ドロシー・L・セイヤーズのレビュー一覧

  • ピーター卿の事件簿

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    十五代デンヴァー公爵の次男坊であるピーター・ウィムジイは、ワインとコーヒーそして一流の謎が好きな貴族探偵。そんなウィムジイの魅力がたっぷり詰まった短編集。7篇収録。

    「盗まれた胃袋」が一番好き!

    ウィムジイがいいキャラなんだよねー。飄々としていて雰囲気イケメン(容姿は普通)カッコつけすぎず、でもスマートで、ザ・英国紳士。夫婦喧嘩したら黙って皿洗い始めちゃうあたりでもうダメ、めちゃくちゃ好き。
    周りも良キャラ揃いで読んでいて楽しい。
    謎自体はバカミス味もあるし、本格派には

    ウケなさそうな気はするけど(クリスティの方が日本で売れているのがおそらくそれ)バカミス&キャラ小説好きな私にはたまらんぐらいハマりました。これからシリーズ読むの楽しみ!(東京創元社さんの名著復刊で常連だから安心感ある)

    「盗まれた胃袋」で胃袋のこと「大叔父」って呼び合っているのがたまらなく好き。

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    2025年10月19日
  • ピーター卿の事件簿

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     ミステリ評論家の森英俊さんがバークリーの「服用禁止」の解説の中で、英国黄金時代を代表する女性作家として挙げていたのが、本書のドロシー・L・セイヤーズであり、前回アンソロジーに収録されていた「疑惑」が、とても刺激的な作品だったので期待して読んでみたのだが、果たして?

     本書は青年貴族「ピーター・ウィムジイ卿」が探偵役として事件を解決していく短編集であったのだが、まずはミステリ的にあっと驚くようなトリックや、どんでん返しといった分かりやすい爽快感のあるタイプではなく、所々怪奇要素が多いのが特徴的だったと書くと、江戸川乱歩や横溝正史を想像される方もいるのかもしれないけれど、彼らと雰囲気が異なるのは英国生まれの乾いたユーモアを潜ませたミステリでありながら、それを上回るようなピーター卿自身の魅力が更に加わっているからなのだと思う。

     人一倍好奇心が強く『いうなれば、人間性の研究者』であると、自ら語るピーター卿はバークリーの探偵像とも似通った印象を与えそうだけれども、彼の場合はそれに加えて、自らの足を使ってできることは全て行わないと納得しない、『正確さを尊重する性格』である点には、犯罪学者である以前に人としての良心や優しさを感じさせる好感度の高さが印象深い上に、時には探偵の仕事よりも書物莵集を優先する彼の個性や、彼自身のプライベートが進展する時間軸のある世界観というのが(我が子の生まれた場面がある探偵ものというのも珍しい)、なんとも新鮮で、その辺りはセイヤーズ自身の嗜好が垣間見えそうな、微笑ましさすら感じられたのだ。

     また、それとは対照的に人間の内面に眠る嫌な部分も描いていることで、本書がただの夢物語ではないことを痛感できた上に、セイヤーズの博識ぶりもあってか、物語の導入部の巧さにより、これからいったい何が起こるのだろうといった期待感も高めてくれるし、更には動機や真相に対する描き方も細やかで丁寧と、バークリーやクリスティと異なる魅力を何度も実感しながら、何よりも印象に残ったのは「不和の種、小さな村のメロドラマ」のような、人間同士の醜い争いをとことん見せながらも結末は意外な形となったことに、ピーター卿の人柄を何よりも優先させたかった、彼女自身の温情が垣間見えたことである。

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    2026年05月30日
  • ピーター卿の事件簿

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    別の創元推理文庫の巻末の宣伝だったかで、特に前情報無しにこの本を手に取ったのだが、ピーター卿のシリーズものということで、順番に読んでいればもっと魅力を感じたかもしれないなと少し悔やまれるところである。

    どの話も読んでみてそれなりに満足感のある作品ではあったが、特に「ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪」がお気に入り。
    悪魔・魔物の存在など宗教がかった話も絡んでくるのだが、アリスを一目見た時の描写の禍々しさなど、ラヴクラフトのような怪しさ・薄気味悪さが文章から漂っていて、とても好みだった。

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    2026年03月17日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    シリーズ第十一弾。

    ついに結婚へと至ったピーター卿とハリエット。
    従僕のバンターと三人でハネムーン先として買い取ってあった〈トールボーイズ〉と呼ばれる田舎の農家へ向かいますが、到着してみると家は施錠されていて、待っているはずの前所有者も見当たらない状態。
    何とか入れてもらった室内も整っておらず、“話が違う”感満載でとりあえず滞在していたら、地下室から前所有者の死体が発見されて・・。

