いや、大変に面白かった、限りなく★5つに近い★4つ。
本書を原作とした映画が近く公開されるとの記事をフェイスブックで見ました。
迂闊なことに、それまで本書の存在そのものを知りませんでした。
2009年に初版発行された本です。
著者は参議から福島県知事に転じ、県発注のダム工事を巡る汚職事件で知事を辞職
...続きを読む、その後、有罪判決を受けました。
検察の取り調べを受ける場面が、本書の白眉でしょう。
硬軟織り交ぜて時に厳しく、時に懐柔して自白を迫る検察の手管には恐ろしさを覚えました。
これだけ執拗に過酷な取り調べが続けば、どれだけタフな人でも音を上げるというもの。
実際、この事件で検察の取り調べを受けた関係者は、心身がぼろぼろになって虚偽の自白に追い込まれ、自殺を図る人まで出てきます。
著者も、何より大切にしてきた支援者を次々としょっ引くと脅され、次第に追い詰められていきます。
このあたりの描写はさすがに緊迫感に満ちており、固唾を飲んで読みました。
「あなたが了解すれば、全体がきれいに決着していくよ」と、著者の取り調べを担当した山上検事は実に巧みに誘導していきます。
著者は独房でノートに「山上君はいい検事だ」と記しました。
検事の描いた犯罪の絵はあちこちに綻びが露呈しているにも関わらず、裁判所は被告に厳しい判決を下しました。
日本では、起訴されると99%は有罪となります。
検察ににらまれたら終わりだということでしょう。
著者はたしかに、国家にとって「好ましからざる人物」でした。
原発を推進する東電や経産省、原子力安全・保安院に立ち向かい、道州制などに関して政府と真っ向から対立しました。
その力の源泉が、田中角栄さえも認めたほど、自ら地道に選挙区を回って作った強固な支持基盤です。
ただ、汚職事件で足元をすくわれました。
著者の弟の取り調べを担当した検事が、いみじくもこう言ったそうです。
「知事(著者のこと)は日本にとってよろしくない。いずれは抹殺する」
国家権力の恐ろしさの一端をまざまざと見せつけられるような言葉です。
個人的には、前に勤めた会社で小泉改革をウォッチしながら記事を書いてきただけに、いわゆる「三位一体改革」を巡る国と知事会の攻防を大変興味深く読みました。
当時、「改革派知事」と呼ばれた知事たちが、いかに腰抜けであったかも分かります。
いや、大変に得るものの多い読書でした。