デイヴィッドベニオフのレビュー一覧
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【あらすじ】
独ソ戦下のレニングラード。ドイツ軍に完全包囲された中で人々は飢餓に苦しんでいた。
ユダヤ人で皮肉屋のレフと長身の美青年だがお調子者のコーリャ。デコボココンビの2人は大佐の命令で1ダースの卵を1週間以内に探す羽目になってしまった。
荒廃したレニングラードを舞台に2人の冒険が始まる。
【感想】
冒頭から最後の最後までずっと面白い傑作小説。
主人公レフのひねくれ者で小心者な所が等身大でとても良い。一方、コーリャの完璧超人でありながら好色でお調子者な所はアメリカンヒーロー的だ。
2人の掛け合いの面白さで盛り上げつつも、冒険の中身はえげつない。
人肉食夫婦に地雷犬、慰み者にされている少女など、戦争の悲惨さを容赦なく叩きつけてくる。
戦争というものは辛く苦しく、そしてこの上なく滑稽で可笑しい。
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Posted by ブクログ
レニングラード、スターリングラード、「ソビエト連邦」を作った「革命家と独裁者」の名前を付けた二つの町と、革命、その後の戦争。
レニングラードはロシア帝国時代ピョートル大帝(一世)により建設された帝都で文学や音楽の豊かな文化都市。
大帝にちなんでサンクトペテルブルグと呼ばれていたが、革命時に首都のモスクワ移転とともに革命家レーニンの名がつけられた。
第2次世界大戦では2年半にわたるドイツ軍による徹底した包囲網と砲撃でロシア市民を含めた死者は100万人ともいわれるが、その大半が“餓死”という。
「市を消滅せよ」というヒトラーの命令と、市民を「人間の盾」として監視し弾圧を強める赤軍とのはざまで、なすすべもなくさまよう人々。
作中でも、市民の悲惨な状態がストレートに描かれている。
戦争をじかに体験した世代から薄れゆく世代への語り継ぎの物語として、こうした“聞くもおぞましい”現実を、若者二人の「ロードムービー」として描くことでバランスよく読者に語りかけてくる。
そこで「卵をめぐる祖父の戦争」というタイトル……優れた邦題である。
いっぽうのスターリングラード、ロシア帝国時代は南のタタールに備える要塞都市のひとつであったが革命戦争時に大きな戦いがあり、その後社会主義の象徴として工業化を進めた都市で、当時の独裁者の名がつけられている。
1942年8月から約6か月にわたる激しい攻防戦が繰り広げられ、同名の映画にもなっているが、この物語には関係ない。
ソビエト崩壊後の現在、スターリングラードは消滅(一部ヴォルゴグラードとして残る)し、レニングラードはふたたび「サンクトペテルブルグ」として生き残った。
……文明は滅びても文化は残る。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ下品で笑えて切なくて辛くて怖くて爽やかな話だった。
人肉食、地雷犬、足を切断される少女など、あまりにもひどい場面にばかり出くわすものの、コーリャの明るさとおちゃらけた物言いにだいぶ救われていると思う。
下ネタが思ったよりすごい多かった。
娘の結婚式で使いたいというそんな理由のために命懸けで卵を調達させにいくのもそもそもやばい。
戦争の理不尽さや怖さがいろんなところから滲み出てた。
コーリャのことを私も読んでるうちにどんどん気に入っていたので最期は唐突で悲しかった。
けど、コーリャらしいといえばとても彼らしかった。
名狙撃主のヴィカもいいキャラしてたし、終わり方は爽やかで読んでいてこちらも微笑んでしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大傑作である.
コソ泥として捕まったレニングラードの少年が,お調子者の脱走兵とペアを組まされ,卵を1ダース手に入れてくることを命令されるのだが,折しも900日にもわたった「レニングラード包囲戦」のさなかである.飢えに苦しむレニングラード市からドイツ軍の包囲網を突破し,どこかから期限までに卵を入手してこないと処刑されてしまうのである.
青春小説で,冒険小説で,かつ,戦争小説であり,この世の地獄とも言える光景が何度も展開されるのだが,この二人のペアが対照的なキャラクターで,軽妙なやり取りが話にスパイスを利かせているおかげで,重苦しい雰囲気にはならない.
人食い夫婦との対決,4人の囚われの少女との出会い,パルチザンとの同行を経て,最後のクライマックスまでストーリーはテンポよく展開して行き,感動のラスト50ページに雪崩れ込む.
