柳父章のレビュー一覧

  • 日本語をどう書くか

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    本当に凄い本だ。
    我々は日常的に日本語を話したり書いたりしている。
    その日本語は一体いつから今のような形になったのか。
    その答えが明確に記されている。

    当たり前のように使っている句読点や段落が、実は比較的最近になって使われ出したことを知る。
    そして当たり前過ぎて「考えもしなかったこと」を知った。

    巷では常識を疑えなどと言われることがあるが、当たり前を当たり前に思わない難しさを改めて思い知らされた。

    「日本語をどう書くか」
    このタイトルを見て期待した内容でなかったが、予想を遥かに超える知性に触れられて、日本語とは何かという視点が得られたと思う。

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    2023年07月13日
  • 翻訳語成立事情

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    昔の新書はこうだったよね、ということを思い出させてくれる良書。近年の内容ペラッペラの新書とは質が違う。
    明治期に創作された新造語の作成秘話的な内容かと思っていたが、本旨はもっと深い所にある。日本とは全く異なる価値観を持つ外来の思想を、古来の日本語にある言葉で置き換える事の難しさに焦点を当てている。言われればそうだなと思うが、ヤマトコトバの語彙は非常に限られていたから、日本人は奈良時代から脈々と外国の言葉=思想を自分のものにするために奮闘してきた民族である。その中には『自由』や『権利』などのように、原語とは異なる意味で広まったものもあったが、人口への膾炙に従い本来の意味を取り戻すというプロセスを

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    2022年09月18日
  • 翻訳語成立事情

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    開化から約150年経って、今、日本には「社会」「自由」「権利」「美」は「存在」するようになったのだろうか?「彼」の国からやってきた、未だ手の届かない理想のタブローにはなっていないだろうか?(あるいは、ないものねだりに飽きて居直っている?)

    鷲田清一先生『〈ひと〉の現象学』からの芋づる読書。哲学用語をしつこく原語で表記するのは何故なんだろうという疑問が氷塊した。要は、そもそもの最初からズレて使ってしまっているからなんだな、と。フランスやドイツ、イギリスから輸入した哲学用語を日本語に翻訳する必要に迫られた時、それまで日本で使われていた言葉には置き換えられない言葉がたくさんあった。言葉がない、とい

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    2021年02月21日
  • 翻訳語成立事情

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    凄く面白かった。これまで、こういった「言葉」について書かれた本をあまり読んでなかったというのもあるけど、「言葉」というものを扱う視点というものが様々あり、手前勝手に濫用してよいものではないのだなと色々勉強になった。本作で扱われる言葉は10例程だけど、そこに様々な切り口からその訳語の成立の経緯を紐解いていく様に知的好奇心を刺激される。

    昔の日本には「恋愛」という言葉は無かった。それは「恋愛」という概念が無かったというよりも「Love」という言葉の示す範囲の、高尚な「色恋」を指すものが無かったという。そこで、「恋愛」という、その時点では全く意味を持たない熟語が生まれ、その中身が「Love」という

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    2014年05月03日
  • 翻訳語成立事情

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    翻訳語にまつわる違和感を正面切って解説してくれている良著。田山花袋を例に挙げた日本の小説での奇妙な「彼」の使い方とか、翻訳語は翻訳語らしくしていたほうが都合が良いとか、興味深い話題ばかりだった。

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    2012年01月24日
  • 翻訳語成立事情

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    明治期に翻訳の必要性に迫られて生まれ、今日ではごく普通の語として使われる「社会」「個人」「近代」「存在」「権利」等の翻訳語の発生と、それらに共通する特性について。
    伝来する意味を持たない翻訳語に特有の「よく分からないが有り難みがある」という印象が持つ効果を柳父氏は『カセット効果』と名付けて一連の説明に用い、異文化受容について独自の論を述べる。

