唐仁原多里のレビュー一覧
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小説みたいな奇跡や不幸って、生きていても正直そんなに起きない。でも生きていれば、ちょっと気になることとか、モヤっとすること、小さなハッピーは起きたりする。それをこんなに上手に言語化できる人がいたんだと感動した。
短編になっていて、登場人物が少しずつつながっていく、よくある形式だけど、どの登場人物の気持ちもちょっと分かる気がした。
「夜が暗いとは限らない」というタイトルは、「夜は当然暗い」という前提が含まれている。毎日前向きに!と無理しなくても良いよと言ってもらえているようで、気持ちが楽になった。
以下フレーズを抜粋。
朝、という言葉はたいていは良い意味でつかわれる。たとえば「朝の来ない夜はない」というような。だけど朝が明るいとは限らない。どんなことがあっても、時間がめぐれば朝はかならずやって来てしまう。ままならぬ思いや不安を抱えて迎える朝はたくさんある。生きていれば、いくたびも。 -
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どんな人にも、ぱっと見ではわからない一面があり、
深みがあり、感情があり、ドラマがある。
その一つ一つを丁寧に掬い上げて、
人のあたたかさを、手ずから渡すように
ぬくもりや、やわらかさを
そっと崩れないように渡された。
そんな読後感。
どれも、あぁそんな感情あるな、と
胸の奥で共鳴したり、あまりの教官に
涙ぐんでしまったり。
どのお話もとてもよかった。
過ぎていく日々が、とても嬉しく
ありがたく愛しくなるような短編集。
>>備忘録として
P263
生きているあいだに誰かをじゅうぶん大事にしたと、だから別れは辛くないと、そんなふうに言える人はすくないと思う。そこまでの覚悟を持って誰かに接している人なんて、めったにいないんじゃないか。
P264
「生きてる自分を大事にするのがいちばんの供養やと思ってる」
たとえば、ばあちゃんから教えてもらったやり方で料理をすること。それを食べて今日も明日も生きていくということ。ばあちゃんが生きていた頃と同じように、テーブルに花を飾ること。習慣だから、花を飾るたびにわざわざ思い出したりはしない。
ばあちゃんはもうじいちゃんの一部になっている。ばあちゃんだけじゃなくて、今までの人生でかかわった人ぜんぶが、自分の一部だ。好きな歌をうたっていた歌手、かっこよかった俳優、仕事を教えてくれた上司、通りすがりの人がしてくれた親切。そういうもんぜんぶ、自分の中に取り込んで生きとる、とじいちゃんは言う。
P265
「死んだ人間は、天国にもどこにも行かん。死んだら小さい、たくさんのかけらになって散らばって、たくさんの人間に吸収される。生きてる人間の一部になる。とどまり続ける」
「じゃあその生きてる人間が死んだら?」
「また、この世に残ったやつの一部になる」
そうやって続いていくんやで。じいちゃんの声がやけにやさしくて、うっかり泣いてしまいそうになる。
P316
朝は明るく、夜は暗い。それはただ地球がまわっているだけのことだ。明るいことに良い意味も、暗いことに悪い意味も、含まれてはいない。ただの朝と夜だ。それでも自分たちはくりかえす「ただの朝と夜」を幾度も越えていくしかないのだろうと思いながら、カゴに顔を伏せた母の、以前よりずいぶん白くなった髪の生え際を見ていた。 -
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あかつきマーケットを中心にした町で暮らす人々を描く群像劇。
3章仕立てで、第1章はプロローグを含めて9つの短編、第2章は5つの短編で構成され、第3章のみ単独でエンディングとなっている。
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閉店決定的のマーケットや、起死回生策として作られたゆるキャラ「あかつきん」のイマイチのイメージによくマッチした、垢抜けない町の垢抜けない住民たち。
その1人ひとりに温かな光を当て丹念に描いた、いかにも寺地はるなさんらしい作品だったと思います。
また、各話の主人公がリレー形式でつながっていくのもよかったけれど、章題がシャレていて感心しました。
住民たちの悩みや困難を描く第1章。
闇の中にいるようでありながら、各話とも好転の兆しを仄かに感じることから、それは暁闇であることがわかります。
次に「昼の月」のように頼りなげではあっても、希望の光を人々がきちんと認識したさまを描く第2章。
そして、町の中心だったマーケットが閉店となりお得意客も働く人々もより所をなくしたかに見える第3章。
それでも、悩みを抱えていた人々はそれぞれに少し強くなり、次のステップを踏み出していきます。その姿を、表題にもなったタイトルの『夜が暗いとはかぎらない』が見事に表していると思いました。
