ブラック企業とホワイト企業のギャップを風刺するギャグ漫画。ニコニコ漫画「このマンガがヤバい!2018年」ノミネート作品。
主人公かすみは新卒でブラック企業に入社し、ブラック企業の文化が当たり前と思ってしまった可哀想な女性である。
かすみは深夜残業の休憩中に屋上で見た流れ星に「有給1日だけください」と
...続きを読む願ったところ、不思議な光に包まれて目が覚めたらホワイト企業「ホワイト製作所」に転職していた。これが転生になる。転生物は現実世界からファンタジー世界に行くことが基本であるが、これは現実世界から現実世界への転生である。ファンタジー世界への転生物でもファンタジー世界に現実のスキルやビジネス感覚を活かす話があるが、そのような話ではない。
本来ならばホワイト企業が当たり前になるものであり、ブラック企業が異常である。ところが、かすみはブラック企業が常識になっており、ホワイト企業の文化に戸惑う。それが笑いになる。漫画だから笑いになるが、現実社会でもブラック企業に就職する人とホワイト企業に就職した人の意識の断絶があるだろう。ブラック企業は目も当てられない。人権がないかのような環境でモチベーションも主体性も思考力も奪われ、延々と下働きをこなしている。
ブラック企業の特徴としては集団主義があるだろう。たとえばブラック企業には朝礼があるが、ホワイト企業にはない。朝礼があれば常にブラック企業ということにはならず、最大の問題は朝礼の内容である。精神論根性論を注入するような朝礼ならば完全にブラック企業である。一方で朝礼への参加が義務になると、フレックス出社が成り立たなくなる。故に朝礼という仕組みがあるだけで、ホワイト企業にはなりにくい。
ホワイト企業は緩くて温い。これがホワイト企業の定義であることは興味深い。厳しい仕事を通して自分を成長させるという価値観もない。そのような価値観を持つこと自体がブラック企業寄りになる。
ブラック企業と言えばワタミである。その創業者の渡辺美樹参院議員(当時)は2018年3月13日の予算委員会の公聴会で、公述人の立正佼成会附属佼成病院過労死遺族に非礼な質問を行い、謝罪を余儀なくされた。「働くことが悪いことであるかのような議論に聞こえてきます。お話を聞いていますと、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえてきます」。
佼成病院過労死遺族は週休7日がいいなどと言っておらず、遺族の言葉を勝手に歪曲した発言である。しかし、週休7日が悪という発想自体がブラック企業的である。多くの起業家の夢はアーリーリタイアである。週休7日が人間にとって幸せな世界である。
ワタミ株式会社は2020年9月15日に高崎労働基準監督署から残業代未払いに関する労働基準法37条違反の是正勧告が出された。本作品のようなホワイト企業感覚を持たなければブラック企業体質は続くだろう。