フィリップ・リーヴのレビュー一覧
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・フィリップ・リーヴ 「アーサー王ここに眠る」(創元推理文庫)は新たなるアーサー王の物語である。時と場 所は500年頃のブリテン島南西部、「お互いが小競り合いをくりかえして(中略)丘陵地帯の小さな王に仕えてい」(28頁)たり、「大王に仕えているものもある。または自分らの長にしか忠誠を誓わず、土地を持たない小さい集団もあって、そいつらはど こでも略奪し、土地を荒らす。」(同前)そんな時代のアーサー王の物語である。これを語るのは吟遊詩人のミルディン、聞き手は主人公の少女グウィナである。ミルディンに言はせれば「アーサーの一団もそんなやつらだ。」(同前)といふわけで、アーサー王がアー サー王伝説の王となる前の物語である。ミルディンは例の魔法使ひマーリンに当たるらしき人物である。
・アーサー王には聖剣がある。それをいかにして手に入れたか。ミルディンの指示によつて水に入つたグウィナは、「剣をくるん でいる油布を引き裂くと(中略)空いた手で剣をさしあげた。剣が水面を割って宙に出るのがわかった。(中略)剣はあまりにも重い。 (中略)なぜ、取ってくれないの。(原文改行)男は取った。」(39頁)アーサーは聖剣を手に入れたのである。その名をカリバー ンといふ。ミルディンは、「こっちの仲間もアイルランド人の家来どもも口にしてる。湖の底に住む妖精の貴婦人が、アーサーに魔法 の剣をさずけたとか……」(42頁)かくしてミルデインの「神神は別世界からこの剣をアーサーにさずけることで、かつてアル トリアスを愛していたように、アーサーを愛しているあかしとするわけだ」(32頁)といふ計画がうまくいき、アーサー王は伝説を歩き始める。以下の物語でも同様のことが行はれるらしいが、別に行はれなくともかまはない。ミルデインの竪琴と歌によつてアー サーは伝説となつていくのである。訳者井辻朱美はこの物語を端的に、「吟遊詩人ミルディンという男が、アーサーという小族長の人生を、 夢と魔法にまぶしてゆく過程を描いたものです。」(「訳者あとがき」343頁)と書く。さう、正にかういふ物語である。アー サーの死の場面、伝説のカムランの戦ひである。モルドレッド卿は出てこない。アーサーの甥のメドロートとの戦ひである。その最期はアーサーとグウィナ、といつてもミルディンにまちがへられてゐるのだが、の2人だけである。ここで例の剣をグウィナは水に返 した。「わたしはずっと後悔している。」(326頁)といふのがグウィンの偽らざる気持ち、なぜなら「この剣に使われた黄金があれ ば、一年は暮らせた。」(同前)本当はかういふ調子なのである。「夢と魔法」を取り払へば何が残るか。現実であらう。小族長の現 実、吟遊詩人の現実、いろいろあつても現実は現実である。現実は現実でしかない。「死の瞬間が終わったとき、その指輪とベルトと長靴と、首にかけていた古い黄金の十字架を外したのは、このわたしの手だ。わたしはそれをもらうだけの働きをした」(328 頁) といふのである。アーサーは彼女によつて葬られ、以後、彼女によつてアーサーは語られてゆく。「アーサー殿の名が物語にしかすぎ ない土地へ馬を進めていった。」(331頁)「手品と物語ばかりかな」(同前)、彼女の言葉はこの物語をよく表してゐる。「小族 長の人生を、夢と魔法にまぶしてゆく」のである。神話、伝説にはその物語の核とになる何らかの出来事がある。この物語はその核とその成長過程を描いたものである。個人的にはこの野卑で荒々しいアーサーより語り手グウィナの方が魅力的であつた。訳者曰く、「本書は素敵な少女小説の一面」を持つ。納得である。 -
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ヘスターがまたトムと一緒になれて良かった。いろんなことがあって、ヘスターはひどいことをしたけど、でもトムのことがずっと好きだった。ヘスターは、強くて、勇敢で、美しい。トムは、優しすぎるし、無茶なこともするけれども、二人がこういうふうな終わりを迎えたことは良かったと思う。
時代は変わっても、人々の暮らしは、その時々に合わせて、続いていく。トムとヘスターの体は土にかえり、レンとセオの子供は成長して、そしてその子供も死んでゆき、移動都市時代の記憶が失われても、命はめぐり、世界はあり続ける。
人間のあやまちは何度でも繰り返され、その度は世界はボロボロになり、いつか人間が住めない世界になるかもしれない。そうなったら、また別の生物が世界を謳歌するかもしれない。万物は流転する。たとえ、この地球がなくなっても、宇宙全体から見れば、それもほんの小さな出来事にしかすぎない。
いつかシュライクが死ぬ時、そして生き返る時、何を見るのだろうか。 -
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ネタバレトムは優しすぎる。
それに対してヘスターは、ヴァレンタインの娘であることに囚われ、過去の裏切りもトムに言えず、自分の冷酷さを持て余しているようにも見える。
トムはすべてを受け入れてヘスターを選ぶのかどうか。ヘスターとレンの関係も修復できるのかどうか。
トムとレンとぺニーロイヤル、ヘスターとシュライク、フィッシュケーキとファン、ゼロとグリーンストームたち。それぞれがバラバラになって、これからどう展開していくのか。
ヘスターには幸せになってもらいたいけれど、トムにはヘスターを選ぶだけの明確な理由が必要なのだろうな、と思う。子はかすがいと言うけれど、この場合、むしろレンがいない方が話は簡単だった気がする。 -