    まず序章での社交界を飛び交う手紙のやりとりが、「ピーター卿ついに結婚!!」というニュースのセンセーショナルな様子が伝わってきます。
    個人的にはここで、"手紙といえばこの人!"の(?)、クリンプスン嬢のお手紙も載せて欲しかったところですけどw
    そして、ピーター卿の母上・デンヴァー先代公妃の日記も、彼女のチャーミングな人柄が表れていますね。

    そんなブライダルニュースに湧く面々をよそに、まったりとハネムーンを過ごす予定だったのに、滞在先の家は閉まっているわ、室内は整っていないわ、前所有者の債権者は押しかけてくるわ、挙句死体はみつかるわ・・等々で、
    「こんなハネムーンは嫌だ。どんなハネムーン?」
    という大喜利のお題の解答にもなりそうな、ドタバタ顛末になってしまい、なんともお気の毒なピーター卿&ハリエット夫妻ですが、いうても二人はラブラブですし、例によって調査に乗りだす"謎解きがお好き"な御前様。
    何気に一番災難だったのはバンターで、新婚夫婦の衣食住を整える為にもう大忙しでございます(まさに大活躍)。
    そんな孤軍奮闘している彼の地雷を踏みまくるラドル夫人に、さすがのバンターもブチギレる一幕も。
    以前『ナイン・テイラーズ』のレビューで"キレるバンターが超レア"と書かせて頂きましたが、今回はその時以上に"バンター、おかんむり"でした(;'∀')

    あと、このシリーズで引用が多いのはいつものことなのですが(カーク警視が"受けて立つ"からまた・・汗)、それに加えて今回はミュージカルばりにいきなり歌いだす場面が多めだな・・と思っていたところ、本作は元々舞台劇だったようで、確かに全体的に演劇チックだったな~・・と納得です。

    そんな訳で、「大忙しの・・」というより「"大騒ぎ"の蜜月旅行」を、私も〈トールボーイズ〉に一緒に滞在しているような気分で、恋愛&ミステリを堪能させて頂きました。

    オマケの短編「〈トールボーイズ〉余話」では後日譚として、三人の子どもに恵まれた、ウィムジイ家の様子が楽しく描かれていて、微笑ましいエピソードでしたね。

    ということで、本作がシリーズ最後の長編となってしまい、寂しい気持ちでいっぱいです。
    セイヤーズの書きかけの原稿を『イモージェン・クワイ』シリーズでお馴染みの、ジル・ペイトン・ウォルシュさんが引き継いだ長編作品があるようなのですが、こちらはまだ翻訳されていないのですかね?
    とりあえずは、短編集『ピーター卿の事件簿』を読むことで心の隙間を埋めたいと思います~。

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    2025年02月15日
  • ピーター卿の事件簿

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    公爵で金に不自由がなく金髪で背が高く、粋で優しいスポーツマンのピーターウィムジィ卿の短編7篇収録。個人的にセイヤーズの長編より短編の方が無駄がなくて好きだ。この中でのおすすめは「幽霊に憑かれた巡査」。存在しない13番地の家はどこに?という不可能興味あふれる作品。左右の臓器が逆になってる男が記憶を失っている間に殺人を犯したらしい…「鏡の映像」や首のない馬と頭のない馭者の乗る馬車の話、中篇「不和の種、小さな村のメロドラマ」など怪奇趣味の意外な発端が面白い。

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    2021年02月24日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    初めて読んだシリーズですが、この本が最後らしいです。推理小説なんだけど、恋愛成分多めでした。ピーターとハリエットがハネムーン(と言っても引っ越で、買い取った家に執事と一緒に向かう)に行きます。中々犯人が特定されず、色々あって買った家を出ることになってようやく犯人が分かりました。トリックというより仕掛けでした。ピーターの性格が少し怖かったのと、ワインの件でバンターが本性が出たところが印象的でした。

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    2020年04月08日
  • ピーター卿の事件簿

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    新版になって、ウィムジー→ウィムジイと他の創元推理文庫のピーター卿シリーズと同じ表記になり、各短編の邦題&原題が1頁に記載されたのが良いです。解説も加筆・補填されている一方、「暗号ミステリ傑作選」収録の『龍頭の秘密の学究的解明』の解題は残っているので、これを機会にピーター卿短編全集を完成させるために、東京創元社さんには「事件簿3」の刊行を切に願います。

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    2018年04月26日
  • ピーター卿の事件簿

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    我らが貴族探偵・ピーター・ウィムジイ卿が、様々な謎を解明する探偵譚、短(中)編七話が収録されております。

    先日長編シリーズをコンプしてしまった私としては、ピーター卿に再会できて嬉しく思いながら読みました。

    怪奇風味なものからサイコサスペンスチックな話、そして王道ミステリ等々・・各話、毛色の異なる謎解きモノで、何故かどこにでも現れるピーター卿が謎や事件を解決していく展開なんですけど、長編の時よりピーター卿の引用癖といったクセツヨな部分は控えめな印象です。

