小山聡子のレビュー一覧
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冒頭、藤原道長の「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」を引用し、著者はこう言う。「これほどまでに栄華を極めた道長は、周囲の貴族から怨みや嫉みも大いに買っている自覚があった。その上、病気がちで精神的にも脆弱だったこともあり、非常にモノノケを恐れていたのである」(「まえがき」より)。はてさてあの道長がそんなものを怖がっていたとは?と古代史に詳しくない私などは思ってしまうのだが、古代の人びとにとって人間の体を抜け出した霊魂(元に戻る場合は「生き霊」、元の体に戻らなければ「死霊」であり、いずれも「モノノケ」[物気])は主として病気をもたらすものとして恐れられていたらしい。道長自身
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『浄土真宗とは何か』
2023年5月22日
親鸞の生涯やその思想について、簡潔にまとまった一冊。浄土真宗の入門にふさわしい。
本書では、親鸞以前の平安時代における密教から平安浄土教、さらには源信による臨終行儀にも触れる。浄土真宗の前夜を説明することで、親鸞の思想における矛盾への理解がしやすくなっているだろう。
本書は、親鸞の人間らしい側面に焦点を当てており、大変興味深かった。歴史上の人物、ことに宗教家ともなると、完璧超人いう理想化したイメージを抱きがちである。しかし、本書では人間味あふれる親鸞像が提示され、その苦悩にあふれた一端に触れることができ、親しみをもって読むことができた。
親鸞の -
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鬼滅好きが高じて鬼について知りたくなったため読んだ。
鬼が日本でどう捉えられてきたのかという話。
鬼は元々人間が死んだものとされていて、中国から渡ってきた。それが怨念を残して死んだもの、厄災を運んでくるもの、実在しないもの…というようにどんどん捉え方が変容していったが、障がいを持って産まれた子や外国人など、マイノリティを『鬼』として扱うのはあまり変化がなかった。
その中でも女性に関する差別が酷く、女性は劣悪などと言われ鬼と見做されることも多いことに驚き衝撃だった。
日本人特有なのかはわからないが、マイノリティを不気味なものと見做したり女性を劣悪だと考えている人はいまだにいるだろう。
本書を読 -
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遥か昔、恐ろしい存在であった「もののけ」が時代の移り変わりの
中で、どう変容していったかを豊富な史料から解き明かす。
序章 畏怖の始まり
第一章 震撼する貴族たちー古代
第二章 いかに退治するかー中世
第三章 祟らない幽霊ー中世
第四章 娯楽の対象へー近世
第五章 西洋との出会いー近代
終章 モノノケ像の転換ー現代
主要参考文献、古文書・古記録の幽霊一覧有り。
もののけ、モノノケ、物の気。
古代は得体の知れない死霊の気が病気や死をもたらす存在でした。
天皇や貴族は、僧や陰陽師の調伏や供養に頼っておりました。
時代が経るにつれて「もののけ」は変容していきます。
調伏を行う者や手段の変容・・・双六 -
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歴史学の立場から、浄土真宗について、開祖親鸞やその家族、継承者らの信仰の実態を明らかにしている。
これまで浄土真宗の開祖として理想化するかたちで語られがちであった親鸞、そしてその家族・継承者について、史料に基づいて、他力に徹しきれず、理想と現実の間で揺れ動く等身大の姿を描こうとしているところに本書の特色がある。
本書を通じて、宗教者といえども、完璧ではなく、迷い、揺れ動く人間なのだということを感じた。また、本書は、臨終行儀への着目など、歴史学研究としても水準が高いものだと感じた。
ただ、「浄土真宗とは何か」と表題を掲げているにしては、必ずしも教義どおりになっていない歴史的実態を明らかにすること -
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鬼について、ひとまとめにした新書。鬼とは、時代によりとらわれ方は色々あり、外国からもたらされたもの、疫病といったところや、何より自身を正当化するために蔑視すべきマイノリティを鬼と見なしていたところが非常に興味深い。そしてそれは戦争期における鬼畜米英といったものも含まれ、現代においても、例えばコロナが蔓延し始めた時に、マスクをしていない者がいれば、自主警察といったものが現れたりするなど何処かでそういった狭い認識で他者を差別しているところが日本人は忘れてはいけないのであろう。
参考文献の多さから、よくよく研究されていることが分かり、「おわりに」のコメントには鬼滅の刃にも軽く言及しているのは面白