渡辺義久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいい意味で予想を裏切ってくれた。
好きなやつだった。
殺し屋の物語というのは何故かどこか惹かれるものがある。
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ、ウィンズロウの『フランキー・マシーンの冬』、ネスボの『その雪と血を』、キングの『ビリー・サマーズ』。。。
考え上げればまだまだ出てくる気がするがどれも好きなやつばかりだと気付く。
たぶん、どこかネジが外れているような冷酷さを秘めつつ、人の命を奪うような罪に身を染めつつ、それでも心に一本通った芯があり、自分なりの正しさを頑なに守るような生き様にむしろ尊さを感じるからだろう。
とは言え殺し屋。冷静になれば、エンタメ向き要素をうまく料理した都合の良い美化でしかないという見方も首をもたげる。
それでも、それでもやっぱりこのテーマは面白いのだ。
AAと言えば通常はアルコホーリクス・アノニマスのことで、アルコール依存症の人達が集い互いに支え合い立ち直ろうとする自助グループのことだが、本書ではアサシンズ(暗殺者)・アノニマス。殺しの請け負いに従事してきた者達が、その道から脱したいと望み集まる。
主人公マークは最後に人を殺めてから間もなく一年を迎えようとしている。
かつての通り名は「ペイル・ホース(蒼ざめた馬」。ヨハネの黙示録に出てくる死を象徴する馬。
界隈の人間であればその名を聞くだけで恐れをなし、非礼を詫び、ひれ伏すほどの伝説級の人物。
ある日のAAのミーティング後、正体の知れない刺客に襲われる。
本気を出せばまた違った結果になっただろうが″殺せない″ハンディキャップがあるため、不覚にも大きな痛手を追ってしまう。
誰がなんのために襲ってきた?
なぜマークは殺し屋を辞めたいと思うようになった?
最後に人を殺した一年前に何があった?
たぶん3つの疑問は収斂してくるんでしょう。
その予感は最初からありつつも一足飛びには語られず、過去と現在を行きつ戻りつしながら徐々に分かってくる登場人物達の関係性やマークの頭の中。この語りの構成が巧くて面白かった。
立ちはだかる行手を阻む者とのアクション、真相を探るための追いつ追われつの行動譚、会話のバランスも良く、特にマークのしばしば目覚めそうになるかつての″力″を用いたときの全能感とそれを制御しようとする改心した者の葛藤の部分が、単なる足を洗ったかつての強者というわけでもなく、有終の美を飾るべく最後の一仕事をやり遂げんとする隠匿者と言うわけでもない、新しいタイプの脱殺し屋譚と感じた。 -
Posted by ブクログ
現金輸送車の襲撃で一攫千金を狙え… 血なまぐさいサイコホラーな要素がヒタヒタと染み渡るクライムサスペンス
■あらすじ
白血病の幼い娘、アニータのために稼がなければならなかったマリオは、悪友のブライアンから違法な仕事を紹介してもらう。なんとか医療費を支払い続けるも、アニータは遂に帰らぬ人となってしまう。さらに妻メリッサとも仲たがいしてしまい、自宅から出て行ってしまった。
自暴自棄になりながらも、まともに生きたいマリオに、大きな仕事がもちかけられる。それは麻薬カルテルの現金輸送車を襲うというもので…
■きっと読みたくなるレビュー
テキサスとメキシコを舞台に、経済的に困窮した若者たちがぼろ儲けを企てる犯罪小説。さらに中盤以降は、 血なまぐさいサイコホラーな要素もヒタヒタと染み渡るという… キモ恐ろしい世界観も体験できます。
とにかく作品全体から漂ってくる退廃的な空気、もう絶望しかないの。カネ、カネ、カネ。とにかくカネに恵まれない男たち。現実を受け入れらずにドラッグに溺れ、泥沼の人生を歩んでいる。もうこうなるとカネに綺麗も汚いもない、反社会的な世界にどっぷりつかり、命をも危険にさらす仕事をせざるを得ないのです。
中南米のカルテルは恐ろしいとは聞き及んでいるけど、こんなにも生々しく書かれた犯罪描写はあまりない。血なまぐさい表現や、とてもじゃないけど映像化されたら目視できないようなシーンも多い。胃の奥がしくしくと縮んでしまいそうなんです。
本作メインの登場人物は3名、腐った社会で何とか生きのびている男たちです。
・幼い娘を難病で亡くし、妻に暴力をふるってしまい家を出て行かれたマリオ
・マリオの元同僚であり、闇の仕事を斡旋しているブライアン
