本田創造のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アメリカ黒人の歴史
著:本田 創造
出版社:岩波書店
岩波新書 新赤版165 新赤版 165
北米における黒人の差別との闘いを描いた書です。
最初は、奴隷解放運動、次は、公民権闘争、そして、差別からの解放運動という流れです。
まずは、人間としての尊厳としての回復、そして、権利の獲得というか、民主主義に基づいた権利平等の獲得、そして、差別の撤廃という流れになる。
ピルグリムファーザーズがメイフラワー号で到着する 1620年に先立つこと1年前に、北米ではじめて奴隷売買が行われた。その奴隷船の名前は、希望号という。なんて気がきいているんだろう。
当初、農業は、奴隷に近い白人の労働者が対応していたが、やがて、文句をいわない、安価な黒人奴隷にとってかわられていく。
南米と同様に北米にやってきた白人たちは、土地や資源を収奪して、現地人をつかって濡れ手の粟の商売をしたかったのだが、インディアンは、農業をやったことはなく、奴隷ととらえても、逃げたり、同胞からの攻撃でままならなかった。だから、やむなく、北米に定着して、自ら農業をやるようになった。そこで、労働力が必要になったので黒人を奴隷として使用したというわけだ。
奴隷の子は、奴隷で黒人は増えて行ったが、一部の解放された奴隷を除いて、奴隷の数が増えて行った。
黒人の奴隷解放、公民権闘争については、戦争の度に進捗をみせていく。
独立戦争 1775年~1783年 黒人は、ピルグリムファーザーズに協力して独立に大きく貢献するが、見返りはなかった
南北戦争 1861年~1865年 奴隷解放を掲げた北軍に協力した黒人たちは大いに貢献し、奴隷制度の廃止を手に入れる。その後に揺り戻しがあり、奴隷解放後も、権利については、北部の資産家と、南部のプランターに支払いされている。黒人は、農村から都市にでてきて、ニューヨークなどで、ハーレム・ルネサンスを巻き起こす
第二次世界大戦 1941年~1945年 真珠湾攻撃で、連合国として、参戦した米国は、戦争を継続するために、黒人の軍隊での待遇を改善して戦争を遂行した
朝鮮戦争 1950年~1953年 黒人は、白人と同条件ではじめて軍隊に参加できた。ここに、黒人の公民権の一部が確立された
戦後、それでも、黒人、白人の同席について、バスや大学食堂にてトラブルがあったり、黒人の若者が冤罪で処刑されたりなどの事件の中から、無抵抗を前提とする公民権運動が興隆する。
1964年はその頂点の年であり、1964公民権法の設定、憲法修正第24条、キング牧師のノーベル平和賞の受賞などがあった。
この流れの中で、南北戦争後に暗殺された、リンカーン、そして、公民権法の改訂を前に暗殺された、ケネディ、2人の大統領があった。CIAとの確執などもあると聞くが、この二人が死ななければならなかったのは、根強い人種差別が背後にあったからではなかろうか。
考えさせられる一冊でした。
目次
はしがき
プロローグ──アメリカ黒人とは
ガス室に消えた黒人青年の訴え/
ワシントン大行進二五周年記念集会/
アメリカ黒人とは
1 植民地時代の奴隷制度
ジェームズタウン/
最初の黒人奴隷/
奴隷貿易/
「中間航路」の悲劇/
原住インディアンと白人年期奉公人/
黒人奴隷制度の成立
2 独立革命
クリスパス・アタックス/
独立宣言と合衆国憲法/
反奴隷制感情の高まりと黒人兵士の活躍/
奴隷制度廃止への動き
3 南部の綿花王国
プランテーション奴隷制度/
綿花は王者/
二つの南部/
夜明けから日没まで
4 奴隷制廃止運動
アボリショニズム/
自由黒人と植民運動/
フレデリック・ダグラス/
地下鉄道と奴隷暴動/
奴隷制廃止運動の歴史的意義
5 南北戦争
ドレッド・スコット判決/
分かれた家は立っていることができない/
南部諸州の分離から内戦勃発へ/
奴隷解放宣言/
戦争と黒人
6 南部の再建と黒人差別制度
リコンストラクション/
転換と挫折/
黒人差別法の成立
7 近代黒人解放運動
ジム・クロウ/
タスキーギ運動とナイヤガラ運動/
全国黒人向上協会と全国都市同盟/
ガーヴェイ運動
8 公民権闘争の開幕
大統領命令八八〇二号と州の公正雇用実施法/
スミス対オールライト判決からブラウン対教育委員会判決へ/
バス・ボイコット運動/
人種共学をめぐる進歩と反動
9 黒人革命
ランチ・カウンターへの坐り込み運動/
自由のための乗車運動/
ワシントン大行進/
一九六四年公民権法/
南部白人の反動攻勢と「長く暑い夏」の到来
10 アメリカ黒人の現在
政治参加の進展/
教育の統合化と生活環境/
経済状態
アメリカ黒人史略年表
ISBN:9784004301653
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:860円(本体)
