西川美樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本によると、現在の資本主義社会は、リベラル能力資本主義(いわゆる民主主義国家)と政治資本主義(いわゆる権威主義国家)に分けられるそうです。リベラル能力資本主義の長所として、誤った経済政策でも修正しやすい点などが挙げられます。しかし、この体制では富が過度に集中した一部のエリートが、持てる富をさらに増やそうとしたり、税金を減らそうとしたりして、政治に介入することが予測されます。その結果、富を持つエリートに権力が集中し、結局政治資本主義に似た社会になる可能性があるそうです。まさにトランプ大統領の就任式に出席していたIT企業のトップたちを思い出し、この本で語られているような未来が現実になったのでは
-
-
Posted by ブクログ
ナティスの反ユダヤ政策を進めるための法律、いわゆる「ニュルンベルク法」の検討にあたって、アメリカの人種差別的な法律が真剣に検討され、法案に大きな影響を与えたということを論証している。
たとえば、フレドリクソンの「人種主義の歴史」を読むと、アメリカや南アメリカの人種主義とナティスの人種主義が、比較対比されながら、論じられていて、「人種主義」がナティスだけのものでないことがわかる。そして、この本を読むと、それがより具体的なものとして、理解できる。
ナティス・ドイツがアメリカから学んだのは、黒人差別の根拠となる具体的な法律だけではない。
歴史的に、アメリカは先に住んでいたインディアンを殺戮し
-
Posted by ブクログ
中国などの権威主義と言われる国々は、社会主義を経て資本主義化したこともあり、亜流の資本主義国家と見なされることが多い。そのため、民主主義化しない中国経済は(純粋な資本主義ではないため)早晩行き詰まるという主張があったが、鈍化しない中国経済を受けて、この主張も信憑性が疑われ始めてきた。そのような背景もあってか、本書では中国に代表される政治的資本主義と、米国に代表されるリベラル能力資本主義をフラットに比較した上、今後の資本主義のあり方を考察している。
政治的資本主義では、国民の審判を受けることなく、一部のエリートが国の舵取りを担うため、人権侵害など大多数の国民が反対するであろう施策もやってのける -
-
-
-
Posted by ブクログ
ブランコ・ミラノヴィッチ(1953年~)は、ベオグラード生まれ、ベオグラード大学博士課程修了、世界銀行調査部主席エコノミスト、カーネギー国際平和基金シニア・アソシエイト等を経て、ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター客員大学院教授。
本書は、2019年発表の『Capitalism, Alone:The Future of the System that Rules the World』の全訳で2021年に出版された。邦訳書では、『不平等について』(2012年)、『大不平等』(2017年)に次ぐもの。本書は、「エコノミスト」、「フィナンシャルタイムズ」、「フ -
-
Posted by ブクログ
結婚を犯罪にする法理
ヒトラー率いるナチスによるユダヤ人差別やホロコースト(大量虐殺)と聞くと、ドイツという国の特異な現象だと思いがちだ。しかし実際は他国の思想や制度から影響を受けている。
本書は、ナチスの反ユダヤ立法(ニュルンベルク法)が米国の法制度にヒントを得ていたという、驚くべき事実を明らかにする。
米国といえば、自由と民主主義の国であり、第2次世界大戦ではナチスドイツと戦い、打ち負かした国だ。その米国の法律がナチスによる人種迫害・抑圧政策の手本になっていたという。
本書によれば、ナチスが反ユダヤ立法を設計する際、悩みの種が二つあった。一つは、欧州には互いの合意に基づく異人種間の -
Posted by ブクログ
ネタバレ人種、生い立ち、信念や動機が異なっても、
お金や利益の話となれば、すんなりと理解する。
リベラルな能力主義的資本主義:欧米
政治的(権威主義的)資本主義:中国
リベラル資本主義
人的資本の高い労働金持ち=資本金持ち
同類婚が不平等を強化
アメリカの裕福な10%が金融資産の90%を保有
長期収益の資産を多く所有、税金比率が少、参入手数料と管理コストが低い
資本とスキルの平等を授ける資本主義は可能か?
労働組合、大衆教育、税金、政府による所得の移転(年金や福祉)が行き詰り
→中間層を優遇、労働者の資本保有(持ち株会)、相続税、公立教育
現実は、
福祉国家にスキルの低