前山悠のレビュー一覧

  • モンテ=クリスト伯2

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    第二巻は脱獄成功後のダンテスの話。

    モンテクリスト島の財宝探しは至って順調。密輸船から降りて、一人での島内捜索時間を確保できたあと、多少の行きつ戻りつはあったが、見事に発見。財宝の回収の仕方も至ってスマート。金貨、金塊、宝石、と中型金庫3箱程度のあまり嵩張らない形態だったのが幸いだったか。

    ダンテスが財産を得て真っ先にやったことが、何故自分が投獄されたのかの理由の確認だったのは当然だとして、その次にやったことが、モデルとなった「ダイヤモンドと復讐」(実話)とは異なり、自分を嵌めた者への復讐ではなく、自分に同情的だったカドルッスへの施しであり、恩義のあるモレル氏の救援であった点は、ほっとするところだ。

    そして、他に思い残すことがなくなったあとは、(念願の?)復讐に専念すべく、計画的な復讐劇が幕を開ける。第二巻では、まだ、標的(まずは密告状を書いたフェルナン)の近親者にじわじわと距離を詰めていくところまで。これがいわゆる「ローマ編」。

    巻末の読書ガイドによれば、ローマ編は、そもそもは旅行記(しかもパリの!)として草稿が書かれたのだそうで、ローマの街の記述がとても細かくて長い。挿話的に語られる山賊の話(ククメットのカルリーニに対する仕打ち、ルイージ・ヴァンパがククメットのチームを乗っ取る話)もいちいち面白く、単独でも話として成り立ちそうなくらいだ。

    メインの話はなかなか進展していかないが、飽きるところがなく、これが新聞連載小説として人気を博したのは、さもありなん、という感じだ。

    全六巻のうちの既刊三巻は次で最後となる。続きが気になってしょうがなくなりそうだけど、同じ訳者で読みたいので、気長に待とう。


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    2026年10月24日
  • モンテ=クリスト伯2

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    まだまだ面白い
    第二章からテンポは落ちたが、今後待ってるであろう展開に向けてしっかりとした布石が打たれたように感じた。

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    2026年10月05日
  • モンテ=クリスト伯1

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    200年近く前の作品とは思えないほど面白い。
    翻訳の妙もかなりあると思う。
    テンポが良いのに最低限のやり取りだけではなく、心情がしっかり伝わってくる。
    その場の空気を感じられるほどの臨場感があるのもすごい。
    物語の流れ自体もとても魅力的。

    最終巻が出るのは2028年予定らしいので、それまで待てずに他の翻訳を読むかもしれない。

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    2026年09月21日
  • モンテ=クリスト伯1

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    全六巻のうち既刊三巻の第一巻。
    描かれているのは、1815年2月28日から1829年2月28日までの14年間。それが丸々、主人公の主席航海士エドモン・ダンテスがシャトー・ディフに投獄されていた期間。

    本作のダイジェスト版が黒岩涙香翻訳翻案の「巌窟王」として有名らしいが、幸か不幸か読んだことがないので、新鮮な気持ちで読めた。

    マルセイユに帰港したダンテスは、次期船長に内定し、美女メルセデスとの結婚を控え、幸せの絶頂にあったのに、嫉妬に燃える同僚会計士ダングラールと恋敵でメルセデスの従兄弟のフェルナンの謀略に嵌められ、保身に走る野心家の国王検事代理ヴィルフォールが案件を担当するという不運もあって、裁判を受けることすらなく、政治犯収容所に入れられてしまう。

    地下牢の同僚ファリア神父が神がかっていいひとで、ダンテスは何とか精神を維持することが出来る。ついでに(?)宝物のありか(これがモンテ・クリスト島)を知る。二巻以降は、この宝探しと自分を嵌めた3人への復讐が同時並行で進んでいくのだろうか。楽しみだ。

    この巻の見どころは、何と言ってもダンテスの脱獄シーンだろう。死体との入れ替わり、というアイデアは見事。土に(願わくば浅めに)埋めてくれるかと思いきや、まさかの、特大の錘を付けての海中投棄。ダンテス君、大いに焦ったでしょうが、何とか縄を断ち切って無事に無人島へ脱出。すばらしいカタルシス。

    脱獄をテーマにした作品といえば、映画の「ショーシャンクの空に」を何度も思い出しながら読んだ。こっちも、自分の保身のために無実の囚人を出したくない人(所長)がいて、構造は少し似ている。

