子どもの頃、ピアノのレッスンで登場するバッハが、苦手だった。
両手がバラバラに動くようなフレーズも難しかったし、同じ強さで淡々と弾くように言われて、もっとドラマティックなメロディが弾きたいと、つまらなく思っていた。
音楽室に肖像画がかかっている、その程度の印象しかなかった人は、当時の私にとっては2次
...続きを読む元で、何世紀ごろの人、と筆記試験のためにマル覚えするような対象でしかなかったのだ。
宗派のこと、時代のこと、政治のこと。
こういうことを知っていれば、バッハの音楽がもっと面白く感じられていたかなぁ。
少なくともバッハが、現代を生きる人間と同じように悩んだり、恋をしたり、仕事に情熱を燃やしたり、まるで中間管理職のように上司(にあたる立場の人)の政治的な揉め事に巻き込まれて困ったりしていたことを知れば、もっと身近な、同じニンゲンとして親近感を覚えることができたかも。
今になってでも、出会えたからよしとしよう、と思う。
今だから分かることも、沢山あったと思う。
トシを取った証拠なのか、どうなのか・・・。
人は、音楽ナシでは生きられないんじゃないか?
何百年も前から、良い音楽を生み出すことにこんなにも情熱を傾ける人たちがいたことを知ると改めてそう思う。
「生存する」ことはできるかもしれないけど「豊かに生きる」には、やっぱりこういう芸能とか、気晴らしになるようなものが必要だったんじゃないかな、と。
とはいえ「どうしても必要」となればお金も絡むし、利害が絡めば政治が出てくる、宗教が出てくる。「芸術家」であるだけでは、本人も作品も、生き残りづらかったのは今も昔も変わらないみたい。
立場とか、やりたいこととか、生活のいろいろな事情とか、、、「いろんなことのバランスを取りながらガンバってたバッハさん」の生き様が垣間見えるようでとても面白い1冊。彼の並べたオタマジャクシが、今も残ってるんだもの、、、それって凄いコトだ!と改めて思える。
ところで実は
「バッハさん」への親近感を得られたことと同じくらい衝撃だったのは長3度にチューニングされたミーントーンのパイプオルガンのこと。
オートハープのチューニングで試そうとしたこともあるのだけれど、実際にはなかなか難しくて実用には至らず。パイプオルガンの調律なんて、どんな風にやるのか想像もつかないけど、、、その調の一曲を最高の響きで、というこだわり方が素晴らしい。ひょっとすると、神への捧げものだったからこそ、そういう贅沢が生まれたのかも。