デイヴィッドグランのレビュー一覧
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実際に起ったイギリス船の挫傷と船員の帰還を描いた本。非常に面白かったです。
通常は統率の取れた船上と大きく異なり、無人島にたどり着いてから起こる食料不足や希望の喪失といった厳しい状況では、ルールやモラルを保つことが難しく、派閥の形成による衝突が実際に起こることが描かれています。これと比較すると、一般的な社会でよく起こる組織間の衝突が、非常に些細なことのように見えてきます。
帰還した船員の残した資料が多いことや、これまでに多くの著者がこの一連のエピソードをまとめてきた経緯から、非常に多くの参考文献を掲載されており、内容をより重厚なものに仕上げています。 -
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この作家による(花殺し月の殺人)を読んでいて、失敗しないかなと、思って読み始めた。難破船とか、遭難物は、あまり読んでいなかったので、想像を超える状況には、絶句し、読むスピードも、どんどん早くなっていきました。
この時代の、世界情勢や、倫理観も、わかるし、何より、サバイバルな生存競争、そして最も深く考えさせられたのは、南極に近いあの地理的状況、海の凄まじさ、緯度経度、地図他不正確もしくは、全くわからない、現在では、考えられない危機的状況を、乗り越えて行った部分でした。
なんとか生きて戻ってからの、立場や、苦難も、それは大変だったとは、思うが、何より生還できて良かったな! -
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エンデュアランス号を先に読んだ。絶海は18世紀のロビンソンクルーソーに端を発する海洋冒険物語の帝国植民地政策と南米大陸の覇権をスペインと争っていた時代のイギリス海軍が対スペイン帆船拿捕のための作戦のために出港した船が難破して、不毛な無人島で漂流生活をおくる話である。著者は当時出版された航海日誌や未発表の日誌から取材をして書いている。
漂流生活はエンデュアランス号よりもキツイ。壊血病などでとんでもない数が死ぬ。医療が未発達で病気の原因がわかっていない。無人島上陸後は集団の中で対立がおきて雰囲気が悪くなる。人間関係の話だ。蠅の王みたいな感じ。
凄まじいサバイバル生活のあとでも暮らしは豊かになら -
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【感想】
1740年に大英帝国を出発した軍艦「ウェイジャー号」は、南米大陸最南端のホーン岬付近で嵐に巻き込まれ、難破した。乗組員は近くの島に上陸し、5か月間サバイバル生活を送ることになる。その島は嵐が吹き荒れ氷点下0度近くになる絶海の孤島であり、めぼしい食料は貝や海藻、いくばくかの野草しかない。厳格な軍規で律せられていたはずの英国士官たちは、飢餓の中で次第に狡猾・残忍になり、窃盗や食人を犯すほど追い詰められていく――。
本書『絶海』は、大英帝国とスペインが海の覇権を争っていた18世紀、英国艦「ウェイジャー号」の航海と遭難、そして乗組員が帰還するまでの壮絶な出来事を描いたノンフィクションである -
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ネタバレ2024年1冊目
映画を見て、レビューからこの本に辿り着いた。
3つの時代に区切られてて、オセージ族、FBI、現代の構成になってる。翻訳者も書いてるけど著者の取材量がすごい。この原作からあの映画へ構成したスコセッシ監督もすごいな。当初、ディカプリオはトム・ホワイト役をやる予定だったらしく、あの脇役?と思ってたからこちらを読んで納得した。
ヘイルだけが主犯ではなくこの町全体がそういうことをしてて、これが現実にあったのが信じられないぐらい理解不能な状況。でもこれが実際にあったのか、、お金の価値ってなんなんだろう。
生きるにはお金が必要だけど、必要以上なお金っているのか?人を殺してまで手に入れるお金 -
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ネタバレ映画のほうは評判良いらしいし、題材も連続殺人でミステリーとしても面白そうだなと軽い気持ちで興味持って読んだら打ちのめされた。これが人間のやることか。絶望する。
面白かった。と軽々しく言えない。読むべきではあるが、安易に楽しんではいけない辛さがある。
1章。語り口は小説というよりドキュメントで、読みやすい。事実に付随して最小限の脚色(表情や仕草)で読みやすい。犯人はあの人かなあ、みたいなぼんやりとした想像は出来るけど、とにかく何が起きていったのかを追っていく感じで面白かった。そして結局わからずじまい。
2章。FBIとトム・ホワイトの掘り下げが面白かった。トム・ホワイトの人柄が良い。不正に加担 -
