古沢嘉通・他のレビュー一覧
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短編集6冊目。レコードのA面とB面のように前半と後半で色が違う。
前半4編はひと繋がりのお話。これまで何回か出てきた、ヒトの頭脳・意識・心が
シリコン・クラウド上に載せられてしまう設定。高速演算と稠密なネットワークによってクラウド上のヒトは人智を超えた「神々」となる。
そして、テーマは家族愛。どこまで行っても、世紀末的世界でも、守るべきは家族みたいだ。
後半は、作者のルーツである中国・漢民族が題材の4編。
理不尽な世の中に、立ち向かう個人の強さは、漢民族の文化や考え方が背景にあるんだろうか?
最後の、仮想通貨による反権威主義的リソース配分の話は、先に読んだ『差別の教室』と関連して、色々考 -
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ネタバレSNSで見かけて気になったので読んでみた。
アメリカに住む女の子マディーのパソコンに意味不明な絵文字のチャットが届く。表題3連作を含むSF短編集。
宇宙人なのか異世界人なのか。本作ではどんな接触があるのだろうと興味を抱いて読んでみたところ、相手は意識をデータ化され、デジタルネットワークの世界に存在する父親だった。
本作が書かれたのは2011年らしい。当時に読みたかったかも。今ではとくに意外性を感じない設定となってしまった。
表題作はまだよかったのだけれど、翻訳のせいなのか、専門用語が多いせいなのか、全体的に読みづらく、ストーリーが頭に入ってこなかった。お酒を飲みながら読んでいたせいかも -
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ケン・リュウの傑作短篇集第5段。
表題作は、テセウスの舟を人間の記憶に当てはめ(ちょっと違うか)、サスペンスに仕上げた作品です。異星からの訪問者トウニン人により罪を犯した人間は悪い記憶を除去され、新しい人間に生まれ変わる。果たして記憶を失くした人間は別人なのか?記憶がなくなれば罪もまたなくなるのか?このあたりはとても興味深い問いです。もちろんイエスかノーで答えられる問いではないでしょう。加えて、記憶とはデータのように上書きしたり、新しく置き換えたりできるものではありません。本作では終盤にある人物が除去されていた記憶を取り戻します。別人に生まれ変わっていた人物が元の記憶を取り戻すとき、果たしてど -
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SFはコンピューターネットワークが舞台になりつつあるな
宇宙ではなく、より現実的な舞台だと言える。でも、面白くないな。デビュー作品の紙の動物園に対して感じた緩やかさというかじれったさが作風なのかも。今回も感じたから。
でも、表題作関連の3短編は力作だと思う。映画で言えばマトリクス的かな。よくある設定のよくある展開なんだけど、読ませる。
本作で感じたことは時間外ループするのではないかということ。未来を突き詰めるとビッグバンに戻り、ビッグバンを研究するとその先には未来が見える感じ。神はネットワーク上の仮想人格だって想定から思いついたことね。