張愛玲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1931年から‘45年、日中戦争で混乱した中国で上海を舞台にした男女の話で、お互いのすれ違いから恋愛が成就できなかった物語である。
人間は表に現す行動以上にその内側に何倍もの思考や意識や思惑を秘めている。この作品は心の描写も絶妙で、立場も性格も異なる人が織りなす関係が丁寧に表現されている。翻訳も手伝い、張愛玲の細やかで滑らかな文章は鮮やかで、彼女が類い稀な作家であることを痛感させる。
物語は上海で姉に代わって祖母と母と四人の兄妹を扶養する曼楨と、南京で妾宅生活をする毛皮商の父に置き去りにされた母と義姉と甥の面倒を見なければならない長男世鈞の二人を中心に展開する。曼楨は若いのに強い意志を持ち -
Posted by ブクログ
最近ハヤカワ文庫から出た『半生の絆』の内容が少し気になっていたので、その前に本書を手にとってみた。中華圏ではとても有名な作家(魯迅と並ぶとも)だけど、日本ではほぼ知られていないとのこと。舞台は約80年前の戦中の上海や香港。表題作の傾城の恋/封鎖どちらとも戦時下での恋愛結婚の話で、それらに対する価値観も出てくる。そこで交流のあった中華圏の友人の顔が浮かんだ。今現在の中華圏でも女性から男性に求められる結婚の条件として「家はある?車はある?お金はある?」が多いと言っていたのを思い出した。" 西洋式婚姻の愛情は自分で創り出すものだが、中国式婚姻の愛情は身分が創り出すものである。"と