西川美樹のレビュー一覧

  • “女は自衛しろ”というならば――女性による反撃は正当か?

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    読むのに体力が必要だった。

    自己防衛、自分を取り巻く文化、コミュニティ、家族を守るため、取り戻すために、「暴力」を取らざるを得なかった女性3人に関する話であり、それは今も終わらず、継続している話である。
    女性。カースト+女性。民族+女性。

    自己の中には、権理、尊厳が含まれるが、往々にして女性はここが軽んじられている。皆が皆ではないが、時折、そういう人に遭遇するとひどく傷付く私がいる。男性側は、それがわからなかったり、自分にとって都合の良い、言い換えれば「便利」な女性以外は認めない。
    何で性被害者が、加害者より社会的に傷付けられるのか。これも男女逆だったら、結果は違う。性加害者の社会復帰状況は不愉快でたまらない。男の社会的制裁なんて、極めて短期間。

    登場人物皆が皆、完全無欠で優等生なわけでもない。日本、そして東京、都市部に住んでいる私の価値観が標準でもないが、それでも、それぞれの登場人物の思考や行動に目を潜めてしまうことがある。こういう見方こそが、その背後にある原因要因を見ておらず、狭い視野で物事を見てしまっているんだなと気付く。

    吉田さんの解説で、改めて、登場人物を通じて考えたことを思い起こし、私自身を取りまく、これまでと現状を考える。気持ちは暗くなる。

    我々を取り巻く問題課題は、一進一退だから、打破に向けての活動を論理的に表現するなんて難しい。本人だけでなく、関係者、宗教、文化、法律の観点からも、この背景が描かれていて、問題が複層的多面的である事がよくわかる。そして、それは私を取り巻く状況も同じ。

    しんどい。

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    2026年05月03日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    この本によると、現在の資本主義社会は、リベラル能力資本主義(いわゆる民主主義国家)と政治資本主義(いわゆる権威主義国家)に分けられるそうです。リベラル能力資本主義の長所として、誤った経済政策でも修正しやすい点などが挙げられます。しかし、この体制では富が過度に集中した一部のエリートが、持てる富をさらに増やそうとしたり、税金を減らそうとしたりして、政治に介入することが予測されます。その結果、富を持つエリートに権力が集中し、結局政治資本主義に似た社会になる可能性があるそうです。まさにトランプ大統領の就任式に出席していたIT企業のトップたちを思い出し、この本で語られているような未来が現実になったのではないかと感じ、何となく暗い気持ちになりました。その他、エリート層における富、地位の継承(遺伝?)、グローバリゼーションと福祉国家の関係など、日本を含めたリベラル能力資本主義の今そこにある問題を教えてくれる、価値ある著作だと思います。

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    2025年02月06日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    資本主義と社会主義が想定と違いどういう形で進んだかなど、この50年の結果が素晴らしく冷静に分析、整理されている。手元に置いておきたい本。

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    2023年02月26日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    ナティスの反ユダヤ政策を進めるための法律、いわゆる「ニュルンベルク法」の検討にあたって、アメリカの人種差別的な法律が真剣に検討され、法案に大きな影響を与えたということを論証している。

    たとえば、フレドリクソンの「人種主義の歴史」を読むと、アメリカや南アメリカの人種主義とナティスの人種主義が、比較対比されながら、論じられていて、「人種主義」がナティスだけのものでないことがわかる。そして、この本を読むと、それがより具体的なものとして、理解できる。

    ナティス・ドイツがアメリカから学んだのは、黒人差別の根拠となる具体的な法律だけではない。

    歴史的に、アメリカは先に住んでいたインディアンを殺戮し
    ながら、西部を開拓したわけだし、第2次世界大戦前は、白人以外の移民を制限したり、二流市民にしたりといったこともしていて、ナティスは、この分野における先進事例として、アメリカを評価していた。

    また、ルーズベルトのニューディールの経済政策も、従来な自由主義から逸脱しており、さまざまな政策について法的な位置付けが最高裁で争われることになっている。このあたりもナティスの経済政策との類似性から、ナティスの賞賛の対象であった。

    法律の分野においてもっとも驚くべき議論は、大陸法と英米法との違いにかかわることだ。大陸法は法の条文が細かく定義され、法律に具体的に書いてないこと、刑法における推定無罪の思想があるわけだが、ナティスにとっては、その法律の基本的な仕組み自体が気に食わない。

    そうしたなかで、ナティスは米国のおおらかな慣例法的な性格に惹かれていく。法的にあまり細かい規定はなく、さまざまな裁判の判決などを通じて、解釈が積み上がっていくという仕組みをドイツの人種差別などの法のなかに取り入れていく。