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    2026年09月12日
  • 転落

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    信用できない語りの中に、社会を鋭く突き刺すような言葉が幾つも潜んでいる。隷属と後悔は、安寧を呼ぶのかもしれない。裁かれる前に悔悛……することができればどんなに楽か。

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    2026年04月02日
  • 千霊一霊物語

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    仏革+怪奇譚ということですごく好みの話だった
    特に「ソランジュ」「アルベール」の前後編と「髪の腕輪」が好き

    18世紀末-19世紀のフランス人の心象が気になる
    革命や共和政に賛成していても、王家やキリスト教への敬意や愛着は残っているのかな

    チョイ役でダントン出てきたのが面白かった(ガブリエルの話ではない)
    他のデュマ作品だと「アンジェニュー」や「赤い館の騎士」、他にもスタンダール「赤と黒」やバルザックのいくつかの作品、さらに20世紀だと直接仏革と関係ないセリーヌやサガンでも言及があるので本当にどこにでもいるなぁと

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    2024年10月06日
  • 転落

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    定期的に本作を読み返しており、今回新訳が出たということで早速手にしてみた。

    この新訳版には適度に注釈が付け加えられ、文章も従来の訳書より読みやすくなった様に思う。
    しかし最も新訳の恩恵にあずかっているのは、本書を通してたった一人の語り手であるクラマンスである。彼を露悪的かつ魅力的に、そして親しげに表現することは、本書の仕掛け(罠)上で欠かせないからだ。


    話の大筋は以下の通りである。

    語り手であるクラマンスは、かつてパリで名を馳せた弁護士で、私人としても善行やその振舞いから評判であった。
    当時の彼は順風満帆な人生を送っており、自身が「高みにある」ことを信じて疑わなかったが、あるきっかけから罪の意識が芽生える。つまり弁護士の仕事も弱者への親切や施しも、人よりも道徳的に高みにありたいという自己愛からくるものだと悟ったのだ。自分に嘘を付くことに耐えられず、罪の意識から裁かれることを恐れるようになったクラマンスは、足掻いた末についに高みにありながら裁きから免れる方法を発見する。
    それは「告解者にして裁判官」となることであり、そこに至るまでの過程を彼の語り口からなぞっていく…。


    この告解者にして裁判官というもの(クラマンスは職業と自負)について。
    簡潔に言えば、彼自身を含め誰しも犯しているであろう罪をあらかじめ自白(告解)し、露悪的かつ親しげな態度で相手も同罪であることを認めさせ、共犯者に仕立て上げる。そこから先に自白したという道徳的優位を利用して、相手を裁くのである。
    どういうことかというと、罪を裁くことができるのは先立って罪を認めた者だけであり、相手から言葉巧みに共感を引き出してから告発するというもの。
    クラマンスは自己愛と人に裁かれることへの恐怖から、人より先に自分を裁き、然るのちに相手を裁くという結論に至った。
    彼は根城である酒場メキシコ・シティで、獲物を捕えては告解→共犯→裏切りというプロセスを繰り返し、人からの裁きを免れつつ心の安寧を保っている。
    職業が変われど、正義の弁護士であった頃と彼は変わらない。自身を高みに置くために、聞き手を引きずり落としては裏切っていることを除いて。


    「転落」はいくつかの訳書が出ており、クラマンスの職業については翻訳のゆれがあった。
    私が知る限りでは“裁き手にして改悛者”、“改悛した裁き手”、そしてこの新訳の“告解者にして裁判官”である。
    私はフランス語が分からず原著を読めないので実際のニュアンスはわからないが、本書の内容を考えると改悛より告解という訳が適切だと感じる。
    なぜならクラマンスは自分の罪を認めても、それを悔い改めることはないからだ。


    ざっくばらんな説明になってしまったが、本書はあとがきに訳者による丁寧な解説が付されており、初見では難しい本書の理解を深めることができるだろう。

    もっとも理解したところで、現代も”告解者にして裁判官”たちで至る所が埋め尽くされていることに気付かされ、人間不信と虚無感が残るだけである。
    そうなれば誰しも自身の安寧(決して救済ではない)のため、進んでクラマンスとならざるをえない。