    個人的に好きな話は、“ちゃんとミステリ”していた「盗まれた胃袋」、「完全アリバイ」ですかね。
    加えて、「ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪」も、事件の異常性(犯人がサイコすぎて何気に一番怖いかも?)と、ピーター卿が仕掛けた解決方法のトリッキーさのコントラストが印象に残りました。
    あと、しょーもない事なんですけど、ピーター卿&ハリエット夫妻に第一子が誕生した日に起こった不可解な出来事を描いた「幽霊に憑かれた巡査」」では、何故かこの話の時だけピーター卿の台詞の語尾が「~だぜ」とスギちゃんみたいになっていたので、「どうした?」と気になってしまった私です~(^^;)

    と、いうことで久々のピーター卿節とバラエティーに富んだ謎解きを楽しませて頂きました♪
    (バンターの出番が少ないのが寂しかったですけどね)

    因みに、本書の解説もピーター卿とセイヤーズのまとめサイトみたいな感じで(?)何気に情報満載でしたので、こちらも興味深く読ませて頂いた次第です~。

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    2025年05月11日
  • ピーター卿の事件簿

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     収録されているのは1928年から1938年にかけて発表された、ドロシー・L・セイヤーズのウィムジイ卿シリーズの短編。
     セイヤーズはどうもアガサ・クリスティと双璧のイギリスのミステリの女王とされているそうだが、やたら古めかしい『ナイン・テイラーズ』はさほど面白くもなかったし、どうなんだろう、と思っているところ。
     こちらの短編集も、古典的な本格推理小説としてはディクスン・カーのそれよりはかなり劣るし、そもそもセイヤーズの持ち味なのかサスペンスフルな急展開がなく遅いテンポでのんびり進んで行くし、それぞれそれなりに興はあってもとりわけ優れている感じがしない。
     そんな牧歌的な印象が強かった作品集だが、最も長く巻末に収められた「不和の種、小さな村のメロドラマ」が中では一番面白かった。

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    2025年01月20日
  • ピーター卿の事件簿

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    「誰の死体?」に続いて、著者作品2作目。

    こちらは、7編の短編ミステリー。

    「幽霊に憑かれた巡査」では、ピーター卿に子供が誕生したとは、興味深い。
    これはやはり、ピーター卿シリーズをきちんと順番に読むしかない。

    解説に、著者のプロフィールと小説とのリンクが、諸説あるようだが、有力説を詳細に記されている点も「新版」として面白い。

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    2024年07月16日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    なかなか続きが出なくって
    前作までの訳者さんが
    亡くなってしまわれたのは少し残念。

    一応、新婚旅行で滞在する屋敷で
    前の持ち主が死んでいるのが見つかる
    という事件は起こりますが
    作者が「推理もある恋愛小説」と言ってるように
    メインはお貴族様と結婚した
    女流作家の気苦労やら、なんやら(笑)

    まぁ、シリーズを通して読んできた読者への
    ファンサービスな一冊ですね。
    御前様は相変わらずだし。
    新婦のハリエット嬢と執事のバンターが
    うまくやっていけそうで良かった(*^0^*)
    「田舎者」のご近所さんに振り回されて
    ついにキレるバンターに驚いたわ…。

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    2020年11月12日
  • ピーター卿の事件簿

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    【収録作品】鏡の映像/ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪/盗まれた胃袋/完全アリバイ/銅の指を持つ男の悲惨な話/幽霊に憑かれた巡査/不和の種、小さな村のメロドラマ

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    2020年05月29日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    サブタイトルが「推理によって中断する恋愛小説」とありますが、まさにコレです。読後感はロマンス小説を読んだ感覚。
    イギリスの田舎の風俗描写と、新婚旅行で周囲そっちのけでキャッキャウフフするピーターとハリエットが凄い。この二人のファンなのでとっても楽しめたのですが、これは絶対にシリーズの最後に読むべき本で(ストーリーやキャラクターが繋がってる事もあり)、絶対最初に手に取っちゃいけない奴ですねw

    この作品、元が舞台脚本だっただけあって、今までの作品と一味違ってうっすら舞台の痕跡みたいなのが感じられて面白い。(例えば、居間にカメラが固定されてそこに次々キャラが出入りするような演出になってて、とても舞台的なんです)また、バンター単品の登場シーンも多く、よりウッドハウスのジーヴスばりの従僕っぷり描写が多くてびっくり。
    ピーター卿の母上のキャラクターがとっても良い。

    後日譚「トールボーイズ余話」も収録。これも幸せそうでとても良い短篇だった。

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    2020年03月25日