    これが、きわめて恣意的な司法制度、裁判を可能にしていくのだ。

    反全体主義の経済学者で、アメリカに移住したハイエクの議論によると、人間が人工的に法を作っていく大陸法よりも、自然な法秩序が慣例の中から生み出されていく英米型の法律のほうが優れているということだったのだが、ここでおきているのは、その慣例法がこういう形で悪用されるということだ。

    さらに、ナティス内部者は、ヒトラーの命令に単純に従うのではなく、「ヒトラーだったらどう考えるか」ということを自ら考え実行することを求められていたという説明は、これまでナティス関係の本で読んできたものとリンクづけられる指摘なのだが、あらためて法律体系との関係でその理解が深まった気がする。

    実は、タイトルほど衝撃的な本ではなく、ある程度、この分野を読んだあとでは、「だろうな」という話しなのだが、これまでいろいろ学んできたものが、法律という観点から議論され、つながっていく感じがあった。

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    2022年07月08日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国などの権威主義と言われる国々は、社会主義を経て資本主義化したこともあり、亜流の資本主義国家と見なされることが多い。そのため、民主主義化しない中国経済は(純粋な資本主義ではないため)早晩行き詰まるという主張があったが、鈍化しない中国経済を受けて、この主張も信憑性が疑われ始めてきた。そのような背景もあってか、本書では中国に代表される政治的資本主義と、米国に代表されるリベラル能力資本主義をフラットに比較した上、今後の資本主義のあり方を考察している。

    政治的資本主義では、国民の審判を受けることなく、一部のエリートが国の舵取りを担うため、人権侵害など大多数の国民が反対するであろう施策もやってのけるし、方向転換も困難。その代わり、高い成長率を維持し続けることで、国民に現体制の利点を示し続ける必要がある(利点を示すのが難しくなると、情報統制で隠そうとするのかもしれない)。一方、リベラル能力資本主義でも、一部の富裕層が献金で政治介入するため、彼らに不都合な施策は実施されないし、富裕層は資本と労働の双方で高い所得を得るため、富の偏在は進む一方となる。
    このようにどちらも完璧ではないが、本書では、それでも資本主義よりマシな制度は見当たらないということで、所得の不平等と永続的なエリート層の形成を打破した次なる資本主義として、民衆資本主義を示している。


    政治的資本主義に対する客観的な分析も、問題はありながらも資本主義の枠組みの中で調整していくしかないという結論も、地に足がついてて納得感があった。
    また、共産主義の歴史的な位置付け等、目新しい視点もあった。共産主義を最終ゴールと考えるマルクス主義者でも、ただの回り道と考えるリベラル派でもなく、本書では、封建主義から資本主義に移行する過渡期として共産主義を捉えている。確かに、社会の発展経路は一律ではない(西洋諸国と同じ経路で、他国も発展するとは限らない)という前提で歴史を振り返れば、その通りかもしれない。

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    2022年05月25日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国を政治的資本主義と説明してこの部分がメインとして長く書かれている。植民地から共産主義から資本主義となっていった第三国が説明されているが、日本についての記述は驚くほど少ない。
     また、対処法としては、1 中間層の金融資産と住宅資産を優遇税措置をして、富裕層の相続税の増税、2公教育の予算の増額、3軽い市民税を導入して移民への反対を抑える、4政治献金を制限すること
     と、とても分かりやすい対策である。
     教養として読むには面白いが、卒論として使えるかどうかは不明である。

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    2022年02月02日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    中国が共産主義国家なのか社会主義国家なのか資本主義国家なのか。よく考えてみたら、中国がどう、と言う前に、それぞれの定義も曖昧なままこれまで過ごしてきていた。
    それぞれの定義をある程度分かったとして、中国はどうなのか、と思ったとき、多分10年前ならまだ、それを西欧と比較して、どう、と分析したものは、そう多くなかったのではないか。
    中国の存在感の増大を多くの人が感じているのだろうか。