    長々と書いてしまったが、もしここまで読んでいる方がいれば大変ありがたく、報われる思いである。

    それではようこそ、メキシコ・シティへ。

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    2023年04月06日
  • 千霊一霊物語

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    アレクサンドル・デュマによる怪奇ロマン中編。

    ===
    27歳の作家アレクサンドル・デュマは、狩猟のためにフォントネを訪れていた。
    狩りも一段落ついたところでデュマは血塗れの男を目撃する。
    男は石切夫のジャックマンと名乗り、市長の家の玄関先で告白する。「俺は自分の女房を殺した。捕まえてくれ」
    市長のルドリュは警察官たちと共に現場検証に向かうが、ジャックマンは現場に戻ることを激しく拒絶する。
    どうにか現場であるジャックマンの自宅についた一行は、血塗れの地下室で首を切られた女房の遺体を見る。
    ただでさえ凄惨な事件だが、殺人犯ジャックマンはさらに恐るべきことを告げる。「斬り落とした女房の首が俺に向かって喋りかけてきたんだ!」

    翌日。
    デュマは証人としてルドリュ市長の自宅に呼ばれる。その場に集まったのは、警視のクザン、現実主義の医師のロベール、自称不死者の文人エッテイラ、神秘主義者司祭のムール、博物館創始者のルノワール子爵、青白い顔をした美女グレゴリスカ夫人。
    彼らの話題はジャックマンの証言のことに。切り落とされた首にはまだ意識があるのか?死んだ人間の意思がこの世に留まることがあるのか?
    彼らは一人ひとり、自分が見聞きした不可思議な経験を語ってゆく。

    ルドリュ市長
     若い頃身を焦がした恋とその悲痛な終わり、しかし死んだ恋人の意思としか思えない不思議な出来事を語る。

    ロベール医師
     殺人犯に有罪宣告をした判事が、死者が戻ってきたとしか思われない経験をして衰弱していく姿。

    ルノワール子爵
     フランス革命で暴かれた国王たちの墓。だが王の遺体を侮辱した男はは不思議な人影に招かれて…。

    ムール神父
     人間には善良な性と邪悪な性がある。死ぬときに人の意識に残るのが前者なら天国に行くし、後者なら地獄に落ちるだろう。ムール神父が、あるならず者の魂を救おうとしてとった行為とは。ならず者の善意は勝ったのか。

    エッテイラ
     亡夫の遺言を果たすため、その意思に導かれた未亡人の話。

    グレゴリスカ夫人
     ポーランド出身のグレゴリスカ夫人の家族はロシアからの独立の戦士だった。一族の城に敵が迫り、修道院に匿われに旅に出た彼女は、モルタヴィア領で領主の息子に囚われる。独立、戦争、王家、吸血鬼伝説…。

    ===

    物語の背景は、フランス革命も終わったものの、人々の記憶にはまだ新しいという時代だ。登場人物たちの間に、恐怖の時代を共に生き延びたという共有感がある。
    処刑方法としてのギロチンについて、一瞬で命を奪うから人道的という理由もある反面、斬られた首が動いたり喋ったりしたという目撃談もたくさんあったらしい。この処刑方法については、作者デュマの熱意を感じるのだが、彼の時代にも議論が交わされていたのだろう。

    あとがきに書かれた作者アレクサンドル・デュマの経歴がなんというか…作品よりもドラマチックというか人騒がせというか(苦笑)、やはり面白いものを残す人は本人も強烈なんだなあと思う。
    …女性問題も財産問題も色々やらかしてるのに、庶子達が面倒みてくれたって、よくできた子供たちだとも思った。

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    2022年05月28日
  • 千霊一霊物語

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    19世紀ヨーロッパ、主人公である作者は旅先で不可思議な事件に関わり、その縁で集まった人々がそれぞれの不可思議な体験を語る。
    はじめに事件が起き、集まった人々がそれについて語り合っているところなど何となく推理小説のような状況だが、人々の話はHowdunitではなく、怪奇な事象に対して否定的な唯物論者に対しての百物語へと発展していく。
    語られる幻想的な短編はそれぞれ魅力的で、夢中になって一冊読んでしまった。訳も大変読みやすい。
    全体を通して、とくに王侯貴族の描かれ方などに他の時代物作品と通じるデュマらしさがある。なんと多彩な作家なのだろう。もっと幻想文学作品を読んでみたいものだ。

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    2020年05月22日
  • モンテ=クリスト伯3

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    物語の舞台はついにパリへ。モンテ゠クリスト伯は、ローマで計画的に知り合ったアルベール・ド・モルセルフ子爵やマクシミリアン・モレルらとも合流し、社交界へ進出する。いまや男爵位にある仇敵ダングラール、仇敵フェルナンと結婚したかつての恋人メルセデス、司法官ヴィルフォールとも正体を隠して再会し、巨万の富と奇策で搦手から復讐の準備を整えていく。

