阿部夏丸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
高3のある朝、起きてみると机の上にこの本が置いてあった。父がくれたのだ。父は何か伝えたいことがあるとき、こうして回りくどく主張してくる時がある。もう大学への合格通知を手にした後の出来事だった。私は父と同じ大学の同じ学部学科に進学することが決まっていた。
表題作の「父のようにはなりたくない」は中学の頃、国語の授業で扱われていた気がする。しかし、中学で読むのと、高校卒業を目前にして読むのでは重みが違った。中学の頃は父のようになることもできれば、ならないという選択もできる、完全に自由な状態だった。一方で、高3の私はその時点で父のようになるレールの上に乗りかかっていた。どういう意図で、そのタイミングで父がこの本をくれたのか分からなかった。もう進路が決定したその後に。今更変えられないけど、私が父と同じ大学を選んだのが嫌だったのかな、なんて思いが浮かんでは消え、混乱した。
「やり方は色々ある」そんなこといつもなら絶対言うような父ではないのに。厳しくて、保守的で違うやり方を選んだら真っ向から反対してくるような人だとばかり思っていたのに。仕事が、上司が大変だといつも愚痴っているのに。吾郎とはかけ離れた存在だと思っていたのに。なぜ?
父にはわかっていたのかもしれない。とある一流大学に行けという祖母の重たい期待をかわすために、私があえて父と同じ大学を選んだことを。父と同じ大学であれば、あからさまに非難されることも、がっかりされることもないだろうと思っている私の魂胆を。私の逃げを。その上でその選択を肯定して、背中を押す気持ちでこの本を贈ってくれたのかもしれない。
大学の選択に後悔は一切ない。自分のやり方がたまたま父と被っただけで、そのやり方にたどり着くまで自分なりに悩み抜いた上で決断したことだから。祖母のことも大学を決める一要素にはなったけれど、それだけで決めたわけではない。父と同じ道を歩んで、決められたレールに乗っているだけのように一見見えるかもしれないが、私は私の人生を生きている。父よ、安心して見ていてください。 -
Posted by ブクログ
この表紙はいいなあ。最近表紙の話しばっかりしていますが、この写真だけでもジンとしてしまいます。昔はいつも川や田んぼで泳いでいました。魚を釣り、虫を取り、ザリガニを取りいつも何かにワクワクして過ごしていました。昔は中野区の辺りも虫が沢山居たし、夏休みは千葉か埼玉の親戚の家に入り浸っていたので、日夜生き物の捕獲に勤しんでいました。
この本も基本は川と少年たちの話しで、友情と魚の話しに終始します。これが何とも瑞々しい文章で、この人心に小学生がきっちり住んでいるなと、その小学生の心情を大人がいい文章で形にしてくれているという風情です。
いいよいいよ本当にいい。大事に取っておいてこっそりまた読もう。これは児童文学じゃなくて、おっさんホイホイ文学ですよ。子供の頃に戻りたいなんて全然思わないけれど、思い返せば暗黒と思っていた子供時代にもきらきらした想い出はありますね。