    現在の社会をどう捉えるか、示唆に富んだ良著。
    もう一度読んでみたいと思う。

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    2021年11月05日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    タイトルだけを見ると資本主義礼賛の書籍かと思ったが、良い意味で裏切られた。
    データセットが充実しているリベラル資本主義の現状分析は本当に見事。格差拡大のメカニズムをこれでもかと提示してくれる。ここの分析だけでも読んでおいて損はないと思う。
    また中国をはじめとする政治的資本主義が構造的に腐敗を内包するという指摘も素晴らしい。腐敗=悪ではなく、システムの間を埋める機能という捉え方は、ありとあらゆる組織で応用が効く話だと思う。
    ただ、グローバル化の帰結として、資本主義のオルタナティブに対して悲観的な見方になっているのがちょっと解せない。それ自体は予測として充分成立するが、そもそも線形史観が過ぎるというか、何か事業性評価の将来予測を聞いてるような印象を受けてしまった。現状分析が素晴らしかっただけにここは少し肩透かしだった。
    それを差し引いても読んでおいてまず損はない本であると思う。

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    2026年09月14日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    俯瞰的なものの見方や、共通性とはどんなものかを実例を持ってていねいに解説してくれる。大学生のときにこのような本があったらぜひ読みたかった。もっと経済に興味を持ったことだろう。
    本書では移民についての考え方と「政治的資本主義」が興味深い。

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    2022年03月19日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ブランコ・ミラノヴィッチ(1953年~)は、ベオグラード生まれ、ベオグラード大学博士課程修了、世界銀行調査部主席エコノミスト、カーネギー国際平和基金シニア・アソシエイト等を経て、ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター客員大学院教授。
    本書は、2019年発表の『Capitalism, Alone:The Future of the System that Rules the World』の全訳で2021年に出版された。邦訳書では、『不平等について』(2012年)、『大不平等』(2017年)に次ぐもの。本書は、「エコノミスト」、「フィナンシャルタイムズ」、「フォーリン・アフェアーズ」等の雑誌・新聞でベストブックに選ばれている。
    私は以前より、世界に広がる格差の元凶である資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、トマ・ピケティ、斎藤幸平、広井良典等の多数の著書を読んできたが、本書を手に取ったのもその流れによる。
    本書の概要は概ね以下である。
    ◆資本主義は、我々の世界に、営利を目的とするという、共通の価値観・ルールを生み出すことに成功した、最も安定した社会経済システムである。現在の世界の資本主義の体制は、欧米諸国の「リベラル能力資本主義」と中国に代表される「政治的資本主義」に分けられる。「リベラル能力資本主義」は、民主主義と法の支配に結びつき、技術革新を奨励し社会的移動性をもたらすことで経済の発展を促し、かつ万人に概ね平等の機会を与えると考えられている。一方、「政治的資本主義」は、政治的エリート層を惹きつけるとともに、高い成長率を約束するかに見える。
    ◆「リベラル能力資本主義」は、第二次世界大戦後の「社会民主主義的な資本主義」を支える「4つの柱」となっていた、交渉力の強い労働組合、教育の大衆化、累進性の高い税負担、政府による大規模な所得移転が、次第に機能しなくなった結果生じ、不平等を不断に拡大させることとなった。
    ◆中国などの後進の被植民地国の多くが社会主義革命を起こしたのは、教条的なマルクス主義が主張するような資本主義の矛盾が原因ではなく、地主に代表される旧社会勢力を一掃し、かつ、外国資本による支配を覆すことができる、唯一の組織化された力が共産主義勢力であったためで、“資本主義的な経済発展を実現するために”社会主義革命が必要だった。こうして成立した「政治的資本主義」の特徴は、テクノクラート的な官僚システムの存在、そのシステムが邪魔されないよう法の支配が欠如していること、民間部門を統制できる国家の存在の3つであり、それ故に深刻な腐敗が生じやすいという矛盾を持つ。
    ◆「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」で進行する不平等は、グローバル・チェーンの進化、即ち、モノと資本の移動が自由になり、先進国の工場が簡単に途上国に移転するようになったこと、情報通信技術の発展によって、事細かに国際分業することが可能になったことの2点を通じて有機的に結びついている。
    ◆様々な問題を孕む超商業化資本主義社会だが、これに代わる社会経済システムはない。資本主義に組み込まれた競争的かつ物質欲的精神を捨てれば、結局は所得が減り、貧困が拡大し、技術進歩が減速・逆転する。物質欲的精神を捨ててもなおかつそれらが維持できるなどと思うのは無理である。
    ◆「リベラル能力資本主義」がいかに進化していくかについては、資本所得の集中がより少なく、所得の不平等がより縮小し、世代間の所得の移動性がより高くなることにより、「民衆資本主義」に移行できるか否かにかかっている。仮に、「リベラル能力資本主義」が政治的な力と結びつき、金権主義的なものになれば、「政治的資本主義」に似通ったものとなるだろう。

