あらすじ
誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。その耳に届く、愛の囁き、ラジオの音、そして犯罪の気配――。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと鋭い洞察、苦い笑いに満ちた、英国の名匠による極上の最新作。
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Posted by ブクログ
母親のお腹にいるわたし。お腹のなかで聞く愛の囁き、ポッドキャストの教養、胎盤から味わうワイン、犯罪の計画…
なんなのだ、これは。
ブラックユーモアたっぷりに語られる、胎児版ハムレット。
普段の綿密な調査から離れて書いた、という作者のストーリーテリングのおもしろさ。
Posted by ブクログ
胎児の独白?なんだそりゃ、という読み始めの感覚は知らないうちにどっかに行って、ひきこまれて読んだ。皮肉なのに冷たくないという、マキューアン独特の世界。
生まれるときは誰もが、自分では選びようのない状況下に、無力な状態で投げ込まれる。この世は決して生きていくのにたやすいところではないし、醜いこと、不条理なことが山盛りだ。それでもそこに美や真実があることもまた間違いない。そんな感慨が湧いてくる。
Posted by ブクログ
『というわけで、わたしはここにいる、逆さまになって、ある女のなかにいる』という出だしで始まるこの小説の語り手は、もうすぐ生まれる予定の胎児だ。しかしこの胎児は母親の聴いているラジオ番組や外界の音から様々な情報を得て、周囲の人物の様子から世界情勢まで理解しているというとんでもない胎児なのだ。
彼の両親は不仲で、母親は父親を家から追い出し、父親の弟と不倫関係にあるばかりか、弟と共謀して父親を毒殺してしまう。弟の名はクローディア。正にハムレットである。彼は母親の胎内で色々な事を考え、どうするべきか、どうしたら良いのかを思い悩むが、いかんせん何もできない胎児であることがもどかしい。最終的に、警察に追われそうになった母親と叔父が2人で逃亡する寸前に自らの意思で生まれてきて2人の逃亡を阻止することになる。
様々な情報を得て、それを分析して考察する明晰な頭脳を持ち、母親、父親、叔父などに愛情や憎しみを感じながらも、自分からは何もできない胎児の視点で物語が進んでいくのが新鮮でとても面白い。
Posted by ブクログ
本書の主人公は胎児。
が、父親が詩人のせいか、やけに饒舌で芝居がかった言い回しで、ほとんどがこの胎児の独白のような形で物語は進む。
母親が父親の弟と不倫をし、やがてそれは父親の毒殺計画へと発展する。胎内で母と叔父の計画を聞き、胎児は刑務所で生まれてしまったらどうなるのだろう、と悩んでみたり、母が飲むワインの味わいを楽しんだり。やたらと博学だけど無力な主人公が結構かわいい。
Posted by ブクログ
初イアン・マキューアン。これは、ウィットに富んだジョークなのかな?主人公はまだ母親のお腹の中にいる胎児。しかも母の身体をとおしてポッドキャストで世界情勢を嘆いたり、ワインを嗜んだり(しかもものすごく詳しい)、挙句の果てにへその緒で首をつって自殺をはかろうとする。一歳の息子がいる身としてはまさか我が子もなんて思ったり。最後にこの世界に生まれてくる描写は素敵だった。誰もその時のことは覚えてないはずなのに、追体験できるとは。
Posted by ブクログ
「胎児版ハムレット」との触れ込みだったが、肝心のハムレットの内容が朧気だったので新鮮な気持ちで読んだ。ウィットに飛んだ皮肉と度々挿入される詩の一節一節が読んでいて心地いい。必要以上に汚い台所の様子や露骨な性描写(確かに臨月の胎児としてはたまったもんじゃないだろうけど)も含め、全編通して陰湿で意地悪なのに読後感は爽やか。本家「ハムレット」を読んでから再読してみたい。何気に作中にスマートフォンが登場するぐらい発行が新しい小説を読んだのは久しぶりで、けっこう驚いた。
Posted by ブクログ
赤ちゃんから見た両親、不倫、社会をややニヒルな目線で書いた作品。
現代のハムレットなんていうので期待したが、それほどではないかなー。本家の迫力は無いし、訳も分かりづらい。
でも、赤ちゃんにもし、全てが見えているとしたら…そういう目線では面白い作品だった。