広野和美のレビュー一覧

  • グランゼコールの教科書――フランスのエリートが習得する最高峰の知性

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    ギリシアから2015年までの「歴史」「宗教」「哲学」「文学」「芸術」「科学」がぎっしり詰まっている。あまりの文量に読んでいて迷子になりそう。全網羅なので、時代によって自身の知識の偏りに気づける。

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    2024年09月30日
  • マンガで読む 資本とイデオロギー

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    原作はピケティ氏。表紙の絵がキャピタリズムの基本を象徴している。1980年頃まで政策論争の構造は階級闘争的なもので、左派は労働者、右派は資本家が支持していた。しかし、それ以降徐々に左派は高学歴の管理職や知的職業の人達からの支持を集めるようになった。この逆転現象は欧米のあらゆる民主主義国(日本は入っていないようだ)の投票行動に見られるという。確かにトランプ派やルペン派の勢いを見ると、右派は旧来型の資本家と、逆に現状の収入等に不満を持つ層からの人気が有るように見える。この本でも、庶民階級や中流階級の人々の思っている「自分達は見捨てられている」という気持ちを利用して、反移民とナショナリズムのイデオロ

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    2024年09月12日
  • 平等についての小さな歴史

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     読むのにかなり根気が必要だったが、面白い箇所は非常に面白い。なにより平等への道が遠く険しい事、この200年の間に、想像される平等に近づいている事、過去の悲惨な出来事を経て平等が形成されているという事だ。個人感覚では税金を安く抑え、手元の残りをできるだけ残すことが正義に思われるが、社会全体で考えると、そりゃ税収が多い方が国として発展する。国同士の争いだって、国家にお金があるかどうかでも決まる。戦争の結果として、どのように資本が再分配されたか。
     専門用語や前提の歴史知識が必要で、中々読み進めにくい本であったが、新たな気づきや視点を提供してくれる良書である。だからといって1000ページを越える過

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    2025年09月18日
  • 平等についての小さな歴史

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    トマ・ピケティと言えば、私のイメージは『21世紀の資本』によって資本主義においては格差が縮まらないという事をエビデンスに基づいて明かした人。r > g の法則(資本収益率rが経済成長率gを上回る限り、富は労働者よりも資本所有者に集中する)という、格差拡大の根本的なメカニズムは有名だ。だが、この本は約1000ページと分厚く、ペラペラ捲るだけで購入するに至らず、解説本を購入した記憶がある。

    これ以外にも、『格差と再分配』『資本とイデオロギー』という著作もあり、3冊合わせて約3000ページ。で、今回の本の凄さは、この3000ページだと読み切れないので、コンパクトに纏めて欲しいというリクエスト

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    2025年06月18日
  • 平等についての小さな歴史

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    ネタバレ

    北側諸国(残念ながら日本含む)が植民地から搾り取った資本をさんざん貯め込み、戦争が終わったり独立した後も補償をすること無く、復興のスタート地点から回復し難い差をつけた。
    それにとどまらず、今度は自由主義と市場主義の名の下に、貯め込んだ資本をさらに投資して利益を吸い上げ、援助と言う名の投資すらも自らの利益として還流するシステムを作り上げてきた。
    ついにはr>gが決定的となり、自己フィードバックでますます資本が集まるような強固な国際体系が完成しつつある。
    これが、自由と平等を謳う民主主義が国際協調の美名のもとに行ってきたこと。ピケティの母国で、自由の国と見られがちなフランスも、例外ではないど

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    2025年06月07日
  • 平等についての小さな歴史

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    「r>g」で著名な経済学者トマス・ピケティ氏のこれまでの書籍のエッセンスを詰め込んだ一冊。総計3,000ページを250ページに凝縮(が、内容が簡単というわけでない)。
    これまでの「不」平等の歴史や背景を数値で分析・解説。それを以って社会国家・累進税・参加型社会主義・公平な選挙や教育・新植民地主義からの脱却を主張する。本書を読むと、植民地政策や租税方針など、18-20世紀の欧州の悪影響を感じざるを得ず、フランス出身の経済学者だからこそ切れ味鋭く自己批判と推敲が出来ている印象。
    現在の権威主義や保護主義が台頭し、分断が再度進む世界において、氏の論説は社会主義や資本主義と並ぶ大変革であろうが、

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    2025年05月08日
  • マンガで読む 資本とイデオロギー