1991年03月20日第1刷発行
2018年05月15日第36刷発行 -
Posted by ブクログ
アメリカ黒人の歴史を丁寧に描いていて、世界史の下地がない私でも非常に面白く興味深く読むことができた。
出来事の点と点を繋いで歴史の大きな流れを把握することが出来たところがよかった。
印象に残ったところ
・歴史は常に勝者・強者によって紡がれるものだという指摘に、確かに黒人の偉人はあまり歴史の教科書に登場しないなとハッとした。
・南北戦争で奴隷解放した後でも、資本主義の安い労働力として黒人が低い地位であった方が資本家にとって得であり、差別はなくならなかったという話になるほどなと思った。
・黒人が人権や参政権を得るまでの道のりの険しさを知り、今の自分があたりまえに政治に参加できることのありがたみを感じた。 -
Posted by ブクログ
プロローグで1991年当時のアメリカ黒人の現状・定義を述べたあと、植民地時代の奴隷制度からこの本の発刊される1991年までのアメリカ黒人の苦難の歴史をたどる。
簡単にまとめるなら、数々の運動を通して政治・社会的な平等を手に入れたものの黒人一般の経済状態は悪化しており、そういった意味ではアメリカの黒人問題は解決しておらず、これから実証的・理論的な解明が望まれるがむしろ発展したアメリカ資本主義の構造的な問題だとみるべきだそうだ。
著者が締めくくりに引用したキング牧師の最後の著作『黒人の進む道』から。
「《ブラック・パワー》というスローガンよりも、《貧しい人々のためのパワー》というスローガンのほうが、いっそうはるかに適当であろう。……要するに、黒人の問題は、アメリカ社会全体が、より大きな経済的正義に向かって新しい方向転換をしなければ、解決することはできないのだということである。」
全体的にわかりやすく時代ごとにまとまっていてよい。ただし二十年近く昔の本。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
合衆国総人口の約十二パーセント、三千万人以上を占める黒人たち。
人間としての、市民としての平等を求める彼らの闘いは、どのようなものであったのか。
合衆国独立前から南北戦争を経て公民権運動へ、さらに真の解放を目指す現在までの長い苦闘の歩みを歴史的発展とともにたどる。
旧版以後二十七年の変化を見据え、大幅に書き改めた。
[ 目次 ]
プロローグ アメリカ黒人とは
1 植民地時代の奴隷制度
2 独立革命
3 南部の綿花王国
4 奴隷制廃止運動
5 南北戦争
6 南部の再建と黒人差別制度
7 近代黒人解放運動
8 公民権闘争の開幕
9 黒人革命
10 アメリカ黒人の現在
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ローマ時代の奴隷制度は理解できる。戦争に負けた国から賠償金として扱われ、資産として数えられたことは奴隷が働きに応じて自身を買い戻すことができたことからわかる。勝者の分が大きいが、計算が合うシステムだ。産業革命時代の奴隷制度もまぁ理解できる。およそ人としての扱いを受けなかったとしても、アフリカに持ち込んだ繊維製品、ラム酒の代金としてプランテーションの労働力のために集められた。人道的ではなかったが、経済的合理性があった。だが、公民権運動時代の黒人の扱われ方は全くもって理解できない。白人学校に入学した黒人少女の登校を阻止するために武器を持って学校に押しかけ暴動を起こし、広報活動のためバスで全国を回っている黒人団体の到着を待ち構えて集団で取り囲んで暴行を加える。白人相手だったとしても、黒人を擁護するなら襲いかかる。嫌いな団体への一方的な攻撃は今もネット上でよく見かけるが、実際に行動するのは圧倒的にコストが高い。そこに如何なる合理性があったのか。感情としての合理性しかなかったならば、多数の攻撃者を生むまでに追いやった社会情勢とは何だったのか。本書で提示されるのは事実の列挙のみであり、その背景はほとんど見えてこない。
想像だけで語るならば、恐らくその根底にあるのは社会正義だろう。たとえ他者から『百害あって一利なし』と見えたとしても、一利もない行動はどんな個人にも実行することはできない。当時の攻撃者には、黒人を排斥することでしか達成できないように思えた理想の世界があったのだろう。
いつの時代でも、人種、宗教、性的指向などそれぞれの社会システムにおける少数派が、逸脱者として攻撃の対象となってきたのは世界の問題だが、恐らくそれ以外でも、気付かないところで『正義』のために敵を創りだし、消費されている無駄なコストは数多くあることだろう。植え付けられた『正義』の概念を矯正することは出来ないのか、『攻撃』以外の手段で解消させることができないのか。本屋の端くれとしては、『知ること』がその一歩となることを信じて、多くの人に色んな本を読んでほしい。