及川智早のレビュー一覧
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知られざる統治者
『古事記』『日本書紀』という書物
記紀神話伝承の性格
記紀以降の神話変容
第一部 変容するタヂマモリ
第一章 不老不死の探求者
絵葉書の人物は何者か
タヂマモリはどこへ派遣されたのか
不老不死の国
「ときじくのかくのこのみ」を取りに行く理由
我が国古文献にみる不老不死
橘とはなにをさすのか
第二章 お菓子の神となった人間
乃木大将と双璧?
教科書のタヂマモリ
忠臣であることの強調
タチバナとタヂマモリ
垂仁天皇陵の濠中の小島
お菓子の神として
人が神となる
他にも菓子神候補がいた
菓子博覧会の象徴
タヂマモリ以上の菓子の神の出現
新たなる菓子神創造の意味
第二部 ヤマトタケルとなったヤマトタケ
第一章 『古事記』と『日本書紀』の異なる物語
現代との接点
錦絵のヤマトタケル
双子で巨人という形容
女装する英雄
二つの異なる物語
ヲグナとは
父との関係性の相違
第二章 選ばれた日本武尊
選択されるヤマトタケル像
火打ち石は誰のものか
なぜ「日本」なのか
その名はヤマトタケ
第三章 英雄の利用法
病気を鎮圧するヤマトタケル
「草薙ぎ」の剣か「草刈り」の剣か
火打ち石で向火をつけて難を逃れること
病魔を払うものとしてふさわしいのは
スサノヲ神との親近性
第四章 銅像としてのヤマトタケル
兼六園に出現した慰霊碑
北陸との関連性
加賀国のヤマトタケル
兄から国人へ
鎮魂・慰霊の象徴として
白鳥と化すもの
鳥と霊魂
おわりに
国定教科書の中で
近代における変容
神話と同質の物語
注
あとがき -
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帯の「なぜ、神武天皇はこんな髪型なのか?」に惹かれて購入。一番気になる項目がこれでおおむね納得の内容にまとめられてました。
伊弉諾・伊弉冉から始まり、神功皇后までテーマ自体は思ったより絞られた印象でしたが幕末以降の近代に求められる図像の変遷はよくわかるものでした。参考画像も白黒で小さめながらも多く載せられており視覚的にもわかりやすかったです。
神武天皇顕彰の流れは今では定着し落ち着いてるので振り返るとすごい時代があったのだなあと思わされます。
あまりヤマタノオロチや因幡の白兎における「ワニ」なども描かれ方の違いや変遷が多くあり、意識してないけど自分の中でも定着したイメージがあったことが再認識されます。 -
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ネタバレ近代日本における『古事記』・『日本書紀』の神話伝説の受容と変容とを紹介した書。記紀神話にて登場するタジマモリとヤマトタケル(ヤマトタケ)の人物譚を例に挙げ、その物語が近代日本国家と民衆の間でどのように語られ活用されていったのかを解説する。
著者前著『日本神話はいかに語られてきたのか』(新潮選書)の続編ともいえる本書は、人代の伝説的人物であるタジマモリとヤマトタケルの二人を中心に、近代における記紀神話の受容と変容とを読み解くものである。王政復古を掲げて成立した近代日本において、この両者の物語は他の記紀神話同様、種々様々な政治的・時代的要請を受けて盛んに語られるようになった。そしてその中において、新たな意味や物語が付与されていった。
例えば、常世国から「ときじくのかくの木の実」を持ち帰るも天皇の崩に間に合わず殉死したタジマモリは、「乃木希典にも比すべき忠孝の鑑」として学校教育の場で強く押し出された。その一方、洋菓子の流入に危機感を抱き和菓子文化のルーツを求めた和菓子業界からは「"菓子の王"たる橘を持ち帰った菓子の祖神」として新たに祀り上げられた。
記と紀で「荒ぶる気性ゆえ父親から愛されなかった悲劇の皇子」・「父親から深く愛された征討の忠臣」の二つの異なった筋書を有するヤマトタケル伝説については、後者の物語が近代日本において選択された。その中でヤマトタケルは、牛頭天王等に代わる新たな疫神除けのイメージに採用されたり、あるいは兼六園の西南戦争従軍者慰霊碑(明治記念之標)の銅像の題材に採用されるなどしていく。
著者前著に引き続き、近代における神話の受容・変容を知れる一冊である。 -
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明治期以降~戦前までの近代における日本神話の受容を、絵葉書や引札といった図像を中心に紹介した書。天皇制を支えるイデオロギーとして称揚されていく一方、時に原典(記紀)には無い要素を加えて描写される日本神話のイメージから、同時代の神話受容の様相を概観する。
本書は、近代の日本神話の図像を取り上げて、同時代における神話の受容・変遷を捉えようとする本である。著者が取り上げるのは主に明治期以降の絵葉書や引札、挿絵といった市井に流布した画像資料であり、これらにおいて日本神話がどのように描かれていったのか、「神典」(原典)たる記紀からどのような変容が見られるのかを紐解いていく。本書の特色はまさにここにあり、従来の研究ではあまりクローズアップされることの少なかった近代の画像資料を多数紹介している。