テーマも読み物としても最高
1920年代アメリカ、埋蔵されていた石油資源によっての資産家になった先住民オセージ族の連続不審死事件を追ったノンフィクション小説。2人の他殺死体発見から話が始まるものの被害者がインディアンってのもあってか捜査が進まない。被害者一族は私立探偵をダースで雇って自力で解決に挑むものの上手くいかず、そこに現れるのが後にFBIになる組織ってこの時点で面白そうなんだけど、この先がまた凄い。この本は3部構成で1部、2部も良いけど3部が本編。当時の空気感や情勢を感じさせてくれるような良い本だった
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1740年に250人の乗組員でイギリス・ポーツマスを出航したウェイジャー号は、当時の覇権国家スペインのガレオン船を拿捕し、金品を奪うことが目的だった。航海は熾烈を極め、当時まだ未知の病だった壊血病や伝染病に多くの乗組員が倒れ、そして壮絶な嵐の中で南アメリカ大陸最南端のホーン岬を回ったあたりでついに難波してしまう。
後にウェイジャー島と呼ばれるようになる島に上陸した時には、乗員は145名になっていた。
無人の荒涼とした島には何もなかった。飢えと裏切り、極限の状態の中で人肉食。極限の中で生き残るために軍紀を守ろうとする人、生き残るために上官に反旗を翻すもの。
極限の状況の中での判断、 -
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1740年9月18日にポーツマスを出港した元商船の軍艦「ウェイジャー号」、その壮絶な航海の記録から紐解かれた考察の一冊です。
国家事業としてのスペイン商船拿捕・鹵獲…つまり海賊のような略奪を任務にする本船は、志半ばで座礁し乗組員は無人島へ漂着することになります。
海の男が陸に上がると船での階級意識が薄れてしまうのか、反乱が常に起こり得る日々が続くことになりました。
そして遂に島に残る船長チープ組と脱出する組とに分裂し、この軋轢は彼らの人生を通して響くことになるのです。
奪い合い、殺人、人肉食などの極限状態が資料を基に現実味を帯びた筆致で描かれます。 -
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今からおよそ300年前18世紀半ば。沢山の財宝を載せたスペイン船を拿捕する目的でグレートブリテン王国を出航後、南米大陸南端付近で難破した軍艦ウェイジャー号の乗組員たちを中心に追った海洋サバイバルノンフィクション。
飢えに苦しみ極限状態に陥ると精神までが荒み、僅かに残る食糧や武器の奪い合い、仲間割れに発展する。絶海でのサバイバルは壮絶そのもの。生々しい人間模様のリアリティ。また当時の植民地主義や帝国主義の思想も垣間見える。
作者は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を著したデイヴィッド・グラン。この人の書くノンフィクションは本当に情報収集能力、ストーリーの再構成力が見事で圧倒される。今作も『キ -
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1/3ほど読んだところで映画を観た。
ドラマチックに進む206分のスコセッシの力作に比べ、
集められた事実が淡々と述べられるノンフィクション。
事件から長い時間が経ったのちの調査には執念を感じるし、当時の入植者(主に白人)の欲深さがこんな連続殺人まで起こすのかと思うと恐ろしい。
greedyって言葉がぴったり。
(映画の出演者の演技は見事です!)
途中で出てくる『大草原の小さな家』のインガルス一家、
ネイティブ・アメリカンの人たちををこんな風に思ってたのか…と、今になって知るとかなりガッカリ。
子どもの頃、あんなに楽しく観てたのに…泣
人物相関図を、進捗を更新しながら定期的に挿入して欲しい -
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デイヴィッド・グラン『キラー・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』ハヤカワ文庫。
マーティン・スコセッシ監督により、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、ジェシー・プレモンスら出演する映画の原作となったノンフィクション。『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』として刊行された作品を文庫化、改題。
オセージ族が保留地から出る石油の受益権のおかげで巨額の富を保有するようになったとは知らなかった。当時のアメリカ人の11人に1人が車を持っていたのに対して、オセージ族は1人で11台の車を持っていたのだ。
オセージ族連続殺人事件の捜査は遅々とし