イアン・マキューアンのレビュー一覧

  • 恋するアダム

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    カズオイシグロのAIを題材にした作品は、語り手がAIであるが故に直接的には多くを語らず読者に思考させるものだと思ったが、こちらはあらゆる人間が種々の問題(AIと人間の関係性に留まらない)を提起するもので、これはこれで非常に良かった。ミステリー色、SF色、社会派色、と、あらゆる側面を一気に味わえる作品。歴史上の事件がたくさん、史実と裏返しになっているのもとても興味深い。
    個人的には一年住んだロンドンの雰囲気を懐かしく思い出せるところも高ポイントだった。

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    2024年01月02日
  • 恋するアダム

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    誠実さや正義感を持つロボットであるアダムとイブは、人間の不誠実、嘘、憎しみ、裏切り、ありとあらゆる人間の歪みを初めて知った時、絶望する。そして自殺行為に及ぶ。果たして人類は、この複雑な人間(邪悪で非道的な部分を含む)という生き物を模倣とする人格、精神を持ったロボットを完成させる日はくるのか。 人間の醜悪をアダムの正義感によって学ぶ。 アダムは恋することによって自我を確かなものにしていったのが面白い。

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    2022年05月21日
  • 恋するアダム

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    ネタバレ

    これは面白かった!

    ドライな感じは楽しい。
    西欧ではやっぱり機械に生命を見出すというか、壊すにあたっても倫理みたいなものを考えずにはいられないんだなーと思った。

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    2021年05月04日
  • 恋するアダム

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     うだつの上がらない主人公の男チャーリーが母親の遺産で買ったアンドロイドのアダム。一緒に暮らしていくうちに、アダムがチャーリーの恋人・ミランダを好きになってしまい…という話。

     まず、アンドロイドの感情はどこからくるものなのか?という問いがある。アダムの感情はアダム自身の内部から自然発生的に湧き出たものなのか、それとももともとプログラミングされていたものなのか。AIを取り扱う話はまずAI自身が信頼できない語り手として存在しているところが、物語の不安定要素になっていて面白い。

     また、人間の行動基準や意思決定基準の何といい加減なこと。不合理で不条理で不公平で、でもその揺らぎがあるからこそアダ

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    2021年04月04日
  • 恋するアダム

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    人工知能を持ったアンドロイドと暮らすってどういうことなんだ??という未知の面白い体験が出来たことが良かった。倫理的な問題も散りばめられているので、思考することの醍醐味を味わえた。人間とロボットの境界線が曖昧になる世界って不思議だ。

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    2021年02月14日
  • 憂鬱な10か月

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    母親のお腹にいるわたし。お腹のなかで聞く愛の囁き、ポッドキャストの教養、胎盤から味わうワイン、犯罪の計画…
    なんなのだ、これは。
    ブラックユーモアたっぷりに語られる、胎児版ハムレット。
    普段の綿密な調査から離れて書いた、という作者のストーリーテリングのおもしろさ。

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    2018年07月20日
  • 恋するアダム

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    AIと人間の関係が最初からそんなに良好と言い難かくちょっと、題名と内容があわないと感じてしまった。
    アダムがミランダに恋をしているからの結末なのか?恋していなくても正しい結末だったのではないかと思う。
    翻訳がいいからか、サラサラ読めて、よかった。
    なんとなく、少し不完全燃焼かな。

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    2022年02月18日
  • 恋するアダム

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    AIは恋をするのだろうか。
    どうやって自分でいられるのだろうか。
    不完全な人間は倫理と道徳観念とどう向き合っているの。
    現実世界の裏返しのような(サッチャー夫人が追い出され、ビートルズが新譜を出して酷評される)1981年のイギリス。
    デジタル分野は今より進んでおり、自動運転やAI搭載のアンドロイドがでてきている世界。

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    2021年05月05日
  • 恋するアダム

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    1980年代後半のイングランドに似たパラレルワールド。チューリンゲンは生きているし非常に優れたアンドロイドのいる世界。
    25体の一体アダムを手に入れたチャーリーと女子学生ミランダの共同生活における関係性の構築と破綻の、そしてある意味再生の物語。ミランダの秘密のミステリー色と善悪と正義の判断、アダムを含めた3人の恋模様など盛り沢山で内容の詰まった物語だ。

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    2021年04月30日
  • 恋するアダム

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    発想が斬新だった。コンプレックスの固まりみたいな主人公とアダムとの対比が面白かった。もしかしたら、もうそこそこにアンドロイドがいるのかも、と思った。

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    2021年03月28日
  • 恋するアダム

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    ネタバレ

    パラレル1982年に、愛とは正しさとは復讐とは子どもを持つとは…などいろいろ盛り込まれた意欲作。
    読んでいくとどうしてもアダムに肩入れしてしまうので、アダムの真正直さ正しさが悲しい、つらい。

