J M クッツェーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ作者は、南アフリカ生まれの白人。この作品で、2度目のブッカー賞を受賞。
前に読んだ『絵葉書きにされた少年』で、クッツェーの作品が何度か引用されていたので、興味を持って読んでみた。
読んでみると、話は重い。南アの社会的問題に直面させされる。
アパルトヘイトが終わり、民主化の道を開いたマンデラ政権。様々な人種が共存できる「虹の国」として新しい出発をきった南アだったが、長年抑圧されてきた黒人と白人の共存はむろん一朝一夕で実現できるものではない。犯罪率が急増し、白人への強奪、レイプなどが日常茶飯事となり、南アを去る白人も増えた。
話の展開は、一人の大学教授が、ある時女子学生と親密な中になり、それが -
Posted by ブクログ
ネタバレインテリ元モテ男だった主人公の没落。
時代の変遷についていけない古ぼけた文学者は、継続した人間関係を築くことができず、女を買っては消費する日々。
絶対に自分の考えを曲げず、他人の意見に耳を貸さず、大学を追放されるところまでは面白く読めた。
娘の農園へ住み着いてからはとにかく重い...
動物愛護ボランティアの夫婦をせせら笑い、ボランティア女性の容姿を痛烈に批判しながらも結局セックスしちゃう。
黒人コミュニティを下に見て説教じみた話をするわりに、隣人が仕組んだと思われるレイプについて核心をついた言葉は言えない。
元妻にも娘と自分が受けた襲撃についてしっかり話さない。
どの局面でも主人公は自己 -
Posted by ブクログ
「イエスの幼子時代」の続編.ちなみに第三作「イエスの死」も刊行済みらしい(未訳).
相変わらず不思議なトーンで淡々と話は進むのだが,今回は殺人事件も起こる.犯人ドミトリーは,名前からしてカラマーゾフ風なのだが,人物もやっぱりカラマーゾフ風で,非常に濃い.彼の思考回路は独特なのだが,よくよく考えてみれば登場人物のダービド,イネスを始め,全員が思考に特徴があり癖が強い.決してお互いを理解することはない.一見,唯一まともに見えたシモンさえも,なんだかおかしい.
そんなすれ違いが続くなか,シモンの空回りが徐々に目立ってきて,物語は唐突に終わる.
この先,一体この疑似家族はどうなってゆくのだろうか? -
Posted by ブクログ
何を言いたいのか私にはよく掴めなかった。
ただ、ページが進むにつれて、シモンが愛おしくなる。
ダビードやイネスに冷たくされながらも、ダビードの為に、一所懸命になる姿に応援したくなる。
シモン、イネス、ダビードは疑似家族。でも、シモンはダビードの為に、父親としての任を果たそうと頑張る。
イネスのように、自身が打ち込める何かを見つけるわけではないし、ダビードのように明晰な感じでもない。
それでも、ダビードのために一所懸命な姿は、世の中の親の一般的な姿ではないかと思ったし、それで、いいんじゃないのかなって思った。
特筆すべき何かがなくても、誰かの為に一所懸命になる、愛を注ぐ。それができたら、い -
Posted by ブクログ
読みやすくはあるが、扱う主題は難しい。
都会で教授をしている二度の離婚経験のあるおじさんが、性欲を抑えきれず教え子に手を出して、職を追われ、田舎の娘のところに行き着き、そこから展開していくストーリー。
南アフリカの白人と黒人の間のわだかまり、治安の悪さ、強姦などといった時代背景がある中、娘とは事件後でも仲良くはあるが、意見は全く食い違う。
相手の意見を聞かずに、自分の意見を通し、辞職に追い込まれ、その後娘に自分の意見を通そうとする。かつて物を教える立場であったように。
一度だけでは本の一部分しか理解には及ばない自分の読解力の無さを嘆きたくなるが、ブッカー賞受賞作なだけあり、読み応えはある。