あらすじ
独身男のチャーリーは、母親の遺産を使って最新型アンドロイドを購入した。名はアダム。どんな問題も瞬時に最適解を出すAI能力を利用して、チャーリーは上階に住む女子学生ミランダと恋仲になることに成功した。だが彼女は重大な過去を秘めており、アダムは彼女に恋心を抱きはじめる。人工知能時代の生命倫理を描く意欲作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カズオイシグロのAIを題材にした作品は、語り手がAIであるが故に直接的には多くを語らず読者に思考させるものだと思ったが、こちらはあらゆる人間が種々の問題(AIと人間の関係性に留まらない)を提起するもので、これはこれで非常に良かった。ミステリー色、SF色、社会派色、と、あらゆる側面を一気に味わえる作品。歴史上の事件がたくさん、史実と裏返しになっているのもとても興味深い。
個人的には一年住んだロンドンの雰囲気を懐かしく思い出せるところも高ポイントだった。
Posted by ブクログ
誠実さや正義感を持つロボットであるアダムとイブは、人間の不誠実、嘘、憎しみ、裏切り、ありとあらゆる人間の歪みを初めて知った時、絶望する。そして自殺行為に及ぶ。果たして人類は、この複雑な人間(邪悪で非道的な部分を含む)という生き物を模倣とする人格、精神を持ったロボットを完成させる日はくるのか。 人間の醜悪をアダムの正義感によって学ぶ。 アダムは恋することによって自我を確かなものにしていったのが面白い。
Posted by ブクログ
これは面白かった!
ドライな感じは楽しい。
西欧ではやっぱり機械に生命を見出すというか、壊すにあたっても倫理みたいなものを考えずにはいられないんだなーと思った。
Posted by ブクログ
うだつの上がらない主人公の男チャーリーが母親の遺産で買ったアンドロイドのアダム。一緒に暮らしていくうちに、アダムがチャーリーの恋人・ミランダを好きになってしまい…という話。
まず、アンドロイドの感情はどこからくるものなのか?という問いがある。アダムの感情はアダム自身の内部から自然発生的に湧き出たものなのか、それとももともとプログラミングされていたものなのか。AIを取り扱う話はまずAI自身が信頼できない語り手として存在しているところが、物語の不安定要素になっていて面白い。
また、人間の行動基準や意思決定基準の何といい加減なこと。不合理で不条理で不公平で、でもその揺らぎがあるからこそアダムの言う通りこの世には「文学」が存在するのであって、そんな不安定さが入る余地のない世界は味気なさすぎるのかもしれない。ただ、その機微をアダムが理解しようというのはチューリングが指摘するように、かなり難しい。自分の心の在り様を完璧に説明できる人間は恐らく一人もいないから、そんな人間がその機微を機械にプログラミングできるわけがない。
そしてアンドロイドは人間が「所有する」ものなのだろうか。それともアンドロイド自身が誰にも所有されない独立した「一個人」なのだろうか。チャーリーが自分のお金を出した買ったアダムが稼いだお金は、いったい誰のものなのか。アダムの意思を無視してアダムの電源をON/OFFする権利がチャーリーにあるのだろうか。使わなくなったり気に入らなくなったおもちゃは処分することが許されているが、そうなったアダムのことはどう処理するべきなのだろうか、はたまたそうして処理する権利は持たないのだろうか。アンドロイドという存在がただの機械と呼ぶには人間に近しすぎて、そうしたアンドロイドと人間はどうした関係性にあるのかがよく分からない。これまで人間が結んでこなかった新しいパターンの人間関係を、アンドロイドと構築しなければならないのかもしれない。
Posted by ブクログ
人工知能を持ったアンドロイドと暮らすってどういうことなんだ??という未知の面白い体験が出来たことが良かった。倫理的な問題も散りばめられているので、思考することの醍醐味を味わえた。人間とロボットの境界線が曖昧になる世界って不思議だ。
Posted by ブクログ
AIと人間の関係が最初からそんなに良好と言い難かくちょっと、題名と内容があわないと感じてしまった。
アダムがミランダに恋をしているからの結末なのか?恋していなくても正しい結末だったのではないかと思う。
翻訳がいいからか、サラサラ読めて、よかった。
なんとなく、少し不完全燃焼かな。
Posted by ブクログ
AIは恋をするのだろうか。
どうやって自分でいられるのだろうか。
不完全な人間は倫理と道徳観念とどう向き合っているの。
現実世界の裏返しのような(サッチャー夫人が追い出され、ビートルズが新譜を出して酷評される)1981年のイギリス。
デジタル分野は今より進んでおり、自動運転やAI搭載のアンドロイドがでてきている世界。
Posted by ブクログ
1980年代後半のイングランドに似たパラレルワールド。チューリンゲンは生きているし非常に優れたアンドロイドのいる世界。
25体の一体アダムを手に入れたチャーリーと女子学生ミランダの共同生活における関係性の構築と破綻の、そしてある意味再生の物語。ミランダの秘密のミステリー色と善悪と正義の判断、アダムを含めた3人の恋模様など盛り沢山で内容の詰まった物語だ。
Posted by ブクログ
発想が斬新だった。コンプレックスの固まりみたいな主人公とアダムとの対比が面白かった。もしかしたら、もうそこそこにアンドロイドがいるのかも、と思った。
Posted by ブクログ
パラレル1982年に、愛とは正しさとは復讐とは子どもを持つとは…などいろいろ盛り込まれた意欲作。
読んでいくとどうしてもアダムに肩入れしてしまうので、アダムの真正直さ正しさが悲しい、つらい。
やはり人間は不完全であり、嘘も影も含む存在なのだなあ。読後、引き摺る。
Posted by ブクログ
面白かったけどこういうアンドロイドの誕生は実は怖いのではないかと思った。人間の心の繊細さ、揺れ、真実とその反面の折り合い···どこまで理解しあえるのだろう?
Posted by ブクログ
アンドロイドのアダムを買ったチャーリーと、同じアパートの上の階に住む女子大生のミランダ。3人の奇妙な関係…、と書けば当然近未来小説と思うが、1982年の英国が舞台。サッチャー首相がフォークランド紛争に追い込まれていたころのこと。でも、そこは架空のお話なので、事実とは違う政治情勢になっている。そこがまた不思議な感じ。80年代にここまでできるのか?というのもあるけれど、どこまでが歴史上の事実なのか悩みながら読んだ(自分に知識がないからだけなんだけれど)。学習し続けるアダム、チャーリーが偶然手を差し伸べることになった少年マークの存在、何よりもミランダの過去などが次々と絡み合っていく。
AIが日常生活に登場している21世紀、人間に近いロボットは可能なのか、文学的に注目できる作品なのでは。