山下泰平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルに本の全てが詰まってる。いわば出オチ。
現代のエンタメ小説、子供向け読み物、漫画、サブカルetcの原点・源流が明治時代にあった。「明治娯楽物語」と本作で総称される作品群。確かに現代の物語に通ずるものがあるように思える。
惜しくも現在では忘れ去られてしまったけど、当時は人口に膾炙していたエンタメ小説の無名の原石たち。黎明期。礎。萌芽。
100年ほど前の日本で、漱石や鴎外の影で庶民に愛されていた物語たち。こんなカルチャーがあったなんて知らなかった。面白かったし勉強になった。
ただこの本、文章はそこまで上手くなかったように感じた。あと持っているのは第二版だけど誤植が結構ちらほら…。改訂に -
Posted by ブクログ
・・・とりあえずタイトルが長いw
なんじゃそりゃ?とキツネにつままれた思いで読み始めると、内容になんじゃそりゃ??と何匹ものキツネに取り囲まれてつままれまくるような本である。
タイトル通りといえばタイトル通りなのだが、明治の時代、なんだかとんでもない娯楽物語の世界があったのである。
江戸が終わり、維新の頃。日本純文学の黎明期でもあるわけだが、世の中インテリばかりではない。多くの庶民は「文学とはなんたるか」をまじめに考えたりはしない。要は、読み物はおもしろければよいわけで、江戸の娯楽の影響を残しつつも、荒唐無稽で珍奇なものがもてはやされる。書き手の方も文学に身を捧げる高尚な目的を持つ者ばかりで -
Posted by ブクログ
近代的な物語の作法ができあがる前の「明治娯楽物語」がどのようなものだったのかを、実際の作品と共に紹介する。横田順彌「日本SF古典こてん」にテイストは近い。横田のは「SF」だけど、こちらは娯楽小説全般と広範にわたっている。
中に登場するお話の荒唐無稽さもおもしろいのだが、それを紹介する著者の視点がよい。単に「ツッコミ」視点で面白がるのではなく、当時の世相や文学史的な観点を説明し、なぜこの作品が受けたのかをしっかり分析してくれるのだ。
ここで登場する「明治娯楽物語」は、いわゆる「大衆小説」と呼ばれるようなジャンルが発展するにともない、消えていくのだが、個人的には戦後の梶原一騎作品や貸本マンガに