西川美樹のレビュー一覧

  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    この本によると、現在の資本主義社会は、リベラル能力資本主義(いわゆる民主主義国家)と政治資本主義(いわゆる権威主義国家)に分けられるそうです。リベラル能力資本主義の長所として、誤った経済政策でも修正しやすい点などが挙げられます。しかし、この体制では富が過度に集中した一部のエリートが、持てる富をさらに増やそうとしたり、税金を減らそうとしたりして、政治に介入することが予測されます。その結果、富を持つエリートに権力が集中し、結局政治資本主義に似た社会になる可能性があるそうです。まさにトランプ大統領の就任式に出席していたIT企業のトップたちを思い出し、この本で語られているような未来が現実になったのでは

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    2025年02月06日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    資本主義と社会主義が想定と違いどういう形で進んだかなど、この50年の結果が素晴らしく冷静に分析、整理されている。手元に置いておきたい本。

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    2023年02月26日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    ナティスの反ユダヤ政策を進めるための法律、いわゆる「ニュルンベルク法」の検討にあたって、アメリカの人種差別的な法律が真剣に検討され、法案に大きな影響を与えたということを論証している。

    たとえば、フレドリクソンの「人種主義の歴史」を読むと、アメリカや南アメリカの人種主義とナティスの人種主義が、比較対比されながら、論じられていて、「人種主義」がナティスだけのものでないことがわかる。そして、この本を読むと、それがより具体的なものとして、理解できる。

    ナティス・ドイツがアメリカから学んだのは、黒人差別の根拠となる具体的な法律だけではない。

    歴史的に、アメリカは先に住んでいたインディアンを殺戮し

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    2022年07月08日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国などの権威主義と言われる国々は、社会主義を経て資本主義化したこともあり、亜流の資本主義国家と見なされることが多い。そのため、民主主義化しない中国経済は(純粋な資本主義ではないため)早晩行き詰まるという主張があったが、鈍化しない中国経済を受けて、この主張も信憑性が疑われ始めてきた。そのような背景もあってか、本書では中国に代表される政治的資本主義と、米国に代表されるリベラル能力資本主義をフラットに比較した上、今後の資本主義のあり方を考察している。

    政治的資本主義では、国民の審判を受けることなく、一部のエリートが国の舵取りを担うため、人権侵害など大多数の国民が反対するであろう施策もやってのける

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    2022年05月25日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国を政治的資本主義と説明してこの部分がメインとして長く書かれている。植民地から共産主義から資本主義となっていった第三国が説明されているが、日本についての記述は驚くほど少ない。
     また、対処法としては、1 中間層の金融資産と住宅資産を優遇税措置をして、富裕層の相続税の増税、2公教育の予算の増額、3軽い市民税を導入して移民への反対を抑える、4政治献金を制限すること
     と、とても分かりやすい対策である。
     教養として読むには面白いが、卒論として使えるかどうかは不明である。

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    2022年02月02日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国が共産主義国家なのか社会主義国家なのか資本主義国家なのか。よく考えてみたら、中国がどう、と言う前に、それぞれの定義も曖昧なままこれまで過ごしてきていた。
    それぞれの定義をある程度分かったとして、中国はどうなのか、と思ったとき、多分10年前ならまだ、それを西欧と比較して、どう、と分析したものは、そう多くなかったのではないか。
    中国の存在感の増大を多くの人が感じているのだろうか。

    現在の社会をどう捉えるか、示唆に富んだ良著。
    もう一度読んでみたいと思う。

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    2021年11月05日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    俯瞰的なものの見方や、共通性とはどんなものかを実例を持ってていねいに解説してくれる。大学生のときにこのような本があったらぜひ読みたかった。もっと経済に興味を持ったことだろう。
    本書では移民についての考え方と「政治的資本主義」が興味深い。

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    2022年03月19日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ブランコ・ミラノヴィッチ(1953年~)は、ベオグラード生まれ、ベオグラード大学博士課程修了、世界銀行調査部主席エコノミスト、カーネギー国際平和基金シニア・アソシエイト等を経て、ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター客員大学院教授。
    本書は、2019年発表の『Capitalism, Alone:The Future of the System that Rules the World』の全訳で2021年に出版された。邦訳書では、『不平等について』(2012年)、『大不平等』(2017年)に次ぐもの。本書は、「エコノミスト」、「フィナンシャルタイムズ」、「フ

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    2022年02月15日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ネタバレ

    21世紀の現在,名目上は共産主義国家も残っているとはいえ,実質的には資本主義しか残っていない。本書では,どんな資本主義体制があるか,そしてそれぞれがどんな特長と問題点を内在しているのか,今現在どうなっているのか,を明らかにしている。学術書の翻訳本ということで読むのは非常に疲れますが,読む価値はあると感じた。
    本書で著者は,「共産主義(革命)」は先進国から遅れた封建主義体制国家を民衆主体の資本主義国家に変更させる役目を担っていた,と主張している。現状の結果を見るとその通り。まさに白眉。大変納得した。

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    2022年01月26日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    結婚を犯罪にする法理

    ヒトラー率いるナチスによるユダヤ人差別やホロコースト(大量虐殺)と聞くと、ドイツという国の特異な現象だと思いがちだ。しかし実際は他国の思想や制度から影響を受けている。

    本書は、ナチスの反ユダヤ立法(ニュルンベルク法)が米国の法制度にヒントを得ていたという、驚くべき事実を明らかにする。

    米国といえば、自由と民主主義の国であり、第2次世界大戦ではナチスドイツと戦い、打ち負かした国だ。その米国の法律がナチスによる人種迫害・抑圧政策の手本になっていたという。

    本書によれば、ナチスが反ユダヤ立法を設計する際、悩みの種が二つあった。一つは、欧州には互いの合意に基づく異人種間の

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    2019年01月11日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ネタバレ

    人種、生い立ち、信念や動機が異なっても、
    お金や利益の話となれば、すんなりと理解する。

    リベラルな能力主義的資本主義:欧米
    政治的(権威主義的)資本主義:中国

    リベラル資本主義
     人的資本の高い労働金持ち=資本金持ち
      同類婚が不平等を強化
      アメリカの裕福な10%が金融資産の90%を保有
      長期収益の資産を多く所有、税金比率が少、参入手数料と管理コストが低い

    資本とスキルの平等を授ける資本主義は可能か?
     労働組合、大衆教育、税金、政府による所得の移転(年金や福祉)が行き詰り
     →中間層を優遇、労働者の資本保有(持ち株会)、相続税、公立教育   
    現実は、
     福祉国家にスキルの低

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    2021年10月14日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    ナチスのニュルンベルク法作成に、アメリカの人種法・移民法が参考となった可能性を示唆する一冊。
    アメリカは異人種区別のパイオニアであり、それをドイツ仕様に差別対象を書き換えることは簡単だったのでしょう。
    入門書とは言えず、少し難い内容です。

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    2018年11月05日