ドストエーフスキイのレビュー一覧
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ドストエフスキーが生涯をかけて構築した世界最高峰の文学作品、カラマーゾフの兄弟は小説というよりもむしろ思想書に近いかもしれない。19世紀後半の思想的動乱期のロシアを舞台とするこの小説は当時の複雑な社会状況、イデオロギーの対立を描写している。彼の著作の多くはこのような状況におけるロシアの無神論、ニヒリズムと対置して信仰による救済を説くものであるが、その問いは単にイデオロギーとしてだけではなく、人間の心理的本質に投げかけられたのである。今日、思想なき時代において人生の問いは単純な質量的欲求という意味での幸福、不幸にカテゴライズされてしまう傾向にあるが、それは一つのニヒリズムであると言えよう。形而上
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フョードルが殺され、ドミートリイは裁判にかけられ、イヴァンは気が狂い、スメルジャーコフは自殺する。本格的に俗世を生き始めるアリョーシャを除いて、カラマーゾフの一家は破滅した。検事イポリットに対する、ドミートリイの弁護士フェチュコーヴィッチの反論が切れ味鋭くて快感。ドミートリイの「ベルナール」的客観的思考批判、イヴァンの無神論の挫折もたまらない。
『カラマーゾフの兄弟』は本当に濃密だ。これだけのものが詰まって、それでいて一つの統一体でありうるなんて・・・こんなのを作り上げるには、どれだけの忍耐と労力が必要なのだろうか。死ぬまでに一回は読まないと本当にもったいない。 -
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あまりにも語られてしまった小説、あまりにも傑作として名高い小説。そしてこういった場所で紹介するにはあまりにも密度が濃い小説。長いし。そこでここでは作品全体を論じることはやめ、一点だけ、カチェリーナのすばらしさについて述べておくことにしよう。ひたすら献身的に尽くし愛しつづける行為をもって、その高貴さとプライドの高さと清廉潔白さを見せつけることをもって、愛を裏切った相手に復讐を遂げるという、この倒錯!いくえにも逆照射されたこの倒錯は、ただ一言、ブリリアントです。裁判の場でのあの独白のみで、この小説の登場人物としてナンバーワンだと言っていい。それまでわたしのなかで一位の座を占めていたイワンをみごと蹴
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風景的作品で、怖い作品です。3〜20個くらいの先の尖った概念が常に刺さってくる感じです。頭の良い人っていうのは、マルチに全体を進行させ、例えば仕事できる人が同時に沢山を判断して沢山の作業進めてるように、この作品には全瞬間に沢山のしかも恐ろしく鋭い見解が突き刺さってきます。読者を混乱させかねないくらいの登場人物を同時に矛盾なく進行させる上手はトルストイくらいしか類をみないという評価でしょうが、実際ちょっと神とかそういった立場が、世界を同時進行させる様を思い浮かべます。神様って世界を同時進行させてるんですよ。すごいですよね。最近の人は嫌いかもしれないけど、そういう文学の中でもこの人の作品くらいは頑
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カラマーゾフの3兄弟+妾腹の子をめぐる長編の第三巻。この巻は二巻で示唆された「重大な事件」が発生し、ほぼ3分の2はそれに費やされる。事件発覚前のパーティや発覚後の尋問部分がもうドラッグやってるんじゃないかってくらい支離滅裂な部分があって、読者もいろいろ振り回される。残りはアリョーシャの話に戻るが、戻るときに別人物の視点から語られ始めてしばらくこれがどうやったら本編につながるのかわからず戸惑った。全体的にどこに連れていかれるのか予想のつかない巻だった。
残すところ四巻のみとなったが、家族読書会の課題図書を読まねばならぬので、それが終わるまでおあずけ。