最後の1行で冒頭の伏線が回収されるところまで見事だった. -
Posted by ブクログ
ネタバレ米国人気TVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の共同プロデューサーで脚本家・小説家でもあるデイヴィッド・ベニオフが書いたベストセラー小説。
ベニオフが自分の祖父から聞いた戦時中の体験談という体裁になっているがフィクションだそうである。
ドイツの包囲攻撃を受けているレニングラードに住む17才の少年レフ・ベニオフ(デイヴィッド・ベニオフの祖父)は、仲間と共に街に落ちたドイツ軍パイロットの死体から備品をとっているところを軍に見つかり捕まってしまう。
彼は収監された刑務所で背の高い金髪碧眼の脱走赤軍兵士コーリャと出会う。
軍の大佐が娘の結婚式の料理に使うからという理由で、レフと
コーリャは免罪(死刑)と引き換えに卵1ダースを見つけてくるという任務を与えられる。
レフとコーリャが下ネタ満載のトークを交わしながら卵を求めて極限の物資欠乏状態のレニングラード市内からドイツ軍の占領下の村や町を旅していくロードムービーの様な内容で、コミカルな雰囲気をまとっているが、彼らの目にしたり体験する戦争の現実は凄惨なものばかりで恐ろしさがよけい引き立つ。
けれども戦争の恐ろしい状況下にあっても正気を失わず前向きに生きていく人たちの物語でもあるので暗さや陰鬱さは無い。
登場人物達が本当に魅力的である。
特に主人公レフの相棒となる青年脱走赤軍兵コーリャは、下ネタ満載のトークが面白すぎてまったく飽きさせない。
個人的には話中の会話が面白い作品は、成功する作品だと思っているがこの作品も例に漏れない。
コーリャの設定がまた面白い。
金髪碧眼の長身で整った容貌をしており、文学に造詣が深いが性欲が強すぎて我慢できなくなり脱走してしまったという人物。
性格めちゃくちゃだが、勇敢であり友人の為であれば危険も冒す。
もう一人は、パルチザンの女性スナイパー ”ヴィカ”
最初は、非常に冷静で冷徹なプロフェッショナルな雰囲気で登場する。
この物語はレフとヴィカのボーイ・ミーツ・ガールの物語でもあり、レフとヴィカの親密度が増すにつれ彼女の魅力がだんだん出てくるところが素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ傑作!この小説はいい。
舞台は近代戦最長の900日に及ぶ包囲戦下のレニングラード。飢えと戦争被害に苦しむレニングラードの描写、その戦下日々を必死に生きる主人公が、ひょんなことからイケメンで下品で饒舌な脱走兵とコンビを組み、赤軍士官の命令で玉子1ダースを探すことになる。
人間ってほんま愚かで、その骨頂が戦争だと思う。生産性も幸せも食べ物すらない悲惨な状態を、人間は凝りもせず何度も何度も繰り返す。この本でも戦争の悲惨さ愚かさは繰り返し描写される。ただでさえ気候条件が厳しい冬のレニングラードで、なんでこんなバカな行為を…。
主人公レフと相棒コーリャのタマゴを探す冒険も実に愚かである。支配者の欲を満たすだけの目的、命の危機にも関わらず続く下品な会話…、アホやなぁ人間て…。でもこの愚かさは戦争のそれと違い愛すべき愚かさ。
許されざる愚かさと愛すべき愚かさ、愚かな人間の極端な両面を描くこの小説。しかしラスト1文を読めば、人間だって愚かであっても悲劇に至らない生き方はできると分かる。そう、きっと悲しい歴史を刻まないことだってできるはずなんだ! -
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俗っぽいけど敢えて言いたい。
「やべえ、ちょー、おもしれえ!」
出来ることなら、文字のサイズを倍にしたいくらい面白かった。
以下、ブクレポ。
主人公のレフはある日、落下傘で空から落ちてきたドイツ兵の死体を発見し、死体からナイフを盗んだことから、窃盗の罪で投獄される。そして時を同じくして、戦線離脱の脱走罪で投獄されてきた赤軍兵士コーリャに出会う。
人の命など屁とも思わないスターリン体制下のソ連では、二人は死刑が確実。しかし大佐から、ある条件をクリアできれば自由にしてやる、との思いがけない言葉をかけられた。
その条件とは… 「卵を一ダース手に入れる」こと。
ナチスに包囲されたレニングラードは極度の食糧難に陥り、赤軍幹部と言えども卵を手に入れることができなくなっていた。卵を手に入れるには、もはやドイツによって占拠された地域にまで、もぐりこまなければならない。
二人は問うた。
「なぜ、卵が必要なのですか」
大佐は窓の外から池の上で優雅にスケートに興じる美少女を目で示し言った。
「娘の結婚式にはケーキが必要だろ?」
かくして二人は、大義のかけらもない任務を負い、命をかけた冒険に出発する。
二人の性格は正反対。レフは内気で言葉も少ない。腕っ節には自信がなく、女性と恋愛をしたこともなく、存在感のない少年。
一方のコーリャは女性経験が豊富で、細身だけれど格闘術に長けている。そしてなにより饒舌だ。口八丁手八丁。劣悪な食糧事情のため一週間も糞が出ないという体調不良でもカラ元気。とにかくじっとしていることと、黙っていることができない。下ネタ大好き。童貞のレフをからかうときは輪をかけて舌も滑らかになる。
二人の掛け合い漫才(というかコーリャが一方的に話してレフがぼそっと言い返すだけだけど)を読んでいるだけでも、この小説は面白い。
この小説のメインテーマは友情だ。性格がまるで違う男同士が互いに励まし合い、困難を乗り越えていく冒険小説だ。また、主人公のレフがパルチザンの女兵士に恋をしてからは、青春小説のようにもなる。好きな女の子の前で、いい格好をしようとして下手を打ち、悩み、落ち込み、それをコーリャが冷やかしつつも、力になる。
しかし彼らは死と隣り合わせの状況下にある。
彼らの命は卵一ダースより軽い。そして彼らの行き先には、人肉を食う夫妻がいたり、鶏一羽のために命を落とす幼子がいたり、ベイクドポテト一皿のために敵兵に春を売る女性がいる。飢餓による刺すような痛痒をしくしくと感じる。
巻末の解説にあったが、実際に幼い子供を飢餓から救うために、さらに幼い赤子を殺して、その肉を与えたということもあったらしい。
ドイツによるレニングラードの包囲は900日に及んだ。本文中に起こる数々の悲劇に似た現実は、きっとたくさんあったことだろう。
コーリャが饒舌な理由も最後には明らかになり、読んでて、もう、なんだか泣けてきてしまった。レフもコーリャは奇異な巡り合いだったけど、本当の友情を結んだ。そしてラストにはかすかな希望が見えた。
もう一度、俗っぽく、
「まじ、感動した!」
どちらかと言えば男性向きの小説だが、銃後の悲劇を考える上でも、良い作品だと思う。