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    「今日までのあらゆる社会の歴史はさまざまなイデオロギーと正義を追求する闘争の歴史である トマ・ピケティ」

    フランスのとある一族の歴史をなぞりながら、時々の政治の紆余曲折と紐解いた一冊。
    いま各国で見られるアイデンティティの分断に帰結するまで、主に税制に着目して丁寧に解説してくれている。
    全体にかわいらしいイラストとデザインで、楽しく読める。そして、読み終わったとき、表紙のイラストが読む前よりも数段グロテスクに思えた。

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    2025年04月06日
  • 平等についての小さな歴史

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    資本主義の歴史を通して、平等がどのように変わってきたか。
    平等のあり方を示すのは、資産や富ばかりでなく、権力もまた、不平等の原因の一つであること
    奴隷制や植民地支配や解放も、ヨーロッパ諸国の勝手で行われてきたこと
    不平等の是正によって、最も富を得たのは、中産階級であったこと
    奴隷解放のために、奴隷の雇い主に賠償金を払うと言うのも。納得できない部分もありますが、長い歴史の中で、平等や自由という概念が、人類に根付いたのは本当にここ最近のことの様な気もします。世界の分裂が進む今、公平さを求める風潮がむしろ、後退している気もしました。

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    2025年02月23日
  • 平等についての小さな歴史

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    長い歴史を俯瞰したときには、社会の「平等」が進んでいることがデータをもとに説明されている。著者によれば、本書は、過去の複数の著作のサマリとして編纂されており、そのうえで、未来への展望を加えた内容になっているとのこと。たしかに、他書のボリュームを考えると非常に見通しが良くなっており、「比較すれば」とても読みやすい。

    読んでいて、感じたこととして、「社会の平等は善である」が当然の前提として議論が進んでいるが、それは「本音?実際?」の社会のコンセサスといってよいのかと思った。つまり、この「平等は善」について、幅広い実際的なコンセサスを図ること自体について課題を考えなくてよいのかと感じた。もちろん、

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    2025年01月19日
  • マンガで読む 資本とイデオロギー

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    原作未読。
    ヨーロッパとアメリカを中心に経済格差について、ある一族の物語を通して解説している。
    勉強になるが、読むと暗い気持ちになる。

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    2024年07月28日
  • 0番目の患者 逆説の医学史

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    ネタバレ

    面白いノンフィクションを続けて読めてホクホク。科学も医学も、線引きを間違えれば小説のホラー以上に怖くなるやね。
    医学系では知られているのかもしれないけれど、ほとんどが初見の話で新鮮だった。サリドマイドはぞっとするなぁ。

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    2021年04月30日
  • 0番目の患者 逆説の医学史

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    前頭葉を失い、その感情に果たす役割を示したフィニアス・ゲージ、がん化した細胞をえいえいんに培養され続けているヘンリエッタ・ラックスなどいろんなケースの第一号を患者の側から記述。腸チフスの未発症のまま数百人に感染させ続けてきたケースは興味深い。

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    2021年02月20日
  • 平等についての小さな歴史

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    累進課税が貧富の差を少なくして、経済を動かしている。目から鱗。
    増税に反対する目先しか見えていない人たちには余裕が必要かもしれません。

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    2024年10月18日
  • 0番目の患者 逆説の医学史

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    本で紹介される内容は知らない事ばかりで、非常に楽しくまた考えさせられながら読めた。手軽に読めるが、紹介される内容は割とあっさり目。巻末の参考文献も日本語訳が出てるものがほぼないのが寂しい。

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    2021年11月04日
  • 0番目の患者 逆説の医学史

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    「病気を感じる人たちがいるから医学があるわけで、医者がいるから人びとが彼らから自分の病気を教えてもらうのではない」(ジョルジュ・カンギレム『正常と病理』)

    タイトルの「0番目の患者」とは、感染症学で、集団において初めて特定の感染症に罹ったと見なされる患者のことを「ゼロ号患者(ペイシェント・ゼロ)」と称することに由来する。
    著者はこれを拡大解釈して使用しており、ある疾患や医学的な事象が広く社会に知れ渡る際に大きな役割を果たした「第0号患者」たちを19章に渡って取り上げている。
    医学の歴史を語る際、得てして何らかの病気を「発見」した医師が大きく取り上げられる(そして時には、疾患に発見者の医師の名

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    2021年07月22日