・麻薬カルテルの運転手で、現金輸送車襲撃を計画するフアンカ
マリオとブライアンは可哀想な境遇であり、世の中や敵に牙をむいている。しかし彼らはどこまでも弱く、負け続けてきた人間。おそらくは幸せな人生を送れないと想像がつくような人物。対してフアンカはキレてるのよ… 何がヤバいって、神だの悪魔だのソレ系ですよ。
ストーリー自体は比較的シンプルで、この3人が現金輸送車を襲うまでが描かれてゆく。襲撃の準備をするにあたり、カルテルの卑劣さと悪逆な行為を見せつけられるのですが、さらにはあり得ないスプラッタホラーも味わうことになるのです。
果たして現金輸送車の襲撃は成功するのか? そして終わった後、彼らは何が得られたのか? 愛する家族のために、犯罪に手を染めた男に幸せは訪れるのでしょうか。
■ぜっさん推しポイント
神や悪魔に欲望を人間の欲望を押し付けると、どんなことになってしまうのか。痛いほど良くわかるお話でしたね。終盤の疑心暗鬼にかられる3人が、あまりに醜くてマジ反吐が出そうになった…
しかしこれが人間であって真理でもある。本作に出てきた異形も、人間の業なだけのような気がしました。 -
Posted by ブクログ
著者はガーナ系アメリカ人、原本は英語。
先日の『アンチ』みたく翻訳者が現地の言葉や事情に明るい訳ではないので、ほぼガーナ初心者の渡辺氏(翻訳者)と手を携え踏み込んでいく感覚だった。
エマ(主人公)自らが私立探偵の職を見つけた訳ではなく前職の任を解かれた理由も大変悔しいものだったから、このまま話を進めて良いのかと難色を示していた。探偵業に就いて以降はまるで天職と思わせる仕事ぶり。新人探偵が事件の最奥部にまで迫るのは度が過ぎるのでは?って気もしたが、最後は逆転まで決めてまさに怪我の功名。(持って行き方はいささか唐突だったが汗)
「消えた男」と言うのはエマ達に捜索依頼をしてきたアメリカ人デレクの父、ゴードンの事。(オフィシャルに出ているあらすじを読んでしまえば分かる事なので、ここは暴露しとく笑) 恋愛詐欺の被害に遭い真相を探るべく思い切ってガーナに乗り込むゴードンを、読者もさぞ全力で止めたくなっただろう。
自分はゴードンをクリント・イーストウッド氏と重ねていた。(勝手なイメージになるのをご容赦願いたいが)正義感の強い、昔ながらのアメリカ人男性だと思う。
少しでも往時のガーナを取り戻したい。
ガーナまで行ったのは、家族のルーツや過去の訪問で思い入れが強かったのが一番だろうけど、悪事を働いた者を白日の下に晒さねば、という使命感を消せなかったのも大きかったはず…
本作で一番興味深かったのは、土着信仰の呪術だ。「サカワ」と呼ばれるIT詐欺集団が詐欺を働く際、上手く運ぶよう呪術師の力を借りる。ノンフィクション、つまり現実にもサカワや彼らの仕事に欠かせない呪術は存在するらしい。
本だから当然その姿を文章から想像するしかないのだが、にわかには信じられずにいた。(かと言って、そのおぞましい儀式について調べる勇気もなかったけど汗)
"自称"純度100%の文系人間でも呪術(わが国で言えば藁人形とか?)を信じ、その力を借りようとする発想には至らない…汗
「サカワ・ボーイズ」が巻き上げた大金を賄賂として請求する見返りに彼らを擁護する警察。素顔を隠し独自の調査を進めるジャーナリスト。凄い世界。知識がインプットされたと言うより深く刻まれた。まるっきり著者の作り話じゃないところがまた恐い。
更に続編も出るという。果たしてゴードンの悲願は成就されるのか。
カカオの国のビターなミステリー
…うーん、まだまだガーナ初心者なまとめ方…笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ過去を隠し政府から逃れて生活している特殊工作員が、過去からの追跡者が近づいていることに気づき、再び逃走を開始するとともに、新たな人間関係を作り、追跡してくる敵と原因との対決に向かう物語。
迫り来る敵との緊迫した追跡劇、反撃のアクション、交流する人たちとの愛憎劇。
映画にしたら面白い!と思いながら一気に読んだ。
ただ今までの詳細な心理描写や人間関係の物語はなんだったんだというくらい、ラストが淡々と締め括られている。
逃走することになった原因は無くなったが潜伏生活は、引き続きしているというニュアンスだが、小説中に関係した人たちとの結末が分からず終い。
大団円という感じではないのが残念であり物足りない感じ。