【感想・ネタバレ】日本神話はいかに描かれてきたか―近代国家が求めたイメージ―(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

帯の「なぜ、神武天皇はこんな髪型なのか?」に惹かれて購入。一番気になる項目がこれでおおむね納得の内容にまとめられてました。
伊弉諾・伊弉冉から始まり、神功皇后までテーマ自体は思ったより絞られた印象でしたが幕末以降の近代に求められる図像の変遷はよくわかるものでした。参考画像も白黒で小さめながらも多く載せられており視覚的にもわかりやすかったです。
神武天皇顕彰の流れは今では定着し落ち着いてるので振り返るとすごい時代があったのだなあと思わされます。
あまりヤマタノオロチや因幡の白兎における「ワニ」なども描かれ方の違いや変遷が多くあり、意識してないけど自分の中でも定着したイメージがあったことが再認識されます。

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2017年11月11日

Posted by ブクログ

明治期以降~戦前までの近代における日本神話の受容を、絵葉書や引札といった図像を中心に紹介した書。天皇制を支えるイデオロギーとして称揚されていく一方、時に原典(記紀)には無い要素を加えて描写される日本神話のイメージから、同時代の神話受容の様相を概観する。
本書は、近代の日本神話の図像を取り上げて、同時代における神話の受容・変遷を捉えようとする本である。著者が取り上げるのは主に明治期以降の絵葉書や引札、挿絵といった市井に流布した画像資料であり、これらにおいて日本神話がどのように描かれていったのか、「神典」(原典)たる記紀からどのような変容が見られるのかを紐解いていく。本書の特色はまさにここにあり、従来の研究ではあまりクローズアップされることの少なかった近代の画像資料を多数紹介している。
本書を読んで驚いたのは、近代における日本神話のイメージが必ずしも当初から「原典主義」的・画一的なものではなかったということである。近代における日本神話といえば、天皇制国家を支えるイデオロギーとして中央集権的に統合・政治利用されたが為に画一的、ややもすると「貧困」とさえ言われることもあった。しかしながら実際に描写された日本神話の図像をよく見てみると、「神典」として権威化されたはずの記紀から逸脱した諸要素を多く含んでいる。そしてそれらのイメージの源泉には、中世・近世までの変遷した日本神話の諸要素が確かに残っているのである(その為、本書は「近代ならではの受容のかたちを探る」と銘打ちながらも中世・近世の受容史も扱っている)。勿論、一方では「神前結婚式で祀られるイザナギ・イザナミ」・「みづら姿の神武天皇」・「朝鮮征伐の英雄たる神功皇后」など同時代の政治的要請の中で新たなイメージが確立していったものもあり、近代における多様な神話イメージの在り方を一望することが出来る。
従来までの(古代神話としての)日本神話とは少し違う、別な視点から見たいという方におすすめ。

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2017年12月29日

Posted by ブクログ

本書は、日本神話の図像化の歴史から、天皇による支配の正統性を国民に刷り込こもうとした政府の目論見を探った本です。

確かに、記紀を読む機会はなかなかないし、読んでも理解するのは難しいところに図像化されたものが出回れば、イメージがしやすいし馴染みやすい。
元来記紀自体が、天皇支配を正統化するために編纂されたものなのでそういう利用のされ方はむしろ王道ですけど、でも、原典から逸脱したイメージづくりはどうなんだろう・・・などど思いましたがそれを含めて歴史、なんですよね。そう思うと全てが興味深いです。

とはいえ、イザナキイザナミ、ヤマタノヲロチ、サルタヒコとアメノウズメなどなど、身近な神様の検証のなかで、私が一番興味深く読んだのは、因幡の白兎の「ワニ」はなにをさすのか、という問題。子供のころから挿絵がサメなのにワニ?と不思議で仕方なかったので(笑)読んですっきりしました。
検証過程をまとめておきます。面白いよ!

因幡の白兎に登場する「ワニ」には爬虫類の鰐(ワニ)と魚類の鮫(ワニザメ)説がある。
元々の説話が南方地方より伝播したもの、という考え方があり、その後、戦前戦中の植民地支配等の時代背景から南方も日本という考え方によって、その時代はワニ説が有力視された。
ただ、古事記が作成された時代に日本に鰐がいた可能性は低い。
よって、ワニはワニザメとして認識し、現在はサメ説が有力。
ただし、過去の歴史等から総合的に判断すると、ワニという概念は、鰐であり鮫であり、海蛇であり、龍であったといえよう。
つまり、それらすべてを含む水に棲む威力のある想像上の存在を指示する語としてあったとするべきである。
この曖昧さを有する語のさすものが、近代的合理主義に連なる言説によって、ただ一種に限定される論争につながったといえる。

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2018年02月01日

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