参りました。 -
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ネタバレ☆3.5
癒やされる本、のような検索をかけて行き着いた作品だったと思う。
のだが個人的には毒親やらモラハラ夫・妻やらそんな家庭で育った人の歪みの連鎖やらがリアル過ぎてもうグロテスクという単語が浮かぶくらいだった。それくらい生々しくて『癒やしはどこだーーー!!!』と思いながら読み進めた部分も多々あった。
決定的な虐待とか暴行とか、目に見える放置とか、そういう他人の介入の隙が少しはある(とは言え難しいのが現実だけども)歪み方ではなくて表向き良い親子・良い家庭みたいな有り様の内側で生皮を剥がれたまま生かされているような、中には本人さえそれに気付いていないいわば洗脳状態の中にあるような、そういう人間関係の構造を書くのが巧すぎて気持ち悪かった(あえてこの表現を使う)。
自分の人生や親族と被る場面もあってその面でも非常にヘビーだった。読む人によってこの重たさはかなり変わってくると思う。
ただ、感動作と推されている作品であってバッドエンドは無いし(エンドというかこれからもみんなが生きていく感じ)、傷やノイズだらけの毎日の中で一縷の希望を見たり実は開けることの出来た扉があったと気付いたりする、そういうまとめ方をしている。
とは言え個人的にはダメージの方が大きく、二度目は読めないと思う。でも最後まで読んで良かった。変に感動的過ぎないけれど人間らしいタフさも感じられる。でもやっぱり重たさと傷の方が強く残る。
3分の1過ぎたあたりの『声の色』くらいから面白さを感じてきて、特に浦上くんが読んでいて心地良いキャラクタをしていた。声に色を感じる山口さんが言うように透明で色を持たない、という色合いを持つ人に感じられた。涼やかだった。
短編として好きなのは『青いハワイ』と『生きる私たちのためのスープ』。どちらも主要人物が強い毒に晒されるシーンはほぼ無いし、大人ならではの気遣いを持って周りと関係を築いているのが良かった。ひとつ壁を打ち破る、ひとつ報われる、その終わり方も塩梅が良い。
文体も整っていてくどくなく読みやすい。時折、回想なのか現在なのかごっちゃになるシーンはあるが読み進めても分からんということはない。
本来読みやすい作家なのだと思うが他作品も古い価値観や男女・普通・常識・体裁みたいなテーマが多いようで、特に毒親をこの感じで描かれると体力がもたないのでしばらくはまた読もうとは思えない作家だった。終盤に見出される希望で充分心が温まると感じられるなら楽しめるのかなと思う。 -
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めっちゃ面白かった!
めっちゃ好きな終わり方!
まずはそんな心の叫びで。
色々な人が登場します。
そしてゆるゆると繋がります。
このパターン、好物です。
そして安直な方向に行かないあたり、リアリティがありぐっときます。
ラストシーン、大好きです。
良い人ばかり出てくる訳ではありません。
うんざりするお母さんや夫に自分の身上を重ねる事もしばしば。
でも不思議とスッキリしました。
着ぐるみの「あかつきん」はずっと出てはくるものの、あかつきんが主役という訳ではなく、結局は各々が各々で主役なんだと思います。
ティッシュ配りの男の子のお姉さん、幸せになって欲しい。 -
Posted by ブクログ
大阪近郊に位置する暁町にある「あかつきマーケット」が物語の舞台…様々な店舗が軒を連ねて営業していたが、時代の波に飲み込まれる形で閉店することとなる…。「あかつきマーケット」のマスコット的存在の「あかつきん」はイベント途中に失踪(!?)するも、その後町の至る所に出没し困った人を助けていた…さらに「あかつきん」のしっぽをお守りにする人も多数現れたが…。
「あかつきん」だけにしぼったストーリーかと思いきや、実際は「あかつきマーケット」で働く人々やその近隣に住む住民やその家族など、様々な年代の人たちが主人公となる短編集でしたね…。日々の生活の中でどんな人とつながり、どんなことを思い、今後どう生きていくか…を描いているものでした。色んな感情に左右されながらも、生活の中で人と関わることでホッとする、感謝し思いやる心をもてる、張りつめていた心を休ませることができる…そんな日があれば、明日もまた頑張れるっ!
「グラニュー糖はきらきらひかる」が、特に好きです!頑張っていると甘いもの、すっごく欲するとき、ありますよね!!自分からもう甘いものでも摂らないとやってらんないわ~じゃなくて、それを家族にすすめてもらえると認めてもらえた感ありますよね(^^)
読み終えて、表紙の「あかつきん」を改めてみると、なんとも愛おしい気持ちになりました(#^^#)