     日本でもドラマ化された復讐譚の第三巻。物語としてはまだ序章で、前巻で準備を整えたダンテスが、本心を隠して、パリの新参者としてかつての敵と再会しつつ、種まきもする準備段階にある。思惑を知るのは読者だけという楽しみを提供している。

     一方で彼らの息子娘たちも登場する。全く親の影響を受けていない子供もいれば、闇に葬られて悪の道を突っ走る庶子もいる。仇敵三人はそれぞれ身分もあがっているため、お互いの絆を強くするため、或は秘密をより強固にするために縁組も組まれているが、子供たちは別に好きな人がいて、一筋縄ではいきそうにない。

     ダンテスに保護されたエデは、ギリシア太守アリ・パシャの娘だった。軍人時代のフェルナンの裏切りによって父親を殺害され、自らも身分を取り上げられる。モンテ・クリスト伯爵によって救出され、以後伯爵の庇護下で太守の娘にふさわしい扱いを受ける。彼女と連れ立って現れるモンテ・クリスト伯が社交界を騒がせる。被害者と加害者心理のなせる業で、エデはいつまでも敵を覚えているのに、フェルナン側は記憶にもない。一方でエデは、モンテ・クリスト伯を庇護者としてではなく男性として愛しており、メルセデスとの愛が再燃しないならば、彼女と幸せになって欲しい。

    2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

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    2026年10月05日
  • モンテ=クリスト伯2

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    ネタバレ

    モンテ=クリスト伯2巻を読んで気づいたこと。
    ダンテスが何度も名前を変える場面は、単なるトリックじゃなくて「社会的階級が人間を分断する」という19世紀フランスの現実を体現してる。顔色が戻らない14年の傷跡。
    完璧でない主人公が、それでも歩み続ける―そこに人生の深さがある。

    #モンテ=クリスト伯 #デュマ #復讐小説

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    2026年01月09日
  • 転落

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    なんでこの男は落ちぶれたんだろう。

    語り手がバーで同郷の男に延々と自慢話をする。
    訳者の解説をオンラインで聞いてから読んだ。
    理解されていないカミュの中で一番美しい小説だそうだがそれはよくわからなかった。

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    2023年08月30日
  • 転落

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    この『転落』は、いわゆる自分語りの形式をもって、パリからアムステルダムにやってきた弁護士クラマンスが自らの半生を打ち明ける。

    前半は、細かな心理描写にさすがの感を抱きつつ楽しく読んだものの、自己愛というテーマ自体はそれなりに平凡で、作家であれば多かれ少なかれ誰でも書きそうな内容、という印象だった。
    しかしクラマンス自らの無謬性が否定された中盤以降、哲学やキリスト教の要素をふんだんに盛り込みながら、タイトル通り『転落』のスピードに読者を巻き込んでいく手腕には圧倒された。
    そして、終盤のミステリー的要素も踏まえた展開と結末。
    短編ながら、文学的要素をこれでもかと詰め込んだ傑作と感じた。
    ノーベル賞受賞の才能はやはり並ではない、そのことを存分に味わった素晴らしい読書体験だった。

    また訳も秀逸。
    語り手クラマンスの一筋縄でない心理が、そのまま日本語に乗っている。
    尊大さと滑稽さ、プライドと自責、慇懃無礼、という相反する要素が絶妙にバランスされ、微妙な心理が手に取るように伝わった。
    訳が面白すぎて何箇所か吹いてしまい、読み続けらない所もあった。

    クラマンスの転落前の人格は、自分とかなり似ているところがある。
    一方果たして自分は、人を見捨てたことを一生後悔し続けられるほどの善人だろうか。
    自分自身に今後転落があるのか、転落することすら無く表層を生き続けるのか?とふと考えた。
    本作を読んだ人は、たいてい皆そう感じるものなのだろうか。

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    2023年07月25日
  • 千霊一霊物語

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    デュマが偶然居合わせた殺人怪奇事件から物語が発展していく。
    物語は事件の解決がテーマではなく、偶然集まった人々が体験したそれぞれの怪奇現象がテーマ。
    フランスの時代背景もよくわかり、それぞれの幽霊話も描写が鮮明でどんどん物語に引き込まれ、あっという間に読み終わった。
    解説部分もアレクサンドルデュマをもっと知れて興味深かった。

