相も変わらず、名島先生は強烈な作品を描く。笑いもあり、黒さもあり、ラブコメになったかと思うと、時に哲学的な雰囲気も醸し出し、私ら読み手を翻弄してくる
好みが分かれる漫画家、そう評される理由が何となく理解できるな、この『アーリィは森から出られない。』を読むと。私は好きになれる。でなきゃ、感想は書けない
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ストーリーは一人の少女が不思議な森に迷い込んでしまい、そこの原住民に助けられ、家に帰る手段を探しながらも、友人たちと絆を強め、縁を深めていく、そんな感じ
源流は同じはずなのに個々の宗教の解釈の違いで争い合う異部族、男と女の仲が中々に儘ならぬ事、自分の常識が通じない世界が存在する事を受け入れ、そこのルールを守りながらも、おかしい事には「NO」と言う強さなど、ギャグの中に得も言われぬ深さがあり、名島先生に対する好感度が一話ごとに上がっていく
正直なトコ、私が名島先生の作品で最も好きなのは、『波打ち際のむろみさん』なのだが、一巻に話が収まるように調整されている分、読みやすさはコチラが勝っているかもしれない
ガルムら森の民のデザインにも、名島先生のセンスが光っており、つくづく、人じゃないけど人に近い存在が好きなんだな、と感じる。「好き」を曲げない漫画家の作品はつまらなくならない、それを証明してくれているな
また、一見すると、ただの美少女ながらも、案外、ガンコで突っ走りやすい性格のヒロイン・アーリィに、硬派を気取るガルムが手玉に取られる様は中々に癒されるものがある。アーリィ→←ガルム←クイナの三角関係も見物
もうちょい、じっくり話を続けて欲しかったってキモチがないでもないが、先にも書いた通り、全1巻だからこその完成感があるのも事実だ。ここは、すんなり幕引きを受け止め、次回作に期待するとしよう。できりゃ、週マガにレギュラーとして戻ってきてほしい。読み切りが何度か掲載されてるし、可能性はあるかな?
どの話に、名島先生の良さが詰まっているが、私の好みでオススメを選ぶなら、17話「アイツにゃ敵わない」だ。基本的に、アーリィは強いが、この回では特に場の空気に流されず、喧嘩の雰囲気を有耶無耶にしてしまっている。やっぱり、イイ意味でKYな奴が最強だ。こりゃ、ガルム、尻に敷かれっぱなしになるなァ
この台詞を引用に選んだのは、毎度、芸がないと思われそうだが、「深い」と唸ってしまったので。正直なトコ、作品の質では及ばないけど、名島先生はクール教信者先生と同じタイプかもな、漫画家として。約束を守るのは大事、約束を守る事は必要、けど、時にその約束が好き合っている男と女の仲を進展させず、それどころか裂こうとするのだから皮肉である。夢も呪いと成り得るが、約束も・・・・・・