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ネタバレヘスターの嫉妬から、トムとヘスターそれぞれが問題に巻き込まれて、でも、別々の出来事が絡み合った末に大団円。トムが撃たれた時は、どうなることかと冷や冷やした。
トムとヘスターは全然違う。性格も、容姿の美醜も、行動力も。でも違うからこそ、二人は二人でいられるのだろう。いやむしろ、そうであってほしいと思う。トムが結局はヘスターを選んだように、これからもそうであってほしい。
ヴァレンタインの娘であることを受け入れた、ヘスターの強さ。トムを手に入れるために、無茶なこともしてしまう一途さ。ヘスターの性格は、決して良くはないけれど、そういう駄目さに惹かれる。 -
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ネタバレ面白かった。登場人物の名前とか固有名詞とか、覚えにくかったけれど。
人間は裏切る。良い人そうに見えても、良い人ってわけじゃない。それぞれがそれぞれの考えのもとに行動している、と言えばそれまでだけれども。それでも信じて、裏切られて。トム自身も、たくさんの人を殺す結果になり、英雄ではない。それでもヘスターの言葉が救いになる。あんたは英雄じゃないし、あたしは美少女じゃない、でも一緒にいる。
人間である限り、すべての者が悪なのだろう。メドゥーサを生み出した古代人も、それを使って攻撃しようとするクロームも、ヴァレンタインを殺そうとするヘスターも、結局何も出来ずにヘスターを助けるキャサリンも。すべては繋がっている。完全な善人はいない。ただ自分の信念に従うだけ。何が正しいのか? 移動する都市が必然なのか、都市は静止して生きるべきなのか。分からない。ただ、人間は争い続ける。60分戦争によって荒廃した後の世界においてでさえも。 -
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ネタバレ先に上巻に書いちゃったのでコピペ。
待ちに待った新作!
待ちすぎて、これまでのお話し忘れちゃったよ……。
ということで読み始めたのだけど、物語としては間違いなく面白い!
ただ、やっぱり経緯が記憶から薄れていて、読んでいてもどかしい気持ちになること多々。
やっぱり前作から読み返してから読むべきだったか……。
とにかく、このシリーズはヘスターに尽きるわけです。
「移動都市」を読んだ時に、そのキャラクターに撃ち抜かれて、大好きなのです。
物語史上で、最高のヤンデレだと思います。
なので、なんかとても納得感のある終わりでした。
呆気ない感じもしたけど、まあ、海外作品ってそういう終わり方多いし。
未訳のシリーズも沢山あるみたいだけど、
創元さん、映画に便乗して出してくれたりしないかなあ。
とりあえず、もういちど移動都市から読み返してみたいと思います。
あ、映画も観なきゃ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ待ちに待った新作!
待ちすぎて、これまでのお話し忘れちゃったよ……。
ということで読み始めたのだけど、物語としては間違いなく面白い!
ただ、やっぱり経緯が記憶から薄れていて、読んでいてもどかしい気持ちになること多々。
やっぱり前作から読み返してから読むべきだったか……。
とにかく、このシリーズはヘスターに尽きるわけです。
「移動都市」を読んだ時に、そのキャラクターに撃ち抜かれて、大好きなのです。
物語史上で、最高のヤンデレだと思います。
なので、なんかとても納得感のある終わりでした。
呆気ない感じもしたけど、まあ、海外作品ってそういう終わり方多いし。
未訳のシリーズも沢山あるみたいだけど、
創元さん、映画に便乗して出してくれたりしないかなあ。
とりあえず、もういちど移動都市から読み返してみたいと思います。
あ、映画も観なきゃ! -
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『SFが読みたい!2007年版』の書評の中に、「宮崎アニメを感じさせるような作品」といったようなコピーがあったので読んでみたのですが、実際におもしろいです!
確かに雰囲気は、宮崎駿の世界に通じるものがあります。なかでも「天空の城ラピュタ」に近いと思います。
でも、宮崎駿よりももうちょっと硬質でバイオレンスアクションもあるので、そういう意味では大友克洋の作品、とりわけ「スチームボーイ」あたりにも似ています。
ロンドンという名の移動都市、蒸気機関?による動力、飛行船、階級社会とそれが如実に表れた都市構造、といった舞台設定はどことなく19世紀のイギリス風です。
背景の異なる少年と少女が出会い、そして互いにひかれあいながら、世界を支配するために大人(権力者)が手にしようとする兵器を破壊する、そんな二人を心やさしき大人やいわゆる「野蛮」と見なされているような大人たちが支えていく、こういった展開はまさに宮崎ワールド。
いったん文明が崩壊したことからオールドテクがハイテクとなっている辺りも何となく「ナウシカ」や「ラピュタ」風です。ただ、あとがきを読む限りでは、作者本人は、宮崎・大友アニメからの影響については語っていないようですが。
それと、登場してくるメカが凝ってます。そりゃ、そうでしょう、作者はもともとイラストレーターなのですから。背景世界やキャラクターをイラストで描いてから、それを小説化したのではないでしょうか。
そういうわけで、「未来少年コナン」や「天空の城ラピュタ」の頃の宮崎アニメ、あるいは大友アニメが好きなら読んでみる価値はあります。