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    2023年04月12日
  • 千霊一霊物語

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    怪奇幻想譚好きは絶対読んだ方が良い。流石「三銃士」を書いたデュマだけあって面白い!
    ギロチンで切断された後も喋る生首、幽霊、呪い、吸血鬼……辺りのキーワードが好きな人にはオススメです。
    ただの怪奇幻想譚ではなく、人体実験やメスメリズムなど、当時の『科学』の視点も組み入れつつ、18世紀~19世紀辺りのフランスの歴史も絡めて物語を描いてるのがこれまた手が込んでる。(実際に歴史上存在する人を登場人物にしているあたり、山風にも通ずる感じの面白さ…)

    タイトルの「千霊一霊」は「千夜一夜」リスペクトから来てるらしいですが、市長の家に招待された客が順番に自分たちが体験した不思議な怪奇幻想譚を語るという体裁、「千夜一夜」というより、日本人にはなじみ深い「百物語」のお作法ですね。本邦初訳。

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    2020年12月07日
  • 千霊一霊物語

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    1850年頃の連載物。
    死がこんなにも身近なものであるその空気感、
    時代的な思想や背景描写、宗教観、
    うまく出している、見事な訳出でした。
    ゾクゾクする怪奇話の連続なはずが、
    神父の章ではこころをぐいと掴まれました。

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    2019年08月25日
  • 千霊一霊物語

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    殺人の場に偶然居合わせた著者が、出会った市長宅に招かれ、
    集った人々から奇怪な体験談を聞くことになる。
    短編を枠物語の形式で綴っていく幻想怪奇譚。
    年表有り。
    「この人殺し!」生首がしゃべったことが発端。
    死とは?死体が動くことはありうるのか?
    当時の科学の論議から始まり、集った人々が語っていく。
    市長ルドリュー・・・ギロチンの犠牲者の怒りと悲しみ。
    医師ロベール・・・判事のもとに訪れるのは呪いの産物か?
    ルノワール士爵・・・サン=ドニの王墓の事件と亡霊たち。
    ムール神父・・・死刑となった盗賊との約束は果たされるのか。
    アリエット氏・・・商人の妻が遭遇する不可思議な出来事の数々。
    グレゴリスカ夫人・・・敵対する兄弟。弟の死。毎夜訪れる者とは?
    デュマ版「百物語」という感じ。
    実在の人物や歴史に架空の人物も混ざり、幻想的な印象です。
    生首はしゃべり、憤怒し、口づけする。
    死体はメダルを守るために抵抗し、呪い、悪しきものに憑依され、
    或いは吸血鬼となり邪な想いで夜な夜な訪れる。
    と、なかなか怖い話が揃っています。
    その時代の歴史的背景(フランス革命や王政復古)、
    地理的条件(モルダヴィア等)に思い巡らしながら読むのも、一興。
    余談ですが、実在の人物でサン=ドニの王墓の話を語る
    アレクサンドル・ルノワールに興味を持ってしまいました。

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    2019年08月01日
  • 千霊一霊物語

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    ネタバレ

    間違えて削除してしまった。再度、ブログから感想上げ直しします。

    ブログから感想を移しました。

     枠形式といわれる物語の中に物語に込められていく語られていくのですが、タイトルの翻訳は大変だったでしょうね。

     アラビアンナイトは枠形式の代表です。一つの物語の中にいくつも入っているので、私はマトリョーシカっぽいとか言ってましたが。

     この形式はインド文学から大陸を流れて、アラビアでこうした形でまとまったものですので、興味がある方はアラビアンナイトは手に入れやすいですし、一度、読まれることをお勧めします。

     インド文学だと「屍鬼二十五話」「ラーマーヤナ」、「カターサリット・ナーガラ―」「マハバーラタ」などが著名です。どれも面白いですよ、大好き。

     百物語のような形式も面白かったのですが、物語としては科学的に怪異を解こうと始まる物語が、いつの間にか単なる怪談になるのは勿体ないなと思ってしまった

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    2019年06月22日
  • 転落

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     弁護士として順風満帆な生活を送っていたフランス人ジャン=バティスト・クラマンス。なぜか今は落ちぶれた様で、アムステルダムのバー「メキシコ・シティ」にたむろしているらしい。そして、バーに来ていた同国人に話しかけるところから始まり、最初から最後まで彼の一人語りで話が進む。
     今彼は、「告解者にして裁判官」のようなものだと言う。一体それはどういうことなのか?どうして彼は以前の生活から“転落”してしまったのか?彼の語りから、徐々に謎が明かされていく。
     あらすじ的に言うと、こんな感じ。
     語りの文なので、読むこと自体は難しくないが、語られる中身は、自分にも当てはまるとドキッとしたことも多いし、人間の自由とは何かといったことも考えさせられる。

     久しぶりに読んだカミュ。面白かった。

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    2023年03月20日