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    2011年08月02日
  • 翻訳語成立事情

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    大学3年のゼミのテーマ本の一つ。普段何気なく使っている言葉には実は海外の言葉の翻訳語もたくさんあるということがわかります。
    われわれにとって言葉は概念として重要なものなので、実は多くの概念は海外のものであるという事実に気づかされます。

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    2009年10月04日
  • 翻訳語成立事情

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    1982年初版の岩波新書(黄版)。本の外装は古くなっても、内容的にはまったく古びちゃいない、必読の書。重要ポイントは柳父氏が随所で指摘している「カセット(宝石箱)効果」(柳父氏命名)。外来語を「日本語」(漢語もしくは造語)に置き換えると、翻訳者の意図を離れて、訳語が一人歩きを始める。訳された「日本語」がよくわからない言葉だからこそ、ありがたい言葉として、また流行り言葉として、よくわからないまま多用(乱用)されたり、多義化したりしてしまう。翻訳者の翻訳・造語が適切かどうかももちろん重要だが、言葉が生き物である以上、その後の変遷も押さえておかなければ字義だけでは理解できないということがよくわかる。

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    2009年10月04日
  • 翻訳語成立事情

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    すごく昔から「好き」と言われるのは
    嬉しいのに「愛してる」と言われることに
    ものすごく嫌悪感を感じていた私ですが、
    この本を読んだときにスッキリしました。

    freedom=「自由」love=「愛」など、
    身近な単語がどうやってこの言葉に
    なったのかが解る1冊。

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    2009年10月04日
  • 翻訳語成立事情

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    社会、個人、権利、自由、自然・・。近代日本が、どのように西欧文明を受容していったか、翻訳語という概念からせまる。
    歴史、言語、日本など、多様な観点から読める一冊。

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    2009年10月04日
  • 翻訳語成立事情

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    文体のリズム、特に読点の使い方が、好みである。真似してみたい、と私は思う。

    ーーー

    この本に書かれているわけではないが、明治期の翻訳語(和製漢語)のことを考えるとき、私が最も想いを巡らし、その結果、自分の実存に関して不安をおぼえるのは、

    「私は、何をどうやって考えているのか?」
    「どのような言葉を用いて思考しているのか?」

    という点だ。

    私のすべての思索に用いる、基礎的な語彙が、明治の特定の個人によって、新規に作られたり、意味が変わったりしているものだということを知るとき、「いったい、私とは何なのだ?」と思わずにはいられないのだ。

    個人・社会・自由・恋愛…このような「暮らし」そのも

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    2025年11月18日
  • 翻訳語成立事情

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    幕末・明治の時代、西洋の書物を日本語に翻訳する過程で作られた新しい語「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」、また元々ある日本語に翻訳によって新しい意味が付与される形となった「自然」「権利」「自由」「彼」について、これら「翻訳語」がどのように成立したか、どう使われどのような意味を持っているかについて考える。
    言葉が作られるという視点だと「社会」「個人」「近代」を扱う第1〜3章、翻訳という視点だと「彼、彼女」を扱う第10章が特に面白かった。

    一つ、本文のなかで「伝来」と「船来」という言葉が用いられることがあるのだけど、ここで少し引っ掛かった。
    「伝来」を国語辞書で引くと「①先祖代々伝わっ

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    2025年05月24日
  • 翻訳語成立事情

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    社会・個人・近代・美・恋愛・存在・自然・権利・自由・彼といった学問・思想の基本用語は、実は幕末から明治にかけて翻訳のためにつくられた新造語である。これら10個の翻訳語が、どのような背景で作られ、どのように受け入れられていったのか、当時の文献内での用例を引きながら検証している。
    知識人の一部によって翻訳語が考案されるのであるが、元の言語での意味が正確に分からなくても、その翻訳語は広まっていったようである。とりあえず難しそうな漢字が当てられていれば、何か深遠な意味が含まれているんだろうという雰囲気とともに乱用された。
    よく分からない漢字に深遠が意味が含まれていそうに感じることを、著者は「カセット効

