水野聡のレビュー一覧
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前に岩波の風姿花伝を読んだときは何言ってるか分からなすぎてコメント書けなかったが、本書でようやく。上手は下手の手本、下手は上手の手本…謙虚にストイックに上達を目指し続ける、人生を通した芸事への向き合い方の指南書。古典的名著だけに、現代においても何にでも当てはまる。現代との差分かなと思ったのは、インターネットの普及や移動手段の発展などで単時間辺りにアクセスできる情報量や経験の多様性が爆増したので、外部環境の変化に対して思考するシチュエーションが増えたことか。それだけにこういう東洋的な内省思考する時間が相対的に減っているのから、現代人に改めて刺さるのかも。
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ネタバレ世阿弥が約20年かけて書いたという本を現代語にしたもので、大変読みやすいです。
日本人にとっての美とはどういったものなのかわかりやすく書かれており、
能に関わらずお芝居など芸術になんらかの形で関わる人には胸に響くものがあるのでは、と思います。
現代ではあまり使われることが少なくなった「幽玄」や、「花」の言葉の意味を考えるきっかけになります。
感情に訴えたり闇雲な考えを押し付けたりという内容ではなく、冷静な見方で理論的に語られているので理解しやすいです。
花の時期を過ぎた後どうするか、などについてもきっぱり語られています。
「秘すれば花」。珍しいから素晴らしいと感動する。
相手の期待を良い意味 -
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ネタバレ能の世阿弥がしるした書。能の心得について深い洞察に基づき記載されている。伝統芸能だけあり、一つ一つが非常に深く、その片鱗が垣間見れてとてもおもしろい。いかに花を出すか。一つ一つの違いを演じ分けるかが非常に難しそう。能をみにいきたくなった。面白さを極めんがための徹底的な分析、計算がされており感銘を受けました。
<その他学んだ事項など>
・幼い子に芸を教える際は、心のままにやらせてみることが大事。事細かによい、わるいと教えると、やる気を失い、芸そのものが止まってしまう事がある。
・24,5は花が咲きだし、ベテランに勝つこともあるが、それは本当の花ではない。それで得意になってしまうと後々仇となる。も -
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いつかは日本の伝統芸能である「能」に触れたいと思っていた。ただ、順を追ってそこに辿り着くことが大切である気がして、特に風姿花伝を読むことにも焦ってはいなかった。
読書会で扱った松岡正剛『日本文化の核心』を読んでいく中で、「まねび」と「まなび」を扱っている章があり、どうやら「学び」の本質は世阿弥が説いているらしい。「ものまね」から派生する「まねび」そして、「まなび」。つまり遡ると「学び」とは「物真似」であると。神や霊など目に見えないものを真似る。どうやらそれが「能」の世界らしい。今の自分は「学び」を生き方の中心に置いている。これは早めに読まねば。
手に取った本書は、現代語訳も読みやすく、さら -
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この本は世阿弥の書いた能の稽古、演じる際の心構えやポイントをまとめたもので、現在におけるビジネス書に近いと思う。内容で形而上学的なものはあまりなく、具体的に書かれ想像しやすくなっている。
私は、①本質をつかみ、本質から外れたことをしないこと②観客本位に考え、観客の嗜好に合わせること③珍しさがあること④慢心せずに稽古に励むこと⑤タイミングをつかむこと
という点を世阿弥が大切にしたと感じた。以上挙げた点では漏れがあるとは思うが、そこはご容赦いただきたい。印象に残った言葉として、「秘すれば花、秘せねば花なるべからず」がある。切り札は秘密にしてこそ切り札なのである。
600年ほど前に書かれた能楽 -
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幽玄。言葉では表せない、奥深く微妙にして情緒に富むありさま。▼花は四季折々に咲く。時節を得ているからこそ、新鮮な感動を呼ぶ。能もその場の機を大切にすること。▼是非の初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。▼能は、枝葉も少なく、老木おいきになっても、花は散らずに残る。 ▼舞台上の自分が他人からどう見えているか意識せよ。離見の見。世阿弥『風姿花伝』1400
※観世座。興福寺。
※観阿弥。足利義満の庇護。
※世阿弥。『風姿花伝』『花鏡』
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病に臥せる源頼光(らいこう)のもとに蜘蛛の化物がやってきて、無数の糸を吐いて、頼光をがんじがらめに -
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世阿弥は、室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師で、父の観阿弥とともに猿楽(能)を大成し、『高砂』、『井筒』、『西行桜』等の作品のほか、多数の能芸論書を著した理論家でもあり、世界の芸術史上でも稀な天才と評される。
本書は、父の観阿弥から口伝で教示された内容を書き記したもので、第七・別紙口伝に「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」と記されている通りの一子相伝の秘伝書であり、明治までは観世家・今春家に秘蔵され、一般の目に触れることはなかったが、明治42年に写本が発見され、『世阿弥十六部集』として発刊されたことにより、一般に知られることになった。
本書は七篇で構成され、各篇では以下が述べられている -
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一子相伝の書と聞くと門外不出の秘伝書なのかとどきどきわくわく感が募ってきそうだが、風姿花伝は世間一般でも十分通用する、というか人としての資質として誰もが備えておくべき重要ごとをコンパクトにわかりやすく教え説いてくれている書だと、初めて読んでの率直な感想である。
第一の「年来稽古條々」は子育てや教育に通じる。
第三の「問答條々」は世阿弥(観阿弥)の人柄を知ることができる。
そして、第七の「別紙口伝」はものごとの本質に迫る部分。
とくに印象に残ったのが、「秘する花を知ること」「因果の花を知ること」
この書が世間に出てよかったと、私自身は読んでみてそういう感想を持った。