小島アジコのレビュー一覧
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ネタバレ※殆ど自分語りになります。
知人に渡された本の中で、約8670日生きてきて、これ程までに自分の価値観形成に至るに語る本に近しい書物はありませんでした。私の今迄の人生が何かの設問だとして、間違いなくこの一冊は参考書となり得るものです。また、今後の私の人生の参考書にもなりそうです。
作中で書かれている「よくなる明日を探しておれはもう二度と地獄への道をさ迷わない」「余生だから私」「どこにも帰れない」という言葉は、まさに全て自分が今までの人生で心から口にした言葉の要約乃至は一語一句変わらないものでした。
そこら辺の安い「価値観の変わる作品」だとか、上っ面の感動や、掃いて捨てる程に転がった出会い別れ -
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「魔女の子供はやってこない」 書評:言葉と構造で織り成す異次元の物語
矢部嵩の『魔女の子供はやってこない』は、読む者を深く引き込み、現実と虚構の境界を曖昧にする圧倒的な表現力と構造の妙が光る作品だ。物語を追うごとに、狂気と奇妙な美しさが交錯する世界観が広がり、読む者の感覚を揺さぶり続ける。
まずこの本の表現力は圧巻だ。文章に添えられた「ぼりぼりぼりぼり」というルビが、その場の壮絶さや不気味さを直感的に伝える。さらに、モンタージュ風の描写では文章に番号を振り、視点の断片化を鮮やかに再現している。極めつけは、家の1階と2階での声を文章の配置で表現した部分だ。この手法によって、文字そのものが物語 -
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『〔映〕アムリタ』シリーズを思い起こさせるような「自己同一性に対する挑戦」的テーマが随所で匂わせられるが、そこまで踏み込むことなく程よいところで戻ってきてくれる。いや、厳密には戻れてはいないような気もするが、そこらへんの"正常の定義"が読んでいると次第に分からなくなってくる。
現実感のない会話のやり取りは謎の中毒性がある。
この作者の描く登場人物たちは異常な行動をとるほど、口ではまともそうなことを言っているので手に負えない。
読みながらつい鼻を掻いてしまう。
こんなもんわざわざ描写すな、と思うこと仕切りで、目が滑ると言うよりも目を滑らさざるを得ないという状況に追いやられる。 -
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暗黒系ガールミーツガールの怪作。
第1話:ああなるほどねー
第2話:幻想的な作風
第3話:趣味悪いな
第4話:目が醒める。ここからが本番。
第5話:単話としての完成度はこれがピカイチ
第6話:何この名作!
人間の少女である主人公が、魔女の少女に出会って、運命が変わっていくお話。
魔女は人の願いをかなえてくれる。でもその願いは思ったとおりに成就するとは限らない。
小学生的な視野の狭さと、「猿の手」的なコテコテの悪意とが混然一体となって、事態を悪化させて流れがとにかく悪趣味で好き。
グロ描写もキモ描写も盛りだくさんで、倫理的にもいろいろ踏み越えてしまっているので、読み手はものすごく選 -
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グロテスクでスプラッタな描写が微に入り細を穿ち続くので好みはきっぱり分かれるが、それと同じ位イノセンスな描写が飛び出してくるのが癖になる、謎の依存性のある小説。
一話目がある種壮絶なネタバレなのだが、これを最後におくだけで印象ががらりと変わる。
夏子が肝心な記憶を忘れている(忘れさせられている)ので、読者と作者の間に共犯関係が成立する巧みな構成。
登場人物の価値観もめいめいぶっとんでおり、まずそこで受け付けるか受け付けられないかふるいにかけられるが、痒いのを掻くのが気持ちいいビルマ君よろしく、その生理的な不愉快さも慣れると快感に裏返る。
そして折々にとびだす比喩が感動するほど斬新。
たと -
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ある女の子が主人公(一人称)として書かれている。
あらすじにあるように、魔女の家を訪ねることになり、主人公の友達はあっさりと殺害。そこから子供ならではの、しかし人間ならではの揉め事により怒涛の展開を遂げ…
その後、主人公は魔女と共に色々な依頼者の願いを叶えるようになる。
初めから最後まで、殆どが気持ちの悪い描写をちりばめられているが、やけにあっさりでコミカルな展開に思える時もあります。(苦手な人は苦手でしょう)
虫が身体を這うような気味の悪さのある話、一つの家族の、何処にでもありそうで、しかし心の置き場に困る話、と短編が続く。
子供の会話の描写として、口語をそのまま文章にしたのだろうというとこ