本書を読んで驚いたのは、近代における日本神話のイメージが必ずしも当初から「原典主義」的・画一的なものではなかったということである。近代における日本神話といえば、天皇制国家を支えるイデオロギーとして中央集権的に統合・政治利用されたが為に画一的、ややもすると「貧困」とさえ言われることもあった。しかしながら実際に描写された日本神話の図像をよく見てみると、「神典」として権威化されたはずの記紀から逸脱した諸要素を多く含んでいる。そしてそれらのイメージの源泉には、中世・近世までの変遷した日本神話の諸要素が確かに残っているのである(その為、本書は「近代ならではの受容のかたちを探る」と銘打ちながらも中世・近世の受容史も扱っている)。勿論、一方では「神前結婚式で祀られるイザナギ・イザナミ」・「みづら姿の神武天皇」・「朝鮮征伐の英雄たる神功皇后」など同時代の政治的要請の中で新たなイメージが確立していったものもあり、近代における多様な神話イメージの在り方を一望することが出来る。
従来までの(古代神話としての)日本神話とは少し違う、別な視点から見たいという方におすすめ。 -
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近代において、「記紀神話」をテーマにしたさまざまな図像を紹介し、それらを通じて「記紀神話」がこの時代にどのようなイメージをともなって人びとに受容されていたのかということを考察しています。
本書では、「記紀神話」のエピソードを題材にした、絵画や彫刻、さらには絵入りカレンダーのルーツである「引札」、絵ハガキ、雑誌の挿絵などがとりあげられています。これらの絵は、江戸時代からひろく流通するようになり、近代以降になっていっそう多くの人びとの目に触れるようになります。著者は、それらの図像から読み取ることのできるイメージが、近代日本における「記紀神話」のイメージを反映していることを、さまざまな具体例を通じて明らかにしています。
サブタイトルは「近代国家が求めたイメージ」となっており、近代日本が国民国家としてみずからを形成するさいに、「記紀神話」にかんする図像を通じて人びとのイメージを統一していった経緯について論じられているのではないかというのが、本書をじっさいに読む前の予想でした。
たしかにそうした観点からの考察も多く、たとえば「記紀神話」に登場する「ワニ」は爬虫類のワニだったのか、それともサメだったのかというテーマをあつかった章では、日本の南洋への進出と軌を一にして、比較神話学に依拠しつつ「ワニ」は南洋に生息する爬虫類のワニだという言説が生まれたことが指摘されています。また神功皇后をあつかった章は、韓国併合という歴史上の事実との関連についての考察がなされています。
ただそれとともに、原文で表現されていない図像的イメージがかならずしも単一の国家像に収斂するものではなく、ある程度の「ブレ」をふくんだものであることが見られるようにも感じました。 -
Posted by ブクログ
本書は、日本神話の図像化の歴史から、天皇による支配の正統性を国民に刷り込こもうとした政府の目論見を探った本です。
確かに、記紀を読む機会はなかなかないし、読んでも理解するのは難しいところに図像化されたものが出回れば、イメージがしやすいし馴染みやすい。
元来記紀自体が、天皇支配を正統化するために編纂されたものなのでそういう利用のされ方はむしろ王道ですけど、でも、原典から逸脱したイメージづくりはどうなんだろう・・・などど思いましたがそれを含めて歴史、なんですよね。そう思うと全てが興味深いです。
とはいえ、イザナキイザナミ、ヤマタノヲロチ、サルタヒコとアメノウズメなどなど、身近な神様の検証のなかで、私が一番興味深く読んだのは、因幡の白兎の「ワニ」はなにをさすのか、という問題。子供のころから挿絵がサメなのにワニ?と不思議で仕方なかったので(笑)読んですっきりしました。
検証過程をまとめておきます。面白いよ!
因幡の白兎に登場する「ワニ」には爬虫類の鰐(ワニ)と魚類の鮫(ワニザメ)説がある。
元々の説話が南方地方より伝播したもの、という考え方があり、その後、戦前戦中の植民地支配等の時代背景から南方も日本という考え方によって、その時代はワニ説が有力視された。
ただ、古事記が作成された時代に日本に鰐がいた可能性は低い。
よって、ワニはワニザメとして認識し、現在はサメ説が有力。
ただし、過去の歴史等から総合的に判断すると、ワニという概念は、鰐であり鮫であり、海蛇であり、龍であったといえよう。
つまり、それらすべてを含む水に棲む威力のある想像上の存在を指示する語としてあったとするべきである。
この曖昧さを有する語のさすものが、近代的合理主義に連なる言説によって、ただ一種に限定される論争につながったといえる。