    本書の特徴は、何より、中国の社会経済システムを、日米欧諸国の「まともな資本主義」に対する「異形の資本主義」とは位置付けずに、その歴史に基づいた一つのシステムとして分析し、更に、日米欧諸国の「リベラル能力資本主義」でさえ、格差・不平等が拡大し、富裕層が政治的な力と結びつけば、そうしたシステムと似たものになると警鐘をならしていることだろう。
    また、私が問題意識を持っている格差の是正については、「リベラル能力資本主義」から「民衆資本主義」への移行がポイントとしており、この点は同意する。(ただ、斎藤幸平氏が論じている地球環境の持続可能性を危うくする(資本主義と不可分の)物質欲的精神については否定していない)
    資本主義の未来(ポスト資本主義)を考える上では一読の価値ある一冊といえる。
    (2022年2月了)

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    2022年02月15日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ネタバレ

    21世紀の現在,名目上は共産主義国家も残っているとはいえ,実質的には資本主義しか残っていない。本書では,どんな資本主義体制があるか,そしてそれぞれがどんな特長と問題点を内在しているのか,今現在どうなっているのか,を明らかにしている。学術書の翻訳本ということで読むのは非常に疲れますが,読む価値はあると感じた。
    本書で著者は,「共産主義(革命)」は先進国から遅れた封建主義体制国家を民衆主体の資本主義国家に変更させる役目を担っていた,と主張している。現状の結果を見るとその通り。まさに白眉。大変納得した。

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    2022年01月26日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    結婚を犯罪にする法理

    ヒトラー率いるナチスによるユダヤ人差別やホロコースト(大量虐殺)と聞くと、ドイツという国の特異な現象だと思いがちだ。しかし実際は他国の思想や制度から影響を受けている。

    本書は、ナチスの反ユダヤ立法(ニュルンベルク法)が米国の法制度にヒントを得ていたという、驚くべき事実を明らかにする。

    米国といえば、自由と民主主義の国であり、第2次世界大戦ではナチスドイツと戦い、打ち負かした国だ。その米国の法律がナチスによる人種迫害・抑圧政策の手本になっていたという。

    本書によれば、ナチスが反ユダヤ立法を設計する際、悩みの種が二つあった。一つは、欧州には互いの合意に基づく異人種間の結婚を犯罪とする法理が存在しなかったこと。もう一つは「ユダヤ人」の科学的な定義が存在しなかったことである。

    ナチスはこの二つの難題に対する解決を米国に発見する。

    米国では多くの州に人種法が存在した。たとえばメリーランド州では、白人と黒人との間、白人とマレー人との間、黒人とマレー人との間などの結婚を禁止し、無効とした。違反者は破廉恥罪を犯したものとされ、禁固刑に処された。

    また、米国の州法では、日本からの移民を懸念するにもかかわらず、日本人ではなくモンゴル人という言葉を使うなど、科学的に正しい人種の定義がなくても、実効力ある法制度をやりくりしていた。

    1934年、ナチスドイツのギュルトナー法相や官僚たちは、反ユダヤ立法の計画を練った会議で、こうした米国の法制度について入念に準備した報告書をもとに、詳細な議論を交わした。とりわけ熱心だったのは、最も過激なナチ党員たちだったという。

    ヒトラーも著書『わが闘争』の中で、米国こそが健全な人種秩序の確立に向けて前進している「唯一の国家」だとほめそやしている。

    ナチスがモデルとした米国の人種法。その背景に移民問題があったことを考えると、現代にも重い教訓となるだろう。

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    2019年01月11日
  • ヤバい保険の経済学――〈選択問題〉で、なぜいつもコケてしまうのか?

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    保険の仕組みがどのようになっており、そのやばさを説明した一冊。なぜトランプがオバマケアを白紙に戻したのかが少し理解できた。オバマケアは全国民に保険加入を義務化し、保険のコストを押し下げ相互扶助を目指した施策である。一方で保険の仕組みから、健康である人ほど損をするように設計されてしまう。医療費が高い米国ではその影響は大きく、また自由を謳う国民性が邪魔をしてオバマケアはリセットされてしまう。保険とは入ってほしい人ほど健康で不必要なものであり、不健康な人ほど必要だが、保険会社にとっては入ってほしくない。そんなあべこべな商品であるため、とても商品設計が難しい。利益が出るようにいろいろな情報を集めようとするが、限界があり、情報格差を埋めるために損な役回りをする人がいないと成立しないのは難しさをより際立たせているのだなと学んだ。

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    2026年07月12日
  • “女は自衛しろ”というならば――女性による反撃は正当か?