    やはり人間は不完全であり、嘘も影も含む存在なのだなあ。読後、引き摺る。

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    2021年02月17日
  • 憂鬱な10か月

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    胎児の独白?なんだそりゃ、という読み始めの感覚は知らないうちにどっかに行って、ひきこまれて読んだ。皮肉なのに冷たくないという、マキューアン独特の世界。

    生まれるときは誰もが、自分では選びようのない状況下に、無力な状態で投げ込まれる。この世は決して生きていくのにたやすいところではないし、醜いこと、不条理なことが山盛りだ。それでもそこに美や真実があることもまた間違いない。そんな感慨が湧いてくる。

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    2019年01月15日
  • 憂鬱な10か月

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    ネタバレ

    『というわけで、わたしはここにいる、逆さまになって、ある女のなかにいる』という出だしで始まるこの小説の語り手は、もうすぐ生まれる予定の胎児だ。しかしこの胎児は母親の聴いているラジオ番組や外界の音から様々な情報を得て、周囲の人物の様子から世界情勢まで理解しているというとんでもない胎児なのだ。
    彼の両親は不仲で、母親は父親を家から追い出し、父親の弟と不倫関係にあるばかりか、弟と共謀して父親を毒殺してしまう。弟の名はクローディア。正にハムレットである。彼は母親の胎内で色々な事を考え、どうするべきか、どうしたら良いのかを思い悩むが、いかんせん何もできない胎児であることがもどかしい。最終的に、警察に追わ

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    2018年12月08日
  • 憂鬱な10か月

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    一人称の小説は苦手(町田康は除く)なんだけどこれは面白い。
    母親が見聞きするものから知識を得てる感じなのに母親より賢そうなのはなぜだ?

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    2018年07月12日
  • 憂鬱な10か月

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    ネタバレ

    本書の主人公は胎児。
    が、父親が詩人のせいか、やけに饒舌で芝居がかった言い回しで、ほとんどがこの胎児の独白のような形で物語は進む。

    母親が父親の弟と不倫をし、やがてそれは父親の毒殺計画へと発展する。胎内で母と叔父の計画を聞き、胎児は刑務所で生まれてしまったらどうなるのだろう、と悩んでみたり、母が飲むワインの味わいを楽しんだり。やたらと博学だけど無力な主人公が結構かわいい。

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    2025年01月28日
  • 憂鬱な10か月

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    初イアン・マキューアン。これは、ウィットに富んだジョークなのかな?主人公はまだ母親のお腹の中にいる胎児。しかも母の身体をとおしてポッドキャストで世界情勢を嘆いたり、ワインを嗜んだり(しかもものすごく詳しい)、挙句の果てにへその緒で首をつって自殺をはかろうとする。一歳の息子がいる身としてはまさか我が子もなんて思ったり。最後にこの世界に生まれてくる描写は素敵だった。誰もその時のことは覚えてないはずなのに、追体験できるとは。

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    2023年05月04日
  • 恋するアダム

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    面白かったけどこういうアンドロイドの誕生は実は怖いのではないかと思った。人間の心の繊細さ、揺れ、真実とその反面の折り合い···どこまで理解しあえるのだろう?

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    2021年12月17日
  • 恋するアダム

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    アンドロイドのアダムを買ったチャーリーと、同じアパートの上の階に住む女子大生のミランダ。3人の奇妙な関係…、と書けば当然近未来小説と思うが、1982年の英国が舞台。サッチャー首相がフォークランド紛争に追い込まれていたころのこと。でも、そこは架空のお話なので、事実とは違う政治情勢になっている。そこがまた不思議な感じ。80年代にここまでできるのか?というのもあるけれど、どこまでが歴史上の事実なのか悩みながら読んだ(自分に知識がないからだけなんだけれど)。学習し続けるアダム、チャーリーが偶然手を差し伸べることになった少年マークの存在、何よりもミランダの過去などが次々と絡み合っていく。

    AIが日常生

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    2021年10月06日
  • 憂鬱な10か月

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    実は見えてたりするんじゃないか、
    胎盤から出てくるときに、スッポリ記憶だけ落とされてくるんじゃないか
    可能性はありそう

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    2019年05月14日
  • 憂鬱な10か月

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    「胎児版ハムレット」との触れ込みだったが、肝心のハムレットの内容が朧気だったので新鮮な気持ちで読んだ。ウィットに飛んだ皮肉と度々挿入される詩の一節一節が読んでいて心地いい。必要以上に汚い台所の様子や露骨な性描写(確かに臨月の胎児としてはたまったもんじゃないだろうけど)も含め、全編通して陰湿で意地悪なのに読後感は爽やか。本家「ハムレット」を読んでから再読してみたい。何気に作中にスマートフォンが登場するぐらい発行が新しい小説を読んだのは久しぶりで、けっこう驚いた。

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    2019年02月05日