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    2021年12月04日
  • 翻訳語成立事情

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    日本の学問・思想の基本用語が幕末・維新期にどのような試行錯誤の末に定着したのかを10の事例から紹介したもの。前半の6つが、社会、個人といった翻訳のために造られた新造語。後半の4つが自然、自由などそれまでの日本語にも日常語としてあった言葉に、さらに翻訳語としての意味が加わったもの。個人的には後半の方が面白かった。旧来の日常的な意味に新たな意味が加わったことによる混乱や、それが今にも引き継がれていることが分かる。

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    2021年10月02日
  • 翻訳語成立事情

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    社会・個人・美といった新しい概念が、それぞれ翻訳されるまでの経緯が具体的で読ませる。特にLoveが「恋愛」と翻訳された理由はLoveが精神的で高尚なもので、日本語の「恋」が通俗的・不潔なものというのにはびっくり仰天させられた。また万葉集の「恋」はすべて肉体関係のあとのことというのにも驚いた。またBeautiful「美」の概念も翻訳語のあとに成立したというのも刺激的だった。例として芭蕉の紀行文などの文章にも「美」という言葉がないということなど、これらについては、もう少し調べてみる必要を感じた。

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    2015年10月24日
  • 翻訳語成立事情

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    ハイデガー入門を読んだ後のせいか、
    本書で取り上げられていた、
    「存在」という言葉の成立ちについて色々考えてしまう。
    そもそも「存在と時間」という題も正確なのだろうかと。

    翻訳語の特殊性や、
    成立ちを知ることは意外と面白く、知らないだけで
    こんな言葉がほかにたくさんあるのだろうなぁ。

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    2015年07月31日
  • 翻訳語成立事情

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    明治以降、西洋思想を翻訳するにあたりいかなる言語操作が行われてきたかを、いくつかの単語に照準を合わせて解明する。漢籍に全く用例がない造語や、漢籍とは違う意味で翻訳語として用いたりと、西洋言語を怒涛の勢いで輸入してきた日本語体系が明治以降いかに変遷し、また西洋思想も日本語特有のニュアンスによってもとの意味が弱められて理解されていった事情がわかりやすくまとめられている。

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    2013年08月22日
  • 翻訳語成立事情

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    翻訳語が生まれてくる背景について論じたもの。
    全10章に分かれており、社会・個人・近代・美・恋愛・存在・自然・権利・
    自由・彼、彼女という翻訳語について成立背景を述べる。
    翻訳に際しては、西洋の理屈が高尚だという考えがあったようだ。
    全編通じて著者のいう「カセット効果」が述べられている。
    以下、備忘録として引用。
    1.Societyについて
    「社会」という訳語が造られ定着した。しかし、このことは「社会」―Societyに対するような現実が日本にも存在するようになった、ということではない。
    著者がいう翻訳語の特徴→先進文明を背景に持つ上等舶来のことばであり、同じような意味の日常語と対比して、より

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    2012年11月17日
  • 翻訳語成立事情

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    [ 内容 ]
    かつて、この国に「恋愛」はなかった。
    「色」や「恋」と区別される“高尚なる感情”を指してLoveの翻訳語がつくられたのは、ほんの一世紀前にすぎない。
    社会、個人、自然、権利、自由、彼・彼女などの基本語が、幕末―明治期の人びとのどのような知的格闘の中から生まれ、日本人のものの見方をどう導いてきたかを明らかにする。

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    2011年05月17日
  • 翻訳語成立事情

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     学生時代に読んだ本だが、手元から失せてしまい、引用したいと思ったときに手元になかった。たまたま思い出し、書棚にあったので購入。明治の日本が西洋文明をうまく取り入れることができた理由に「翻訳」の役割が見逃せないと加藤周一は言っていた。明治日本が西洋から翻訳した諸概念を考える好著。後に丸山眞男、加藤周一もかいているが。

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    2009年10月04日