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    女性蔑視に対処するために、女性は暴力を手にして良いのか。

    状況の違う、三つの社会でそれを観察する。

    一つ目。マチズムのアメリカ。男性優位の社会。
    建国のころかと思ったらほんのついこないだの南部のある州らしくて、本当に驚いた。今だにかと思う。
    女性の権利より、男性のプライドを優先する社会と司法。
    麻薬が絡んできたり単純に善悪で割り切れない。

    二つ目。カースト制インド。不可触民の女性。
    どこぞの宗教もそうだが、本当に、女性を対等なヒトとして扱わない文化を是とする世界がある。それに抗うべく、竹棒を持ち、男性を打擲する女性が立ち上がった。
    それが万を擁する活動になる。
    なにが凄いって、ただの暴力であれば当然男性の方が圧倒的に優位である。それに暴力だけで立ち向かうのは愚策だと思うのだが、意外に男性側がしゅんとしてしまうのは何。マッチョ米国とも違う、ただの権利の享受者であったということか。
    もっとも、活動が拡大することで足元を見失い、何が正しいかが掌からこぼれていってしまう。
    権利のために戦うというより、暴れることで得た解放感を手放さないようにより暴力に頼っているような感じがした。

    三つ目。シリア。クルド。イスラム。
    根本的に問題設定が違う気がした。

    日本人女性作家の解説が、一番ムカついた。

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    2026年06月16日
  • ヤバい保険の経済学――〈選択問題〉で、なぜいつもコケてしまうのか?

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    保険というのは、加入する側にとっても、商品を提供する側にとっても「選択」が必須になるビジネスだという主張。
    確かに。

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    2026年03月31日
  • 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

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    ネタバレ

    人種、生い立ち、信念や動機が異なっても、
    お金や利益の話となれば、すんなりと理解する。

    リベラルな能力主義的資本主義:欧米
    政治的(権威主義的)資本主義:中国

    リベラル資本主義
     人的資本の高い労働金持ち=資本金持ち
      同類婚が不平等を強化
      アメリカの裕福な10%が金融資産の90%を保有
      長期収益の資産を多く所有、税金比率が少、参入手数料と管理コストが低い

    資本とスキルの平等を授ける資本主義は可能か?
     労働組合、大衆教育、税金、政府による所得の移転(年金や福祉)が行き詰り
     →中間層を優遇、労働者の資本保有(持ち株会)、相続税、公立教育   
    現実は、
     福祉国家にスキルの低い移民が集まる →政府サービスからの金持ちの撤退
     超富裕層からの政治献金 →優位性の保証
     高額な私立教育が優位に 高い授業料で最良の教授を集める →公教育離れ
     →技術進歩が続く限り、富や教育に基づく部外者に開かれた世界

    共産主義
     封建制から資本主義への移行システムが共産主義
      地主の締め付け、外国による支配を覆す
      貧しい国は市場のインセンティブが欠如し 中央計画の利点から恩恵を受ける

    中国=資本主義
     国政企業20%(1998年は50%)
     資本主義=民間の生産手段+賃金労働者+生産や価格設定の決断が分散化

     鄧小平 鳥を広々としたかごに入れておく
     資本家の利害が支配的な力を持つことを許さず、政策に従い民間を統制
     法ではなく、恣意的な意思決定 無法地帯が組み込まれたシステムという矛盾
     不平等の全国拡大 たたき上げの資本家階級の台頭

    政治的資本主義の特徴
     1.優秀な官僚 2.法の支配の欠如 3.国家の自立性 
    2つの矛盾
     1.官僚の管理能力と自由裁量 2.法支配の欠如による腐敗とシステム正当化
     政治を経済と切り離し、腐敗の少ない政権を維持できそうな国はほとんどない?

    グローバリゼーション=資産の移動+労働の移動
     市民権の市場取引  ギリシャ 25万ユーロ、イギリス 200万ポンド
     
    第二のグローバリゼーション 生産の移動 ・・制度の重要性 技術の移転
    第三の・・・              ・・労働の移動からの解放? 

    原子化と商品化 モノやサービス何でも買える 自分の時間も含め何でも売れる
     自身が経済媒体=商品に

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    2021年10月14日
  • ヒトラーのモデルはアメリカだった――法システムによる「純血の追求」

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    ナチスのニュルンベルク法作成に、アメリカの人種法・移民法が参考となった可能性を示唆する一冊。
    アメリカは異人種区別のパイオニアであり、それをドイツ仕様に差別対象を書き換えることは簡単だったのでしょう。
    入門書とは言えず、少し難い内容です。

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    2018年11月05日