渡辺公三のレビュー一覧
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レヴィ=ストロースの「構造」にまつわる著作群について解説した本。
複雑な多様な現象を説明する単純な原理を見出して体系化してる。構造主義は、若者の知的好奇心を刺激する新しい潮流だったのだと思う。
面白かった点
・『親族の基本構造』はヤコブソンの構造言語学での考え方を親族の多様な形態に当てはめる試みだった。
・モーガン批判において、「体系が知られているが機能が知られていない」ことを指摘している。つまり、機能(目的)を知ることと体系を知ることは別物。
・『野生の思考』において、生物種の多様性や互いの差異が、人間集団内の多様性を整理する枠組みを提供している。 -
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レヴィ=ストロースの時事問題などを踏まえたエッセイ集。
1952年の「火あぶりにされたサンタクロース」が最初にあって、そこから一気に1989年に飛び、1年に2つづつくらいのペースでかかれ、2000年のエッセイが最後。全部で17本の珠玉というのがまさに相応しいエッセイ集。
この半世紀にもわたる執筆期間にもかかわらず、レヴィ=ストロースの物事をみる目は驚くほどの一貫性がある。
人間の思考は、いかに現代的、論理的にみえても、「未開」の思考がふと思いがけなくでてくる。つまり、わたしたち「文明人」と「未開人」の差は、思いがけないほど、近いということ。
「未開というものがあると思う態度こそが未開」 -
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初レヴィ・ストロース。
早熟な高校生や教養学部の大学生にも手に取ってもらえるように、という配慮あっての訳だったが、彼の専門であるアメリカ神話や親族構造についての前提知識がないと、正直理解することは難しい。ただ、章によっては比較的読みやすいものもあり、彼がどう世界を眺め、人類学という学問をどのように位置付けていたか、そしてそこで得られる知見をどのように目の前の世界の解釈の材料にしていくか、ということに触れられた気はする。そして、これほど知的好奇心をくすぐられる文章はなかなかないとも思う。
難しい!というのが正直な感想ではあるけども、一朝一夕でいかないのが「学ぶ」という営みであるから、一歩ずつ柔軟 -
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「構造主義」って何?というところから入った本.
本自体は人類学者レヴィ=ストロースの生涯と功績を綴った本. 半分くらいでリタイア.
「構造主義」が意味すること自体は普段我々が使う「構造」と変わりないものということが確認できた.
”「構造」とは要素と要素感の関係からなる全体であって,この関係は一連の変形過程を通じて普遍の特性を保持する.”
「◯◯主義」とあるから何かイデオロギーを指すものかと思ったけどそうではなく,研究や観察において物事をどう捉えるかという思考のメタフレームワーク的なものであるということがわかり,またレヴィーストロースはそれを文化人類学においてそれを発揮した人なんだなあとい -
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このところの自分の思考に顕著なある傾向には、おそらく文化人類学の論考に近しいものがみられるのではないかと思い手に取った。もっとも入門的なところに位置すると思われる一冊だが、正直なところ自分程度の教養では立ち向かうのは難しかった。それでも著者がいかにフラットな視野で世界を見ていたか、それを膨大な教養と知識の海で飾りながら綴られていることはよく分かった。
直線的・一方向的進化に対する疑問、「未開」という視点の誤りなど、触れたかった内容も通奏低音のようにすべての論考に流れていた。勉強を積んでもうすこしスムーズに、この内容を楽しめるようになれればよいが。 -
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原書を読んでいないのでいまいちわかりにくかったが、大掴みには理解できたような気がするし、原書を読んでみたいと思った。
トーテミズムの否定がピンと来なかった。
ただこの人は、西欧から見ると未開と言われた人たちに自分を置くことで、価値の基軸、文明の糸口を見つけたかったんやろなと理解した。
この選民意識は学歴社会と言われた時代を通じて、今の社会の中にもそのような偏見はある。多様性を重視し、かつ一方(西欧もそれ以外も)に寄りかからないための鍵を構造という視点で切り開こうとしたのではないのんかと思う。
神話の具体例が出ているところは印象的。
尻を食われる男
男は母親を犯す、その罰としてハゲワシに -
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構造主義人類学を提唱したことで知られる人類学者レヴィ=ストロース(1908ー2009)の生涯と思想の概説。言語学者ソシュールが「一般記号学」を構想する中で到達した抽象的な「構造」の概念が、より具体的な人文諸科学の中でどのように展開されていったのか、そこからどのような政治的態度が導き出されるのか。
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1942年、亡命先のニューヨークにて、レヴィ=ストロースはロシアの言語学者ロマン・ヤコブソンと出会い、その音韻論を通してソシュール記号学を知ることになる。ヤコブソンの音韻論の方法論を人類学へと拡張することによって、ソシュールにおける「構造」の概念を、自身の新しい人類学に取り入れていく。そこでは