアンチテーゼとして書かれている。
私自身、斎藤幸平氏の書籍を読んで、脱成長コミュニズムに魅力を感じていたが、本書を読むことで脱成長コミュニズムのデメリットも感じるようになった。
公平を期すと、双方の議論が噛み合っているのか、重箱の隅を突くような議論になってしまっているかは、私には判断つかなかった。
とはいえ、脱成長コミュニズムの危険性は大いに感じることができた。
今の私の考えとしては、新自由主義はダメだが、共産主義はもっと危険という理解である。 -
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今日経済的に豊かで、個人が文化的で健康的な日々をおくることができるのは自由経済資本主義による恩恵が非常に大きい。
一方で、社会主義(共産主義)的体制がそういった豊かな社会を形成することは不可能だということは、歴史を見ても現代の独裁国家を見ても明らかである。
なにも斎藤氏は社会主義を標榜している訳でもないと思うが、「脱成長コミュニズム」がユートピアであり、仮に移行できたとしても結局は「気候毛沢東主義」と斎藤氏が非難しているような、全体主義体制へと突き進んでしまうというのは一定理解できた。
そうだとして、現代資本主義が抱える問題に対して「資本主義ほどうまくいっているシステムは歴史上存在しないか -
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資本主義の観点から昨今人気の脱成長コミュニズムに対する批判の書。資本主義はプラスサムゲームであるのに対して、コミュニズムはゼロサムゲームであるということが全てのカギだろう。脱成長が目指す社会はパイの大きさが一定、もしくは減少していく社会であり、必然的にゼロサムゲームになる。その社会は限られたパイをどのように分配するのかという点にフォーカスが当たるため、必然的に排除の論理が働く。外国人やマイノリティーだけでなく、脱成長コミュニズムに反対する論者にはパイは分け与えられず、過去の共産国家の例に倣えば、国外追放や粛清につながるリスクすらある。また、途上国との関係においても脱成長である以上、途上国との間
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明快かつ説得力のある共産主義・社会主義批判。共産主義・社会主義批判を中心とした第6章までの内容にまったく異議はないが、第7章で槍玉に上げられている斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』を読んでいないので、その批判が的を射たものかどうかは判断しようがない。ただ、引用箇所の内容から察するに批判対象本は相当酷い代物のようである。しかし、何でそれがベストセラーになり、もてはやされているのでしょうね?
それはともかくマルクスの唯物史観的に言えば、共産主義(社会主義)は資本主義の発展の先の段階に措定されているためか、よく誤解されるのだが、実は資本主義によって解体させられた共同体の再生を指向する復古的反動思想 -
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恒常所得仮説=消費は、現在の所得ではなく将来得られる所得に依存する。
教育バウチャーは、スウェーデンやオランダなどで導入されている。公立学校よりいい制度
負の所得税(=給付付き税額控除)。生活保護よりも差別感がない。
流動性の罠、はあり得るのか。
大恐慌時は、金融引き締めだったにもかかわらず名目利子率は低下した。金融緩和と金利低下は同じではない。名目利子率よりも実質利子率のほうが重要。
貨幣供給が増えれば、財サービス市場だけでなく資産にもお金が回る。その結果、金融資産の収益率の変化だけでなく、その他の資産へ支出を増価させる。
フィリップス曲線は幻想。スタグフレーションのときは、賃金・物価統 -
Posted by ブクログ
社会主義、共産主義はゼロサム的社会であり、資本主義はプラスサム的社会であるという点に賛同できた。
確かに現代は成長という名目のもと環境問題や格差問題の歯止めが効きにくくなっていると思うが、社会主義・共産主義ではなおさら難しいと考えさせられた。
結局のところ誰が権力を握るかの争いが両社会では変わるだけであって、まだ資本主義のほうが自浄作用があるだけマシかと思う。
両社会では当然デメリットはあるが、われわれ人間が資本主義から得た恩恵から現在の課題を差し引いた『ポスト資本主義』への移行を模索するほうが現実的であり、より多くの人へのメリットがあるのではないかと考えさせられた1冊でした。